Arts Calendar/Art's Report site/《KOGURE Journal》kamikata-KODAN*275
旭堂南湖さんが宮沢章夫さんのHPでこぐれ日記を知り、彼からのメールによってこの老舗の講談会を知る。
第275回『上方講談を聞く会』、場所は「日本一」芸団協関西(日本一歯科センタービル6f)。275回というからその歴史はとても古そうだ。日本橋の駅のそば。18:30からということだったが、すでに南鱗さんの弟子花鱗さんという講談師のひよこさんがお試し(「空板叩き」)として、那須与一をやっていた。
さて「空板叩き」を終えた花鱗が座布団を整えて、旭堂南楓の登場「怪美人伊藤夏子」18:28〜19:01。天満講談席は平均20分ぐらいなので、このスリムな女講談師さんは少しテンポがまだゆっくりなのかなと思ったが、この『上方講談を聞く会』はみんな平均30分の持ち時間だった。
女性の講釈師ならではのネタ。明治時代に出来た「探偵講談」という種類でこれが大衆文化として探偵小説やテレビの刑事物につながっていくのだろう。
これも続き物だったらしいが、旭堂南湖のように次回のお楽しみとはせずに、無罪となった夏子が、恋人によってその罪を暴露される件を付け加える。明治ものというのも、戦争賛美的なものが多かったりして取り上げられにくいのだろうが、今に聞くと結構レアな感じで面白い。
次に、旭堂南湖「玄意と天王寺屋」28分。そのテンポのよさに驚く。少し時間が経ったが前に聴かせてもらったときよりも堂々として伸び盛りって感じがよく伝わってくる。それに今日が藪井玄意物語の第3回ということで、前2回のあらすじを3分弱でざっとするところなど、マンガの連載のようでとても親切。それにしても、もっと南湖さんってこれからの若者という印象があったのが見違えてしまうほど横に大きくなっていた。
名奉行所(名裁き)物でもあるのだろう、浪速にもそういう物語があって、お金持ちやそれにまつわる番頭、医者などをぎゃふんと言わせたい庶民の願いを担っている。島之内という場所は長屋だったのだとか大坂の地名が出てくるのも楽しい。
次回で最終となるそうだ。こういう続き物を、独演で4回通すこともあるのだろうか。叩くものは、革で巻いた上方特有(後の小南陵の解説による)の茶色のものではなく、大きな白い紙みたいなものだった。これはちょっとどつき漫才の人が持っているものみたいで、殴られそうで怖かった。
昔、陸上部だったという旭堂南太平洋。髪の毛が長くばたくさい。声も大きく自分で暑苦しい講談というのでどんなものかと思ったら、意外と丁寧で中身も面白いお話しだった。ただ、彼は38分間の熱演で確かにさらりとしたものではない。『無筆の出世』。
無学で人の良い伊予松山出身の男が、一念発起して字を自分で学び出世するというお話。酒乱の主人との最後の出会いがなかなかに涙ぐましい。田舎者のしゃべりが少し大げさな感じはする。出世したときに無筆の男がどういう風に変わり変わらないのか、それを演じ分けるのは難しいところだろう。
けれど、音で自習している姿を現すのがとても興味深く思った。「じゃりじゃりじゃり、とんとんとん」。紙と筆がないので、砂で字を真似ぶシーンであるが、姿見えず音だけが印象を強くさせるストーリーテリングである。
阿波踊りに噺家連として出かけるという旭堂南鱗。70kg以下は弟子にとらないらしい。
私はいまは十分資格があるなあ(とほほ)。「恨みの片袖」。南陵師匠は怪談話が怖いために、ここの一門には怖いお話が少ないのだそうだ。
大人しい講釈師さん。江戸の話だが上方弁。田舎者にまがい物(いかもの?)を売っていたあくどい江戸の商人へ、その商品によって恥をかいて利根川(昔は北関東はとても田舎だったのだ)に身を投げた幽霊が現れる。寂しすぎる話ではあるが、立場が微妙である商人のおかみさんの描写が面白い。
旭堂小南陵。上方講談を伝える騎士だけに、講談の起こりについての説明が枕。浄土宗系のお説教が起源であるらしい。そのお説教が仏具も取り入れて節が付いたり物語として面白く語られたりしていく(たとえば、修羅場読みとは、仏教で言う修羅道の怖さを説くもので、それが軍談となる)。講談の祖とされる赤松法印もお坊さんだ。
一方、それに負けじと神道の方でも「神道講釈」が生まれる。その一つが今日語られる「道真公誕生」である、と。これをすばやく10数分で終わせ(ちょっと急いだ口舌あり)、今日は関東からもお客さんが来ていることもあって(客席はここは初めてだが盛況だったと思う)、サービスに「応挙と幽霊」が語られた。
これは、前にも聴いたことがある怪談の一種かも知れないが、最後はハッピーな親孝行ものであり「天神さん」の境内でさらわれた娘が死んでから親の苦境を救う話であるから、なるほど「神道講釈」でもあるのだった。
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