Arts Calendar/Art's Report site/《KOGURE Journal》MissngLink-KAVC


vol.417.
1/12(日)
A級MissngLink第6回公演『MissngLinkの謎を追え!』KAVC

神戸アートビレッジセンターへ。今年初観劇なので、それで余計に嬉しかったのだろう。

KAVCチャレンジシアター’02−’03。A級MissngLink第6回公演『MissngLinkの謎を追え!』。地下のホールでの公演。2階のメインホールでは子ども劇場のような催しが行われていた。客席は満席。年配のお客さんが多くて役者の関係者(親など)かも知れない。まだまだ近畿大学などを卒業して間もない若い劇団(代表は、未来からやってきたエイジェント役をしていた野田忠良)である。

あえて言えば、この劇団を避けていたのはひょっとしたら劇団名のせいだったかも知れない。A級MissngLink。ミッシングリンクという進化論ではお馴染みの話もいささか通俗だし、やっぱり自分たちのことを(永久とのダブルミーニングだそうだが)「A級」というのは、(すでに「B級」とか「C級」とかがついた劇団はあるから)わざわざ「B級」と呼べという必要もないけれど、ちょっと気持ち悪い感じがしていた。

13:04〜15:05。舞台は閉校となった元小学校でいまは地区公民館となっている。冒頭に進化論への道のりを簡単にOHPで説明するシーンがあって、聞いているのは若い女、優子(安野公子)と小太りの男、船越(楠本智/AQUA-TRON)だけ。説明しているのも同じ世代の頼りなげな男、達也(内藤隆司)。

OHPがちゃんと投影されていないのはこれがあとで地域通貨の実験的な(そして恋愛というコミュニケーションツールとして企図された)軽いものだからということが分かる。公民館の場所は、ここにやってくる大学の研究室がある京都などからちょうど日帰りで行けるぐらいの過疎の山里。

それは冒頭のシーンの後などに白い幕が降りて移される山の緑の自然や樹の伐採、製材の様子からすぐに察知されることでもある。この映像は特に伐採と製材の音が大きく金属的に響いて自然はステキという癒し映像よりは格段に優れている。ただ、最後の方の映像上映においては、この舞台のパネルがここで作られて持ってこられたという舞台裏ネタにもなっていた(この最後の10分間ぐらいはメタエンゲキ的なのだろうがどうももっちゃりとしていて未消化な感は否めない)。

劇に登場するメインの人間関係は、一応この3人と、いかにも地元だけで育ってきたという役作りの則夫(松課長)と絵里(横田江美/劇団空箱)、合わせて合計5名であり、この5名は赤熊地区青年団メンバーでもある。則夫は消防団に入っていて生業は地元スーパー的な販売店経営。絵里はどこかの仕事をあっさり解雇されたあと、化粧品工場の検品のアルバイトを始めていて、則夫からチョコキュー(チョコの卵に入ったフィギュア集めで浪費しまくっている)を買い続けている。

則夫の特色はおっさん文化どっぷりで地域通貨の実験にも一番消極的であり、消防団ではセクキャバで楽しんでいて、新しくこの地区に来た船越は、セクキャバへの集団強制参加という風習のために消防団をすぐに辞めている。船越はどうしてここに来たか分からないが(無農薬のトマトを栽培していて地域通貨の提供物品にしているから、メインに農業をやっているのではないだろう)、地域通貨運動には、小学校の先生になった優子とともに積極的。

優子のように地域通貨は失われたリンク(つながり)の回復だと思うような単純さは持てない達也は、東京で就職するようで、地域通貨とも地元の先生として定着するだろう優子とも離れていく。それの象徴がひよこの土産の食べ方の違いとか、達也が探る、ずっと謎だった使われていないスイッチの解体とかがあるのだが、それは強い象徴ではなくほのかな暗示としてばらまかれていて、主人公達也の中途半端な態度が作者の立場に一番近い感じがする役どころである。

サブの集団だがかなり重要な役割を果たすのが、大学の研究集団で、渋谷ゼミのご一行。赤熊青年団が地域通貨を導入するために指導しに来ている。特にLETSタイプのネットワークがその対象で、渋谷教授のことばは元マル経ぽいが、たぶん作者の戯曲づくり調査の限度がこうだったのだろうと思われるので、あんまり思想的に追求する必要はないようである。

それよりも面白いのは、LETSの方がいまの円貨幣よりも人びとのコミュニケーションづくりとむらおこしに役立つことをシミュレーションゲームとして演出するところで、実際にこうやって演劇的にやっているのかなと思わせるあたりが面白い。

原(高坂至/Virthus)という盗癖のある大学院生がいて、性善説的善意から出発する地域通貨を布教する研究グループとしては致命的になりかねない矛盾分子となっていたり、芹沢(古石千尋/劇団各駅停車)が鋭い研究者なのに肉体労働をしているというキャラクターの彩りをつけていたりして、それがどう転ぶのかなと思うが、手を広げすぎているから、サブの集団について、そのストーリーはあまり展開しないままであった。

その替わり、どうでもいいようにぼくには思われる未来からの暗殺者とそれを防ぐエイジェント、そのエイジェントが原教授を好きだというゲイ問題などがごちゃごちゃと最後にあってこれはまあどんなにひいき目に見てもここでは余分品。だいたい西洋のLETSをただ日本で布教している渋谷教授を暗殺したところで何も資本主義が変わることは有り得ないことは誰でも分かることであるし。

それに、研究論文とかもう少し今日的に流行の(猿学とかの大学研究室を巧みに扱う平田オリザ的に)学者理論(ニューゲゼル論とかアフォーダンス進化論とか)を使ったりする方がいいだろう。が、それはそれでいまの若者の捉え方だろうとこちらは実態サンプルとして興味深く見ていたし、京都のLETSの会に一度作者が出たぐらいでこれを書いたらしくて、そういうことであれば彼の演劇創造力はなかなかのものだろうと逆に思った。

次はどんな作品になるのか。まだいろいろな形を模索するのだろうが、もちろん初夏の第7回A級MissngLink公演については、欠かさず観ようと思った。


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