Arts Calendar/Art's Report site/《KOGURE Journal》TACHIBANA
WOMENS ARTISTS FILEvol.1 1
さあ、『関西女性アーティストファイル vol.1』の初日、ファイル1だ。
雨はやんだけれど、まだ光はなかった。京都府京都文化博物館別館(1906年竣工。設計は辰野金吾+長野宇平治)。外観をしげしげと眺める。丸い電灯、赤いレンガに白い横線が鮮やかだ。本館から入って別館への自動ドアを抜けようとすると呼び止められる。京都橘女子大学の者です。準備に来ました。では、シールを見えるところにお貼りください。
10時半。舞台監督をしてもらう関さんや照明さん、音響さんたちが手際よく動いている。いつも思うのだが電線のたばをよく間違えずにつないだりはずしたりするものだ。高い2階に照明のセットがこしらえられている。こういう場所は初めてでちょっと嬉しそうな若い女性スタッフ。
客席づくりについては、出来るだけ前の人の頭が邪魔にならないようにお願いする。ちょっとうるさいほど関さんに頼んだきらいがあるが、アンケートでも不満はなかったし、見やすい席が作れたと思う。ステージが床のママで(リノニウム張り)、黒子さなえの転がるダンスもあったのだから。
京都橘女子大学文化政策研究センター公開セミナーということもあって、看板を作ることになっていたが、シンポジウムの味気ない看板はいやなので、上田假奈代さんから荒木瑞穂さんに書を依頼していた。はじめ「書」だから縦書きでいこうかなと思っていた荒木さんは上田さんと話し合ってこのシンプルなローマ字になったという。
白い布に(高い2階の欄干からステージの下までの長さ)、横書きで、「TACHIBANA WOMENS ARTISTS FILE」と4段で書かれている。これにはびっくりしたしその効果にやられた!と思った。逆三角形がデザイン的でしかも墨をつけた筆で下書きもなく一気に書かれている。その味がほのぼのとしていて絶妙なのだ。冒頭の「T」の字が少し小さい。ふと、假奈代さんの詩に出てくるTという男性のことを思い出す。そのうち気がつくと、丸くその逆三角形部分が浮き上がるように照明が工夫されていた。布に皺が寄るので途中霧吹きを買ってきて吹き付ける荒木さん。
15時からが正式なリハーサルだったが、それまでも黒子さなえさんはウォーミングアップを兼ねて場所に身体を馴染ませている。出演者でもある上田假奈代さんは、私たちと一緒に挟み込みチラシづくりに参加。大学事務局の武藤さんと中村さんはアートコンプレックス1928から座布団を借りてきた後、弁当のことやチラシ挟み込みなどの裏方準備に従事。
前説は学生スタッフの塚八さんに舞台に出てやってもらうことにした。暗記するのは危険なので、可愛い本のようなノートを用意して彼女にあらかじめ書いてもらっておく。本を開くようにファイルを開ける、そんな演出だったが、顔をうまく上げたりするのが難しかったよう。高校生などに聞かれるイントネーションが可愛いという感想とともに、間が抜けているというアンケート意見もあった。
練習しているときチェックしてあげたらよかったかなと思うが、彼女は結構上がらずにすっと背筋を伸ばし(日本舞踊を習っていたからな)声を出せたと私としては思っている。
15時からのリハは黒子さんの関係でカメラ撮影があったし、こちらも大学の入学課による取材があった。そんなこととは無関係かも知れない。が、黒子さなえのソロの迫力は場所の力もあったが、このリハーサルは誰が見ても圧倒的な出来だった。
学生は呆然としていて、何も質問できないと困っていたほどだ。荒木さんの白い布が舞台美術として美しく影を揺らし、持ってきた赤い花が魔法の杖のように空間を変えていった(ただ本番までに疲れることは多かったと思うし、ソロを踊った直後のトークのことも彼女にとっては気が重かったみたい)。
『心が静かに躍る風景/心が静かに狂う風景』。音楽+音響はドクトルミキさん。音楽にかぶさる雨の音や靴音。ミキさんには、第2部トークの後の第3部コラボレーションの音響の作ってもらっていた。
18時開場。10分押しで開演。申し込みより10名ほど少なかったが、大学関係者などが駆けつけてくれたために、100席のうち7〜8割が埋まっていたようでほっとする。リハよりも本番の黒子さなえのソロは長くて20数分間。そのあとに休憩。テーブルとイスを出して、トーク「洗濯干場談義」。
「洗濯干場」なんてネーミングはもちろん詩人でありコピーライター歴を持つ上田假奈代がつけたのだけれど、黒子さんと会って話していたら、井戸端会議よりもちょっとふわふわとしている感じ、空と繋がって見上げる感じとしたからだという。うちの大学の織田先生にも出てもらって、率直な感想を聞いた。家に帰ると芳江やはなから織田さんの感じがとてもよかったと言われて、ほっとする。学生も1度ずつ発言。会場からもタイトルとの絡みで深い質問有り。
第3部のコラボレーション「帽子とダンス」。「首をまわして首をまわして半島の黒子の位置の変わらない27の断章」という上田假奈代の詩が上手で読まれる。少しして黒子さなえが登場。かくれんぼのように詩とダンスが呼応する。これは意識的に黒子さんがしたことだろうけれど、言葉の意味と仕草が緩やかに連動している。でも、よく見ると単なる説明的なフリではないのだが、それが少しわかりやすすぎると思うコンテンポラリーダンス通もいるかも知れないとは思った。
アンケートなどによる感想では、トークがあったことで特に第3部が第1部のダンスよりも自分の心へと受け止められやすかったというものもあった。ただ翌日に比べるとトークはいささか堅かったようだ。初めの初めだったことで司会の私も緊張していたからだろう。
20時半に終わり、すぐに解散。
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