Arts Calendar/Art's Report site/《KOGURE Journal》YANE-URA
by RINKOGUN
大阪駅から15分、天満駅から5分の扇町ミュージアムスクエア。通称、OMS。燐光群の公演もここでの最後となる。
自分のアトリエで長く公演し、名古屋市大須の七ツ寺共同スタジオも終わってからのステージ。開場前に蒸し暑いのでお店でうろちょろしていた時に作・演出の坂手洋二さんに会う。彼は口髭をはやしてなんだかいい顔をしていた。
その顔の理由が今回の作品、『屋根裏』19:05〜21:05を見て分かった気がした。少なくともぼくはとても満足した、個人的な関心事とも「ひきこもり」のモチーフがシンクロすることもあり。クリアな頭でしか拵えられない喜劇として。どうどうと「ひきこもり」の諸相を扱いながら、おセンチにならない硬質なコメディとして。
つまりは、真剣に大笑いしたのだ。この「屋根裏」キットという、ひきこもりの人たちの生存救命や生き仏ミイラ願望の商品発明のアイディアに。小泉さんまで自国にひきこもって沖縄に基地を集約して切り離すという文化的鎖国になる怖れをついた政治批評に。
お芝居というものにはこんな直裁的な時代批評がもっとあってしかるべきだと思う。もちろん、いまだけに通用するねた、泡のように次々と出現する特定の総理大臣名などをねたにすればすぐに賞味期限が切れるかも知れない。それに説教臭さも芝居にこもる危険性が増加する。でも、それでもいいと居直るべきだし、ディテールなんてどんどん作り替えればいい。新聞読みという河内音頭を思い出す。
美術(じょん万次郎、美術協力に加藤ちか)がこの笑いの原点である。照明も点みたいなスポットで客席の頭上を注意しつつ活躍していた。役者も頭上注意の狭いユニットが主な演技場所となる。
こんなに小さな空間を使いながら、上から、横から、下からこの屋根裏キットに入ったり出たりすることで内外の交通手法の多様性を示すことが出来る。
このキットは移動式なので、取り巻く環境はトラックの中だったり、庭だったり、2階だったり、河川敷だったりする。川にどぼどぼ入ることもあるし、登山の五合目で山小屋の替わりにもなる。主役はいうまでもなく、この屋根裏という商品だ。(昔「小さな家」という絵本があって色々なところを家が転々と運ばれる話に夢中になった記憶がある。)
屋根裏キットという元々「もどき」(シミュラークル)な商品にもオリジナルとコピーがある。オリジナルには、なぞの落書き(オリジナルの作者の一人のイラスト「屋根裏ハンター」)というのだ。
本筋とは関係ないが、象印というメーカー名の登場も微妙な線だがぼくには面白かった。実は象印に勤めていたお父さんの息子とよく遊んだことがあって、象印というメーカーの、大手家電とは違うちょっとしょぼくて可愛い感じが昔から気になっていたから。
役者のことを書き出すと役柄がごちゃごちゃしてきてよく整理できなくなるので省略。でも、何役もするとか狭いキットに出たり入ったりととても大変な作業だったと思う。こんなに蒸し暑いことでもあるし。
敢えて気になることを書けば、チラシの表面が見づらく目立たなかった(そんな隠れ家的な象徴なのだろうけれど)ことと、それでも屋根裏から外に出て独白という説明をしすぎること。
ディテールで特に面白かったのはゴリラと呼ばれる女子中学生と教員連中から苛められる女子教師との逆転現象。あるいは、新婚夫婦のうち妻の潔癖性的ひきこもり現象など。
少女監禁や顔の見えないネット仲間の話はよくあるけれど、これほど多彩に展開していけば、気にはならない。
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