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vol.64

「エクソシスト(ディレクターズ・カット版)」(梅田ピカデリー)

1973年12月の「エクソシスト」全米公開から、はや25年が過ぎた。
あれから幾多のオカルトもの、スプラッターものが作られたが、どれ一つ
本作を超えられないでいる。

俳優がいい。
悪魔パズズに憑かれる少女リーガン役にリンダ・ブレア。
彼女は本作のみで、映画史に永遠に名を刻まれる。
その後の女優生命のみならず、人生までも棒に振っての怪演。
この一作を最後に引退すれば良かったのだ。
十字架で傷つけた血まみれの陰部に母親の顔を押しつけ、
「舐めろ、舐めろ」とのたもうた彼女。
その彼女が、後年、ソフトクリームの着ぐるみ姿でベッドに
横たわり、レスリー・ニールセン扮する神父に向かって、
「アタシを舐めて」と笑いかけていた。
「サイコ」の続作(にして駄作)に出演し続けた
アンソニー・パーキンスを観るよりも辛い経験であった。

娘を悪魔に乗っ取られ、恐怖と絶望のどん底に突き落とされる
母親役には、エレン・バースタイン。1975年には「アリスの恋」で
アカデミー賞主演女優賞を受賞した。
女優母親一人の人間と、虚飾と自尊心が削ぎ落とされ、
徐々に剥き出しの自分と向き合わざるを得なくなる過程を
繊細に演じた。最初、シャーリー・マクレーンが候補に挙がって
いたらしいが、彼女には重過ぎる役柄だろう。

パズズとの宿命の死闘で命を落とす老神父には、マックス・フォン・シドー。
1956年の「第七の封印」(ベルイマン監督)の印象が
あまりに鮮烈なので、リーガンのベッドの脇に跪く姿に、死神との
チェスに興じる細身の青年の姿がだぶった。
ハリウッド進出後、娯楽作にも多数出演。但し、先般の工藤夕貴との
共演には打ちのめされた。お願いですから、もう少し出演作を選んで
下さい。でないと、デ・ニーロみたいになってしまいます・・・。

ディレクターズ・カット版なので、15分間の未公開映像が挿入されている。
闇に一瞬浮かび上がる悪魔の顔、仰向けに手をついて階段を駆け下りる
伝説のスパイダー・ウォーク、悪魔祓いで憔悴した両神父の対話など。
しかし、それらは一部の好事家を満足させたにとどまったろう。
公開時の本作の衝撃と緊密度に何の貢献もしなかったであろう場面。
カットされて正しかったのだ。

いみじくも「禁断の映像」とある。
今後は再び封印しておきたい。


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