Arts Calendar/Art's Report site/《KOGURE Journal》Wakakusa-yama
dance
12時半近鉄奈良駅前、行基像前集合。12時に着くとすでに大きな荷物の竹之内さんと広子さんがいた。
明日には、永運院(くろだにさん)で海外への旅立ちの前の最後の踊りを披露する竹之内淳志。でも、明日は学会もあって行けないので彼の奈良若草山での踊りおさめに混じった。
もう随分と昔になるが永運院のお庭で踊ったときに竹ちゃんは広子さんと会ったのだし、私も拝見してレビューやエッセイ(朝日新聞のコラム)を書かせてもらった。そんな昔話を竹ちゃんとする。
次第に楽器を持ったミュージシャンが集まってくる。いつも彼を撮してきた年輩の女性やカメラを撮したい人もあと2名は来た。彼のワークショップに参加し続ける男性たちが来る。古い東山青年の家のワークショップでエイサーをやっていた男性、雰囲気が当たり前だが随分大人になった。
若い男性が最近踊りシーンに増えましたね、という話をする。竹ちゃんの踊りは、男女を問わず、民族関係に惹かれる人やネイチャーとか障碍のある人たちとのコミュニケーションを考えている人など、ダンスアーツというジャンルとはひと味違う人たちの入り口になってきた。
奈良公園内を歩く。小鹿が多い。着物を着て帯ではなく、細い紐を結んだ若衆が前を歩く。鈴鹿邸で北村成美さんを見たときにあった石田君だ。栗の臭いがします。自分の精液を嗅いでいるみたいな五月の緑の中。池につく。猿沢池以外にも色々と池があるみたいで、真ん中にお堂がある(浮き御堂といったのか雪見堂と言ったのか定かでないが、小雨も降ってきたのでそこで休憩。
すると、15分ぐらい池の周辺の小径で歩きながら踊ろうということになる。竹之内淳志と3人の男性。。ちょっと前に京都駅から東山青少年活動センターまで踊りながら行ったことがあって、警官が向こうでやってもらえませんかねとか言ったらしく、何ともその面白かった経験が想起されたのだろう。
リュックに入れてきたスピーカーのPAで拡大して弦を引く人。澄んだ音色の縦笛の人(尺八でよく見かける人なのに名前を失念)、そして太鼓の人がそのお堂で竹ちゃんらのダンスを待っている。
竹ちゃんはまず屈んで頭を抱えたり、斜面の芝生に寝そべったり。音は踊っている向こうにはあんまり聞こえなかったが、こちらは音と向こうでの風景となる踊りがマッチして「水上の音楽+舞踊」をもう楽しむことが出来た。
実際は、13:15から13:34までだった。黄色の鮮やかなTシャツを着ている人が池に映る。一人早く小径を過ぎ、橋を渡るのかと思いきや、橋の欄干に頭を突っ込んで、するっと身体を欄干の外に出す竹之内。観光に来ている人達も不思議そうだが、あんまり怖がらせたり不快に思わせたりはしなかったようだ。同じく、若草山でのパフォーマンスでも、集団の初老のグループが通りかかったが、立ち止まってけっこう興味深く眺め聴いていた。
ここら辺は日常の風景ではない場所として来訪者にはあるから、こういういつもでない動きも許容できる空気がまわりにあるのだろうと思う。突然のパフォーマンスに遭遇する人も、非日常体験ができてラッキーという感覚が緑の雨と風で目覚めやすいからなのかも知れない。
若草山に到着。小川をよく渡る。小学校以来だ。鹿の糞がチョコボールみたいだったことしか記憶にない(今日も寝転がると臭うし、竹ちゃんも糞をおでこにつけて踊っていた)。白い泡に包まれたカエルの卵が小さな水たまりに浮かんでいる。水のないところにもあって、けっこう運任せにカエルは卵を落としている。ちょうど、大きなメスの背中に小さなオスが乗っているモリアオガエルが歩いている、ごくろうさん。
途中に幹から上がすっぽりなくんった大木が立っていた。雷が落ち、樹木の皮だけになってでもちゃんと生きている姿に一行は心を奪われる。すると、着物の石田君が知らない間に木登りをし出す。すかさず、竹ちゃんが「3分踊ったら」と言う。
ぶら下がりながらのパフォーマンス。木の無くなった部分を補うように隠れたり顔を出したりする。
そのうちに予定の場所に着く。鹿が一斉に白いお尻を出していた。ディジリドゥーの人が吹きながら上ると鹿はみんな向こうの丘へ去っていった、残念。鹿と踊ることはできないが、彼らが残した糞が彼らの痕跡を臭わせている。各々の場所に楽器の人たちが陣取る。かなりの距離だ。タイコが響くと、ああ、古来から太鼓は遠隔地への知らせの役目をもった楽器だなあと思う。
一面の黄緑に四方から音が響き合う。小雨が降っていたが終わり頃には青空がのぞき、光がさーっと芝を過ぎていく。小鳥の声も高く呼応して。
竹之内淳志は、初めて全国各地を踊りに巡った時の臙脂の衣裳を選ぶ。原点に戻るように。その赤さが少し色あせつつ緑に静かに自己主張する。
演奏する人の中にはホースを吹いたり(これはけたたましい鳥のようだ)、大きなボウルをボールで擦らせたりする人もいる。虫丸さんも一緒に付いてきて、気が付くと竹ちゃんと並んで踊っている。ばらばらに踊りつつ徐々に近づく二人。
竹ちゃんがごろごろと転がってバッタのようにはねる。雨がやむとぬくさが地面から匂ってくる。虫丸さんの裸になった上半身に竹ちゃんが絡む。雷に撃たれた樹木の表皮にヘビが絡みつくようだ。横笛が聴こえる。二人の倒立。足が不格好な枯れ枝のように伸びる。
屈んだ虫丸に竹之内が背中合わせにのってみたり、虫丸さんがいい形でアシストして竹ちゃんの若草山ダンスを盛り上げる。竹ちゃんが視界から消える。14:35。ところが、そこからが実は虫丸さんの見せ場だった。遠く山を上りつつ、痙攣的なダンスを始め、ミュージシャンたちも終結の準備をしていたら、挑発されて一くさりの即興セッション。
すたすた戻ってきた竹之内。まだ踊っている!ではぼくも、と参画するタイミングを計っている。それから12分間。長いコーダ。すっかり青空になった。
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