Arts Calendar/Art's Report site/《KOGURE Journal》SNACK*K
10時半に待ち合わせて「タフ3」=‘関西(ほぼ)女性アーティストファイルvol.3’の事前打ち合わせとワークショップの場所探し、そして竹林めぐり。こんな小路があったのかと教えられ、雨の中で小鹿さんの白い靴はずぶぬれになっていたけれどとても楽しかった。徐々に『五感で感じるスロースタイル〜縁側でつづるアーツ』の形が見えだしてきたね。
第1期は、6月から7月にかけての4つのワークショップからなる。「農」はこの前に来てくれた布瀬さん。「食」はプリンツの鈴鹿さん。そして今回来てくれたのが、「紙」の村田英樹さん(成案造形大学住環境デザイン終了)と「竹」の笹尾千草さん(地下茎代表)だ。
(この辺りのことは「こぐれ日録」を参照ください)
タフ3のチラシの文章を小鹿さんの原案にちょっと手を加えてから大学を出て新京極通りを下る。ここでも映画館が70年ほどの歴史に幕を閉めていた。ビブレのそばのお寺さんの横、ギャラリー連(れんげ)でお芝居があるというのだ。
レンゲというと、辻野さんやつき山さんのイメージでは、蓮の花ではなくて、昔は春の田んぼを覆っていたレンゲ草や、ラーメンの汁を救うスプーンみたいなものを思い出す(辞書を引くとその匙は蓮華の花が散っているところから「散り蓮華」というのが語源らしい)。
はっさく公演「スナックケー〜AとBのポロネーズ」。1時間半ぐらいだったか。表方にうちの専門ゼミ生(予定)のゆっこ(小林さん)がいる。少し互いに照れくさい。階段を上ると30名ほどしか入らないところにぎっしり。名前を思い出せないが車椅子で出演する役者さんが負ぶされて階段を上ってくる。
「はっさく」とは多分、辻野惠子さんと豊島由香さんのユニットで、チラシとか1500円のTシャツとか、芝居中に登場する小道具、若い男につながっているカンカンにつり下がっている絵とかも、すべてつき山いくよさんの絵だ。
なぜTシャツに褌一丁の男の絵が使われて売られているかは、お芝居を観ると分かる。つまり新聞勧誘の若い男を三十路女二人が捕獲したのだが、まあそれとつながっているのだ。手に持っているリンゴは生のパイナップルとは違うけど。あえていえば、チラシの表面の大きな口は辻野さんね。
スナックケーというのは辻野さんが発見した「小粋なスナック」だという。中野祥司作詞・作曲・唄「新大宮小唄」というのも実際の話であり、ここでカセット500円で売られている。カウンターでは実際にビール200円、ジュース100円で売られていて、お芝居の設定からして元スナックに二人が住んでいるというものだが、そのまま芝居が始まる前からその雰囲気が出来ている。
ぼくがジュースで豚まんを食べていると何やらいい匂いがすると辻野さん。彼女ら二人の役者自身が始まる前から公演場所に普通にいて、何気なく客の荷物を預かったりしていて(それは芝居に使う内職の箱とか過食症でどうしても食べて吐く行為を繰り返してしまうスナック菓子とかと同じ所にしまわれる)、これも地続きである。
何だかこういう感じ(非日常が演劇であるとかいう大げさな身振りを嫌う傾向)が京都のいまのダンスやお芝居や音楽や美術やデザインの一つの面白い現象であり特色だと思う。それでいて希有なことに阿(おもね)らないストーリーがあり、やむにやまれないテーマというか心の奥の叫びみたいなものが表出されている、この芝居には。
(そうでないダンス公演とかも実はいっぱいあって、そうすると身内ネタだけの気持ち悪いものになってしまうから絶妙な境界線があるが、それはきちんとみえないようなぼんやりとした渚みたいなものだから、それらの評価は細心の注意がいる。)
ぬいぐるみショーの練習がこの作品に明るさを与えてくれている。体力が落ち体型が崩れることをいかに遅らせるか。ぼくも30歳代ぐらいは腕立て臥せや腹筋をしたものだ(いまは、朝のラジオ体操だけで、それ以上は何も続かない)。ショーを練習する豊島由香の河童の顔が可愛く哀しい。
辻野惠子(もちろん役柄なのだが、名付けようがないので役者名で呼ぶけど)の外へと壊れる姿と対照的に、豊島(が演じる女)は中に入って壊れていく。窓の外にも壊れて白い肉片が枝に掛かっていたり、「辛気くさ子」と子どものように公園デビューになかなか成功しない不細工すぎる者たちがいる。
どうでもいいことだがとても大切なことを置き去りにしているわたしたち。不細工すぎておかしく、優しすぎてうるさくなる。泣きながら戯け、諍いながら夢と同居する。ふと、仙台の丹野久美子らの舞台を思い出した(劇中実際にお酒を飲み続けるもので、確か女友達と言ったっけ?)。
紹介した若い男(物音だけ)や、外の辛気くさ子のほか、見えない人、話だけの人物が二人の会話や電話の先に「ど」リアルにぶらさがっている。和田勉と呼ばれる小林という男(しつこく辻野の携帯に鳴り響く)、お風呂で一緒になると彼女のうわさ話のためにのぼせ上がってしまうクローバーのおばちゃん、この住まいに前いたみきちゃん、商店街のオジサンなどなど・・・
なお、八朔(はっさく)について調べてみた。すると、「旧暦8月朔日ついたちのこと。この日、贈答をして祝う習俗がある」、あるいは「ミカンの一品種。ブンタンと他の柑橘かんきつ類との交配種。甘ずっぱく、風味良好。八朔柑」とあった(広辞苑)。もちろん後者の意味ではっさくなのだろうが、前者の八朔の行事にはたとえば「八朔の雪」というのがあって、「八朔の日に吉原の遊女が全員白無垢を着る風習があったが、そのさまをいう語」であったりする。
ついでにポロネーズも。「ポーランドの舞曲。第2拍にアクセントのある、ゆるやかなテンポの4分の3拍子」。ショパンの「英雄ポロネーズ」とかだと賑やかで「ゆるやかな」という感じがしないけれど。
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