Arts Calendar/Art's Report site/《KOGURE Journal》GALLERY
wks:SANO Makiko
午後、何も予定がなかったので、頼まれてもいないのに京都橘女子大学の大学院開設記念の講演会と進学ガイダンスをのぞいた(「文化政策のプロフェッショナルになるために」)。京都タワーホテル7階。このホテルに初めて入ったけれどかなり年季が入っていて、ミステリードラマとかの撮影現場みたいな感じがした。でも駅前なのと目印があるんで、説明会会場としたらとても便利だろう。
池上惇大学院文化政策学研究科長(「地域創造のためのまちづくりと文化政策」)と端信行教授(「文化マネジメントの時代〜アートと市民の共生へ〜」)による講話のあと、中谷教授から特色について、そして斉藤入試課長から手続きの説明がありその後個別相談という流れ。14時から17時。60名ほどか、予想以上の入りで椅子も資料も追加したりして、ばたばたしていた。
さて本題に入ろう。
大阪駅から西天満へ。GALLERY wks.(ギャラリーワークス)。「西天満小学校の北隣、マンションの11F。大阪で一番“高〜い”ギャラリー」だそうな。前はだいぶん探したが、一度覚えればすぐに行ける。大阪のギャラリーツアーをするときにはこの辺りはちょうどいい候補になる。散歩道としては改築(いや改装?)なった中央公会堂もあるし。
正月に届いた、この高くておしゃれで新しいギャラリーの8月までの展示お知らせのカレンダーを見たら、1月は、大阪中央青年センターで行われた「声の祭典」に参加してくれたglass marketsさんたちが、2日間だけ朗読をするというので、ちょっと面白そうなので出かけたのである。
『怪奇手帖』--《佐野真希子のひとり語り〜マンションの一室の謎めいた密会〜》。
19:13〜20:09。構成:池田長十、1500円なり。一人で3つの短編を朗読するので、これぐらいが朗読する方のことを考えてちょうどいい時間だろうと思う。それに観客としても、固い椅子だし20名限定だし、正月明けにはちょうどいい設定だった。
ホワイトキューブになったマンションギャラリーに椅子が20個。正面に黒いソファー。側面には手前に長椅子、奥に紙が貼ってある。その紙には2つめに公演する朗読作品の一部分がワープロ縦で書かれている。流れるBGMはシャンソンというかカフェフレンチみたいな優しいもの。このヴォイスユニット、グラスマーケッツはカフェ朗読とかしているので、そういうおしゃれで重くない感じがここの基本的なテイストフレーバーなのだろうかしらと思いながら始まりを待つ。
始まる前に片付けられた回り幻灯機は、ぼくらが待っているときにはずっとぼくたちのあいだをぐるぐるとめぐり、赤ちゃんの映像を壁に映し出して回っている。特に映像が今夜の朗読と関係があるわけでもないが、そういう雰囲気ということなのだろう。ぼくの目の前には、桃色の淡い着物の女性と男性のカップルが観客としていて、少し正月気分が出ている。最後の朗読が婚約を巡る話なのでどうなるかと思ったらハピーエンドだったなあ。
読まれた3つの作品はすべて城昌幸という探偵小説家(詩人であり大衆歴史作家でもあったらしい)によるもの。この城という人は1904年生まれ、江戸川乱歩が彼について好意的なコメントを残ししている。
そしてそのコメントも朗読されるから、作者紹介がそれによって上手に上演に挟まれていて、親切な導入だったと思う。
こういう昭和はじめのよく知られていない(ぼくは門外漢だからかも知れないが、一般にはそうだろう)作者を、こういう作風に合わせた形(元マンションの一室での密会風)で取り上げるのは文学の新しい受容形態(アウトリーチ)として、とても重要なことだと思われる。
朗読者、佐野真希子は長身、黒い衣装に軽くて長くて白いマフラー。声がよく響く。
淡々とした朗読なのだが、少し会話調の部分は声色をいささか変える。
初めは側面の椅子にあった本を開いて。古本屋ですごい装幀の日記を買った話、『怪奇製造人』。夢と殺人を日記で追う。
つぎは『絶壁』。大きな絶壁に人間たちが無数上っていく話。頂上に「変化」がいて、涙する。「蜘蛛の糸」みたいな感じもあるが、とても遠くから人間模様を見ている作品の雰囲気がよく出ている。
ここで休憩。熱い昆布茶と冷たいウーロン茶が出される。ギャラリーの利用としてこういう小さくてきらりと光るパフォーマンスとくつろぎがセットされることは素敵なことだし、ギャラリーとしても新しい来客づくりとなるかも知れない。
最後の『想像』はなかなかに「こじゃれ」ていて、一番面白いものだった。まず30代のモダンな社長が22歳のタイプライターとの恋をかってに想像して目の前のその彼女に、そんな想像のストーリーをぬけぬけと話しはじめる。結局はありきたりの結末になる。つまり彼女を妾として囲って彼女は美容院を経営するという見通し。だから、つまらないからよそうということになる(けれど、今から見ればなかなかに優雅な話なのかも)。
彼女も婚約者の27歳ぐらいの村上さんとの結婚生活の行方を想像して言葉にするとそれで自分がうんざりしてしまう。それで婚約をやめようと。これは社長が彼女との関係をさきに想像したこととどう関係するのかと考えると、その答えは一義的でなくてもいい感じがするので、それが面白いことだと思う。
とにもかくにも、ある「現実」が想像ではなくそこにはやっぱりあって、先ほどのカップルには打ってつけの、こじゃれた結末を迎える。掌編小説が得意とする小さな小さなドラマチック。
帰りは淀屋橋へと向かおうとして、気がつくと天神橋を渡ってしまい、京阪天満橋駅まで歩いてしまった。工事中のマンションなどがあって方向感覚がまるで狂う。南西へと歩いていたはずが東の方へとずれていたのだ。途中、歩道橋を上るとその上で寝ようとしていた人がいて、彼は迷惑そうに毛布を頭まで被った。
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