Arts Calendar/Art's Report site/《FUKUI EIICHI no towazu-katari》Aura

vol.28

「第二十回 特選上方舞の会」(国立文楽劇場)

報知新聞社主催の「特選上方舞の会」(9/14・国立文楽劇場大ホール)も
今年で二十回目。
全回出場の山村愛、通算15回出場の神崎りうには、賞状と記念品が授与された。

当日の舞組は次の通り。

地唄「三国一」吉村昌・吉村昂扇
地唄「小簾の戸」古澤侑
地唄「芦刈」山村若一人
地唄「ままの川」山村楽清芳
地唄「雪」神崎りう
地唄「袖の露」山村光
地唄「茶音頭」楳茂都梅咲
地歌「本行 四季の山姥」山村愛

一見して、山村流の活躍が目立つ。一方で、井上流からの出場が一人も無いのは淋しい。

演目は、女の情念や恋に破れた哀れさを表現した「艶もの」が殆ど。
「特選上方舞の会」と銘打つ以上、上方舞の多様な魅力で観る者を楽しませて欲しい。
「作もの」や「本行もの」などがもっと増えても良い筈。

一番の出来は、神崎りうの「雪」。地唄随一の名曲を手堅くまとめた。
和蝋燭の炎のゆらぎの様に、臈長けた女の幽艶を描き出したのは
さすが。ただ、雪がしんしんと降り積む冬の夜の寒さ、わびしさを出すには
いま一歩か。

落語家桂枝雀は、生前、「私の理想の落語は、何もしゃべらんとニコニコ、
高座に座っていること。するとお客さんもなぜだか急におかしくなって、
ニコニコ笑う。こうして会場が華やぐ・・・そんな落語家になりたいですわ」
と語った。
舞踊家も、本当の勝負は、実は所作も無くぼつねんと立つその姿にあるのではないか。
舞台にスッと現れただけで、その作品の世界を造ってしまう、そうした
オーラを持つ舞い手がいかに少ないことか。
例えば、故・吉村雄輝夫師の出端は、それは見事なものであった。
本行ものの折など、下手から現れただけで、観客は思わず居ずまいを
ただしたものだった。

昨今の舞台芸術の衰微を観るにつけ、人間が種(しゅ)としての活力・生命力を
徐々に失っているのではないかと、私は本気で心配している。

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