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「妄執」(白雪ブルワリービレッジ長寿蔵)

清酒発祥の地 伊丹の新名所「白雪ブルワリービレッジ長寿蔵」。
約200年前の酒蔵を改造して、ビールブルワリー、日本酒醸造所、
ブルワリーミュージアム、ブルワリーレストランに仕立て上げ、
ブルワリーショップまで併設した一大拠点である。
清酒「白雪」で有名な小西酒造が、
ビールと日本酒のマルチ体験スポットを銘打って運営している。

ともかくも酔っぱらいたい、腹をふくらせたい来場者は別にして、
多くの人の目を引くのが、二階に設けられたブルワリーミュージアム。
江戸時代から杜氏や蔵人が使いこんできた酒造りの道具が所狭しと
並び、先人が酒造りに懸けてきた想いの深さが臨場感をもって伝わってくる。
また、小西酒造と文人たちの交流も興味深い。
掲出資料の中には、頼山陽、近松門左衛門、芭蕉らの名が見える。
特に、芭蕉は小西家の四代目の当主に「夕顔や酔うて顔出す窓の穴」という
句まで贈ったそうな。

惜しむらくは、「小西酒造と○○」という視点が目立ちすぎて、日本酒の持つ
文化的・民俗的な意義への目配りが不十分なこと。
同じ企業ミュージアムと言っても、例えば神戸のUCCコーヒー博物館などは、
UCCという一企業の宣伝臭は殆ど皆無で、「人類はコーヒーという嗜好品と
どう関わってきたか」を愚直に探究した展示となっていた。
「売らんかな」のブルワリーショップを別棟としたのは卓見だが、肝心の展示室は、
愛社精神の呪縛から逃れられなかったということか。
「売家と唐様に書く三代目」の憂き目に遭わなかった小西家であるから、当然の
ことかも知れない。

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