Arts Calendar/Art's Report site/《KOGURE Journal》A man is standing in no man's land-1
また伊丹駅に早く着いた。14時15分。
のんびりアイホールのロビーで芳江と座っている。
渡されたチラシの束と深い青色の『透明人間』の当日パンフ。
の表紙や裏表紙、クレジットされた文字は黒色で目を凝らさないとよく見えない。
・・・アイホールダンスコレクションvol.30、Take a chance project005。山下残ダンス公演『透明人間』、振付・演出:山下残。出演はマイクで自分の書いたダンスを語る文章を読む山下残のほかに、7名のメンバー(垣尾優、滝本あきと、納谷衣美、藤田一、宮北裕美、夢海、山田奈穂子)。
音楽:ORGAN、舞台監督:西田聖、照明:三浦あさ子、音響:加藤陽一郎、宣伝美術:納谷衣美、宣伝写真:河上隆昭・西園佳代、翻訳:コゴナオコ+サラ・ヤンセン。主催:伊丹市・(財)伊丹市文化振興財団、平成15年度文化庁芸術拠点形成事業。・・・
当日パンフの本文は英語とのバイリンガルであり、日本語でも英語でも頁をめくるたびに頁は小さくなっていく。色は濃い青から黄土色、そして薄い紅殻色に色づいたと思うと白になる。前回同じく伊丹アイホールで公演があった山下残の「そこに書いてある」のようには大きくなく、それ自体がオブジェでもない。
しかしながら、それはシンプルで軽いようでその言葉の分量はずいぶん多く、ピッとした精神的な緊張感が言葉の短いセンテンスから伝わってくる。
「死体が転がっている。ひき逃げされた若い女性。・・」からはじまって、「ピアノの演奏が終わって目を閉じる。人が居ないところに人が立っている。」でおわる当日パンフには一つの段落分けもすきまも、一字空けすらもない。
英語の最後は、「A man is standing in no man's land.」となっている。そのあとに、“日本語よりも10日前のテキストによるので日本語と違いがある”と注が書かれている。もちろん、今日のテキストもこの日本語のテキスト通りではなかったような気がする。明日も少し変わるのかも知れない。
この「ダンスを語るダンス。」を知らせる事前チラシも、金網ごしの金網の大きくぼやけた像が主役であった。
納谷衣美のチラシは最近薄い紙のものが多いように思う。裏面に山下残によって書かれたぎっしとした言葉よりも、この見えにくい雰囲気こそが本質に違いないと思う。
開演までに時間がたっぷりあるので当日パンフを全部読みたいのだが、なかなか頭に入らない。終わってから、余韻を楽しむように、お土産のように読んで欲しいとかなもりゆうこさんも言っているから、それでいいのだろう。
この文章は振付のためのコトバの連なり、ダンスを演出するためのメモ的な文のようにも思えるし、日付のない観察日記のようでもある。
いや、残くんの妄想なのかも知れないし、これは単に踊りとダンスが繰り返して相互に関係し合って出来ているものの一方的な痕跡なのかも知れない。
から、あんまり目を凝らして読んでも詮無いものなのかも知れない。そんなことに考えを巡らせているだけでダンスと言葉との迷路遊びのような楽しさになっている。
気がつくと、近くにNHKの須崎岳さんらがいる。このあいだ近江八幡の野間邸で会った彼の同僚、NHK大阪放送局文化部ディレクターさんのことにふれる(関西元気宣言の取材)。MDのお礼、そして「納豆うどん」について。
これ、どうぞ。これも納谷衣美さんによるチラシです、と、タフ3のチラシを渡す。
あとでよく見ると、今日もらったチラシの束にも、6つに折り畳んでスロースタイル縁側アーツ(つまりうちのタフ3)がちゃんと入っていた。優しい気遣いはここにも現れている。
開場。
まだ空席が残っている。
もったいない。
自動速記のように、身体で考える哲学。
形而上と形而下、脳幹と脊髄の境目、
から手足を伸ばしだすダンス。
文学的な舞踊はけっこうあるが、
ダンスコトバそのものである舞踊は希である。
はじまりとも前説ともとれる携帯電話やカメラの注意はコトバではなく手話だった。90分間と空中で書かれていたが、実際には、15:05(手話注意から)〜16:27がこの公演(あと2回あるが、時間は伸縮自在なのだろうか、それとも厳格に同じなのだろうか)の時間である。
80分の間ずっと山下残はマイクを通じてコトバを朗読していた。今回彼はほとんど身体でダンスはしなかった。向きを指揮者のように変えたりベンチに座ったりはしたが。そうそう、藤田一との白黒オセロ的ダンスをちょっとしたな。
踊らないことを彼が選んだのはどうしてだったか。ぼくが思いついたぼくなりの解答は実に平凡なものだった(この公演内容などは次の444に続けて書きます)。
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