Arts Calendar/Art's Report site/《FUKUI EIICHI no towazu-katari》Do you believe in Muse ?
vol.68
「二十一世紀に残す祇園名妓抄〜松本佐多女の映像を中心に」
(立命館大学以学館二号ホール)
立命館大学アート・リサーチセンター主催の映像鑑賞会は、祇園の名妓
松本佐多女の貴重な舞姿が三題(「三つ面椀久」「翁」「羽衣」)(12/18)。
松本佐多女は、明治六年祇園に生まれ、六歳で京舞井上流の家元三世
井上八千代に入門、十五歳で芸妓、三十五歳で名取となった。
若い頃から井上流を代表する舞い手として活躍、四十八歳で芸妓を廃業した
後も後進の指導に献身し、井上流隆盛の礎を築いた。
また、四世井上八千代の後見として睨みを利かせる一方、お茶屋「杏花」の
名物女将として全国にその名を知られた。
谷崎潤一郎は彼女の印象をこう語っている−「正に此の人は一個の女傑であり、
何かの拍子で若し風雲に乗じていたなら、すぐれた女政治家にも教育家にも
事業家にもなり得る資質の持主であった。」
残された映像は音も無く、画像も不鮮明、時々コマが飛ぶこともあって、
お世辞にも良い状態とは言えない。
が、捉えられている佐多女の舞いぶりの何と大きいこと。
谷崎も賞賛した彼女の豪放磊落な気質がそのまま出ている。
三世八千代も芸容の大きい人として知られているが、その愛弟子だけあって、
伸びやかさと力強さは師匠譲り。
骨太で闊達で覇気に溢れている。
今日の舞踊界がどこかに置き忘れてきた魅力を総て兼ね備えているのだ。
明治は遠くなりにけり。彼女を直接知っている人も次々とこの世を去っている。
財団法人片山家能楽保存財団ないし立命館大学アート・リサーチセンターは
本会を機に、関係者へのインタビューなどに一日も早く着手すべきではないか。
彼女の本格的な評伝の完成が待たれる。
「福井栄一の問わず語り」の扉へ
無断転載禁止 掲載:アーク編集室