Arts Calendar/Art's Report site/《KOGURE Journal》YAKUSHI temple-ASAKURA concert
今日は、作務衣なしで大阪国際会議場へ向かう。電車でフランス帰りの中西美穂さんに会い、淀屋橋前のホテルバス待ちのときにニットキャップシアターのごまのはえさんらに会う。アーツメッセというのは、じつは、目的のないのどかな休暇、無駄話のなかから生まれる貴重な出会いの場みたいなものだ。
(会いたいと言ってきた)黒テントの足立昌弥さんに今日会うのが一つの目的だった。10/11の公演(「金玉むすめ」)は何とか一心寺まで行こうと思う。12日は京都橘女子大学のスロースタイル・アウトプット本番なので行けないが。昨日学会に入ってくれた大阪市中央青年センターの本田真弓さんからも来年度の事業についての相談がある。いっそのことアーツプログラム相談ブースを作ったらよかったかも知れない。
中西さんが築港レンガ倉庫から駆けつけてくれたので、今日の目的は終わったかなと思い、ぼくは薬師寺へ行く。まだ暑さもほどほどなので、大講堂のなかのコンサートもしのぎやすい。それでも扉は開けたままだった。これは残念なことで薬師寺の偉いお坊さんが言っていたように、蝉の声や自動車の騒音を遮断してこの大講堂の音の響き具合を聴きたかった気もする(暑さの問題を考慮していないが)。
大講堂落慶記念奉納 奈良・薬師寺から願いを込めて『なら国際音楽アカデミー講師スペシャル・コンサート』。17時25分開場。境内には朱塗りの平屋建物がぜいたくに配置されている。新しいのに朱色が少しくすんでいるように見える。けばけばしいと言われたくないからそうしているのではないかなあと思ったりする。昔はきっともっと鮮やかな朱だったのではないかと想像するがもちろん写真がないから真相は分からない。
17:45、大小の蝋燭が僧侶によって灯される。仏様の前にある燭台とともに線香にも火がつき、すぐに香がとどく。17:53、鐘が鳴る、数度。音が香りとともに匂う。声明があったのだが、はじめと終わりに聴衆も「そうらい」「そうらう」「「そうらい」と合掌してお辞儀をする。声明は声が小刻みに揺れるものとかがあって、面白かったし、いい声だった。
「散華の法要」なので、薬師寺と書かれた色とりどりの花びらが撒かれて芳江が欲しがったのでとってやった。声明のときにたまたま救急車がピーポーピーポーとせわしく行き来していた。蝉も負けじと鳴いている(コンサートが始まると日が暮れるに従ってどんどん静かになった)。
薬師寺大講堂は弥勒如来がどんと座っていて、両側に菩薩さんが立っている。その四方に四天王。面白いのは裏側にインド人のようながりがりの外国人顔の人たち(修行をした偉い人たち)が少しギリシャ彫刻みたいに立っていることで、ここを通って日本風の仏さんに出会ったから奇妙なトリップ感があった。
ステージは弥勒如来の前で、講義台が左右にあり、室町時代には講堂で議論をするだけではなく、それを分かりやすく芝居仕立てにしていて、そこから狂言が生まれたと偉い坊さん(松久保秀胤管主)が言っていた。それにもっと前から雅楽みたいのはここで演奏されていたから、今日のようなコンサートも何らおかしくないと言うような解説があった。
前半はソロの曲3つ。みんな祈りの音楽だ。声明と同じく仏たちに向かって演奏するので、ぼくたちはその横で同じように御仏に向かっている感じになる。宗教と音楽が一体となっていたときにはこういう形でパフォーマンスする人と信徒であるオーディアンスが存在し、本当のオーディアンスは実は神仏だったのではないかという図式を思い出す。
トーマ・プレヴォのフルートでまずバッハの無伴奏フルートソナタ(パルティータ)。サラバンドのゆっくりした舞曲が空間とぴったり。次に松下功「マントラ」、若林暢のバイオリンである。5つの譜面台を使った力のある演奏。全体のなかでこれが一番心に響いた。声明と同じようなポルタメントだなあと思わせてもらったり、空中に投げ縄が放り出されてそれが何かをつかもうとしているような幻想をみた。
チョー・ヤンチャンのチェロソロ。松村禎三の曲「祈祷歌」。一番前の柱のそばだったので、姿がなかなか見えなかったが、彼のソロは譜面台の楽譜まで見えて、楽譜が演奏に変わっていくさまをみることができてよかった。休憩のあと、ブロッホ(ユダヤ民族主義の音楽家らしい)のバイオリン(フェデリコ・アズコティーニ)とピアノ(アルバート・ロト)のための短いメロディアスな曲。
最後は、ブラームスのピアノ五重奏曲(ヘ短調、作品34)。アルバート・ロトのピアノのそばだったので、ピアノ線が上下するのを観ながら聴く。弦部分とピアノ部分が独立してきこえてくるので、少し違和感はあったが、面白い体験であることは間違いがない。柱に映ったバイオリニストの影が揺れて演奏の模様をかいま見るのはお寺ならではの光景だ。
演奏中はだいたい仏様を眺めていることにしていたが、元渕舞のビオラ演奏は覗けたのでみていた。第1楽章が力強くてとくに好きだった。第3楽章のチェロのスタッカートが印象的。朝倉さんの求めで優しい第2楽章がアンコールとしてもう一度演奏された。いつもそのときそのときで精一杯に充実したコンサートが朝倉さんちでは作られる。
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