Arts Calendar/Art's Report site/《KOGURE Journal》Shinsekai&Nara
生憎の雨。はじめての『コンテンポラリーダンス・ツアーin新世界』なのに。でも結果として「街にダンス」の意外さと面白さはいささかも減少しなかった。もう少し耐水のカバンを買わなくちゃいけない。デジカメも防水仕様ではなくて危なかったかも知れない。親切にも透明のレインコートが各自に配られた。これは傘をさすとダンスを観るときに回りの人の迷惑になるからでもある。
とてもNPO法人ダンスボックスのみなさんやボランティアの方々はその準備に苦労したと推量されるが、その苦労がそんなに見えないですんでいる(大谷燠さんらが携帯で次のツアー会場とのやりとりをしつつ、放送局などの取材対応なども同時に行われるからきっとてんてこ舞いのはずだが)。
カッパからしたたり落ちる雨。見ているほうももちろんそうだが、踊っているまっかな洋服姿のエメスズキも濡れた地面や天から落ちる水滴などお構いなしだ。いや、その雨を取り込んで、街の驚き、天の慈雨をもダンスにしていると言った方がいいかも知れない。
誘導してくれる勝野タカシの太鼓の皮もどんどん濡れるし、KEN MAIの箱形のアコーディオンのようなクラシカルな楽器も心配だ。それにしても竹ち代毬也の案内と何気ない解説は暖かくて、不必要にこわくなく、しかも適切だった。
ホールでのダンスでももちろん公演は一回限りのものではある。
が、野外、しかも関係者以外の大勢の通行人との接触も含めてのダンス公演は、意図を越え二度と起こらない「ハプニング」であるとともに、再現不可能なライブなアーツであると掛け値なしにいえる。見る方もそれなりの余裕がいるけれども。
ここでは、街ゆく人も巻き込み観客へと地続きにつながるし、彼らは最もこわい批評家であったりもする。ぞろぞろ歩いているとフェスティバルゲート内にいるときは、どこか奇妙な宗教団体か何か(いまだとイラク攻撃反対デモ)のように思われていたのかも知れないが、新世界に出るとそれはもっと違う風景になってあったのではないかと思う。
それは、(少し失礼ないい方かも知れないが)フェゲに集まっているお客さんたちと新世界を歩く人たちではその佇まいがずいぶんと違うからだ。つまり、踊っている人たちを見るのと同等のユニークさが、彼らの身体やそぞろ歩き、立ち飲み屋での歓談、ぎっしりと入った将棋屋さんの中での対戦から放射されているからだ。
実は、予定よりも時間が押したこともあって、竹ち代毬也と勝野タカシの公演と誘導、KEN MAI(ケン五月)の美術館エントランス前公演(4月の公演が楽しみになった)、エミスズキの王将前パフォーマンスまでを観てから、新今宮駅よりJR大和路快速に乗って、法隆寺駅に向かった。
それで、最後のスパワールド大階段でのクルスタシアを見ることが出来ず(そのあとの温泉パーティ参加も)。想像では温泉なので彼女たちには思い出深い浴衣姿で大衆演芸的なモチーフを使ったすかっとするダンスなのではないかとただ想像するのみである(残念です)。
でも、いかるがホール大ホールでの、‘なら国際音楽アカデミーチャリティー・コンサート’『モーツァルトの夕べ』は予想以上に充実したピアノトリオを4曲も堪能でき、響きも心地よくて、野外のツアーでの興奮を軽やかに鎮めてもらった。18:08〜19:45。
アルバート・ロトのシンギングトーンタッチのピアノ、若林暢の艶やかなバイオリン、そして大柄でリラックスしたチェリスト、チョー・ヨンチャンによる「斑鳩トリオ」の演奏。始めに、チョー・ヨンチャンのバッハの無伴奏チェロソナタよりサラバンドの独奏が斑鳩の仏像へと捧げられた。
ぼくはモーツァルト音楽ってそんなに得意ではなかったのだが、こうして、8歳のときのごく初期から熟成期までを4曲続けて聴くと、おのずから熱いものが込み上がってくる。とくに、ピアノ・トリオ第6番K.548は震えた。ダイナミックな強弱のある作品。特に小さな音がただの小声ではなく、心の奥からの声だった。
最後の第7番はもっと軽やか。明るい「諦めの音楽」のように思った。三人の演奏、とりえけ、アルバート・ロトのピアノは、ぼくたちに届けようと必死になるのではなく、ピアノの上空、10cmぐらいのところに音をただすーっと置いて、それがかってに飛び出すのを眺めているかのような演奏であった(わけわかんない比喩ですが)。
なお付け加えると、『コンテンポラリーダンス・ツアーin新世界』は、実は大阪市立青年センターの主催事業である(去年は、NPO法人アーツワークスが制作して「声の祭典」をしたもの)。今年16日の制作企画は、NPO法人DANCE BOX。
募集されたボランティアはお揃いのバンダナで、13時からは、中西恵子ナビゲーターによる『からだとあそぶダンスワークショップ』が、Art
Theater dBで行われていた。
障碍者10名+一般参加者10名(これは実際はもっと多かったのではないだろうか、数えなかったが)の参加によって、双方の二人がペアになって身体で交流をかわしていく、優しいタッチのワークショップだった。
障碍者だからといってとりわけ違うことをするのではなく、スピードをゆっくりしたり、車椅子の男性がいたので、そこを中心に取り巻いたり。その都度柔軟に対応しつつ、あくまで和気藹々にワークショップは進行していた。この車椅子の男性がその後も雨の中ずっとダンスツアーに参加していたのは、このワークショップがとてもよかったためだろうと思う。
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