Arts Calendar/Art's Report site/《FUKUI EIICHI no towazu-katari》Dancing on air

vol.62
「有乃会」(国立文楽劇場)

師走直前の国立文楽劇場を華やかに彩ったのが
「有乃会」(11/29)。
満席の会場が上方舞・山村流の隆盛を物語る。

まずは、山村楽正の高弟・楽有と特別出演の山村久子の
二人舞で、地唄「世界」。
廓での男女の痴話、虚々実々の駆け引き、色恋沙汰、
季節の情景などが、特段の脈絡も無く点描風に綴られてゆく。
二人舞は、舞い手の力量が伯仲していないと面白くない。
その点、楽有は大御所・山村久子とがっぷり四つに組み、
堂々の舞いぶり。
色町の女たちの「はり」と「意気地」が漂う佳品となった。


「助六」「茶音頭」「縁の綱」「新曲浦島」「鐘ケ岬」「藤娘」
「珠取海士」など、中堅の舞台が続いた後、
新名取ながら満場の拍手を浴びていたのが、山村有里奈の
長唄「鷺娘」。
原曲をうまくアレンジして、観客を飽きさせない短縮ヴァージョンでの
上演となった。
前半の鷺の精に元気が無い。両袖を翼に見立てて飛び回る様には、
鷺特有の軽やかさが欲しい。
衣裳を鮮やかに引き抜き江戸娘になってから、ようやく調子が出てきた。
要所要所で型が決まる。ようやく拍手も起こった。

ぶっかえりで再び鷺の精へ。
地獄の責め苦を受ける場面では、上半身を弓なりにのけぞらせ、
体の柔らかさと修練の確かさを見せつけた。若い。

トリは、人気の山村楽正。
演目は地唄「山姥」。
過日、脚を負傷してファンを心配させたが、懸命のリハビリが功を奏して、
予想以上に早い舞台復帰となった。
痛みをこらえながら、そうとは知らない人には何の違和感も感じさせない
実力はさすがである。舞台への執念に頭が下がる。

幕が開いた折の立ち姿だけで観客を圧する舞い手が、今の日本にあと何人
残っているか。指折り数えるその筆頭が、楽正その人である。
快癒を心からお祈りする。


福井栄一の問わず語り」の扉へ

無断転載禁止 掲載:アーク編集室