Arts Calendar/Art's Report site/《KOGURE Journal》FOUR SISTERS
立命館大学産業社会学部におけるレクチャー『アートマネジメント論』は、盛りだくさん過ぎたきらいはあった。
でも、ビデオを介して、モダンde平野から同窓会deアートに移って、樋口よう子の役割が変化したところを示せたと思う(つまり、アーツマネージャーから限界芸術の触媒者としての先端芸術家の役割への変化)。そのため、アーツマネージャーの役割(誰のためか)について疑問に思っていた学生には役立ったみたいだった。
今回でようやくモダンde平野を終わり、灰塚アースワークも「作品ホームステイ」中心に(「地灸」ももちろん紹介)話せて、ちょっとは前に進んだ感じ。(ビデオでは、精華小劇場コトハジメの実況放送のほかに、妻有ビエンナーレの紹介、野村誠ときむらとしろうじんの放送も見せた。)
先に、きむらとしろうじんじん(「野点」とともに少し前のCAP HOUSEも一緒に紹介できる)や野村誠(特別養護老人ホームで一緒に作曲をした時の紹介)を映像や資料で複合的に紹介したのは、これからのレクチャーに役立つと思う。
京阪電車の北浜で降りて、ギャラリー風へ。加藤義夫さんが紹介していた、湯浅龍平“Mirror,mirror on the the wall,,,”を覗く。近くに、OUIというカフェがあって、ひさや大黒堂とか証券会社が並ぶ界隈にはちょっと珍しいファサードデザインの店。
JR東西線(北新地駅まで歩く)で塚口へ。兵庫県立ピッコロ劇団第16回公演。『四人姉妹』18:36〜20:36。間に15分間の休憩。
女子高校生の集団が前に陣取る。授業の延長のようだ。震災後にすぐ復興への励ましもこめて岩松了が作った。谷崎潤一郎の『細雪』を舞台化した想い出を巡って、若く亡くなった友人の7回忌の一夜を扱った作品(やはり「細雪」と同じく阪神間のブルジョア邸宅が舞台でお手伝いさんがいる)での話。
初演(1996.6)は演出が藤原新平。今回は演出も岩松了。かなり忘れていたが新劇風だったとうっすらした記憶が蘇る。
夜中に来る蛭間という家政婦(吉江麻樹)が(一見)無意味に踊り出して暗転するあたりに、おかしさを介しつつ、多すぎる情念を蛇行させる、岩松了演出ならではの個性を垣間見せる。
でもいまから見えると日常関係の演劇ではあったが「静かな演劇」とは別であることは明か。押さえても押さえても鳴り響いてしまう「やかましい」心の震えが、言葉や態度に露呈する。「垣間見せる」といったが、不在を感じさせる平田オリザらの引き算的演出とはまったく違うことはいうまでもない。
遠近法を強調した舞台(島次郎)。4つの世界が前後左右に区切られている。
上手奥はバルコニー。隣の空家やたき火が見える。雨宮先生(平井久美子)と来生(草光純太)がロメオとジュリエットみたいになったりして、バルコニーの密会の様相まで呈する、従来の演劇チックな場所である。
同じく上手奥は階段で1階へ続いていらりもする。バルコニーと階段は隣り合わせだが正反対の役割を果たしていて、日常的な世界では唯一の通路であるから、日常的な場面ではすべてここから人が登場し退場する。
上手前方と下手前方は斜めの段差がある。上手前方の方が狭くなっている。これは単に遠近法のためなのか、もっと象徴的な意味があるのかは分からなかった。上手前方が洋間。ソファーがあって、仮眠を取る秋本(森好文、四人姉妹では長女役を演じる〈秋本公子=谷山佐知子〉の亭主)が天宮先生と来生の隠された関係を知ったりする場所。
前方でほとんどの人間関係が提示されていく。下手前方は日本間。お茶を飲みながらの中年男女のくつろぎ。冒頭は秋本公子が旦那に背中をかいてもらうという岩松らしい巧みな誘いである。
「四人姉妹」で三女役をした沢田律子(安達朋子)の旦那沢田(孫高宏)が、次女役だった鈴木厚子に好意を寄せていることでのどたばた三角関係が、「天宮=来生=四女役だった故真理子」の三角関係との好対照を呈する。
そして後方下手。ここは襖で隠されているが、ここに故真理子七回忌の祭壇がしつらえられていて、その向こうから突然あの世から来たかのような故真理子とその妹妙子の祖父(福島栄一)がやってくる。(全体にそういう感じがしたが、妙子役の島崎鮎美は特に台詞のテンションの高の違和感が初め出た。)
遺影と鏡。
囓られる林檎、転がる林檎。
秘密の漏出。来生を隠す場所。
後方下手がこの家族と友人達の隠された深層部分であることは明白である。隠されていた奥の間(妙子の部屋にいまなっている)、そしてもう一つ祖父がいる部屋。つまり二重底の無意識というしつらえであった。
初日なので、作・演出の岩松了が終わりに舞台に登場して花束をもらい挨拶をする。ベルギー戦があるのにもかかわらず、来ていただいてありがとうございます。そういえばワールドサッカーか。
同時テロ事件やアフガンアメリカ仕返しテロ、そして大きそうに報道される世界の大イベントなどなどがいっぱいありすぎ。
オウム事件もそうだが阪神・淡路大震災のこともすっかり想い出の遠い世界になっていたことをピッコロ劇場が静かに告発しているんだなあとかってに思いつつ。
名誉館長になった山根淑子さんの変わらない気配りに感心しながら、塚口の自動販売でモルツ500mlのボタンを押す。
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