Arts Calendar/Art's Report site/《KOGURE Journal》MINATOMACHI
U.G.-1
数日前、ウンカの大発生に遭遇して、なかなか前に進みたいのに進めず退却もできない夢を見た。
あきらめて、朱色の花が溢れる大きな木の下に休む(鳳凰木と那覇の女性は教えてくれた)。
見上げると城壁のような階段があって、そこに人型のものが影になり(よくは見えないが)いくつもつり下がっているようだ。
城壁はたぶん沖縄の城だろうと思う。あるいはこの前の糸満の御嶽がそのまま夢に出たのか。
さては、文庫本を読んでからずっと頭から離れなくなっている自殺死体たちかと思うと、上の段のものからその影だけのシェープに色がよみがえり、人型の影は普通の人であるかのごとく紐からするりと抜け出て、順繰りに歩き去っていく。ウンカの群にも平気な様子で過ぎ去る人型たち。
続いて歩くこのようなさまを、群舞のダンスシーンとしてかつてどこかのホールでみたっけなあと思っているうちに目が覚めた。
学生たちをウンカだというのは失礼だが(彼女たちにおっさん臭を毛嫌いされるのとパラレルなので仕方がないことだ)、とつぜんキャンパス内に学生がいっぱいいると、この夢を思い出す。告知夢だ。
ああ後期の授業が始まる。小西陽子さんはじめTAM研も張り切っているし、スロースタイル縁日のスタッフもリボンゼミ3人が入ってがぜん賑やかになっている。
こぐゼミはそろそろ卒業研究にむけての意識づけをしなくちゃいけないので、一人一人の夏休みの体験から研究テーマや進路についてを語ってもらう。全体的にずいぶんと自分の中から内発的に出てくるものを見つめつつあることは確かだ。まだテーマを絞れずに迷っている者や抽象的なままの者もいる。
今年しか遊べないから思いっきり遊んだという学生たちもいて、それはそれでいまからやればいいのだろうし、そういいながら本を読んだりもしているらしい。本音でしゃべることができるのもいまのうちだ。就職活動になると少しは自分をPRする術も身に付けてもらわなくちゃね。
大学院を受ける人が来たり、去年100%ORANGEさんのイラストコンクールを受賞した学生も来る。ホントに小鹿さんがいてくれて助かる(というか、彼女がいなかったら専門ゼミに京都橘女子大学文化政策研究センターの関西女性アーティストファイル/タフ3をドッキングさせたりはできなかった)。
悪いけれど、アウトプットのミートは彼女らに任せて、大学を出る。今日ぐらいしか、橋本敏子さんがずいぶんと前から構想してきた大阪難波の『湊町アンダーグラウンドプロジェクト』を拝見できないと思ったからだ。
でも、さきにこのチラシの束が大学に届いたときは正直いって行きたいなという感じがしなかった。
《・・船場や堀江に続く情報発信の場として再開発の進められるこの地において、光と空間を媒介とした新たな情報発信が、既存の価値観をうち破るメッセージとなることでしょう。・・》
銀色のチラシのデザインや風体がぼくのいまに合わないタイプであるというのが一点。そして、チラシの紹介に、いまお役所用語として乱舞することばのなかで最もぼくが嫌悪している意味不明の無責任ターム「発信」が溢れていることに帰因していた。
それに普通なら「アート」とか芸術(美術)になるところを、わざわざ再度発信というタームを使っていて、これはなんでなの。つまりそうすることで、それらは「新たな情報発信」という役割を持たされ、商業集客の場としての再開発エリア情報発信を補強するものになっている(のかな)。その根性ががあまりにも卑屈だと思った。
発信という熟語は、漢字を大切に扱っているとぼくは思い愛用している「漢語林」にないところをみても、電信技術が出来てからの、日本でつくられた翻訳技術用語である(すでに佐藤郁哉さんが指摘ずみ)。
発信が載っていない漢語林には発進や発振もなく、ハッシンとしては「発疹」しかのっていない(発心はホッシンね)。明治以降、西欧文化を慌てて取り入れるために海外術語を漢字化した。その結果、こうして耳で意味を聞くことが出来ない日本語としての同音異義語が無神経につくられてきたのである(昨今お役所でカタカナ語を無理と漢字に置き換えるというが、これはさらに問題を増やすのみであることは明白だ)。
そして最近の発信についてのこういう比喩的な拡大された使い方は、もともとの技術用語である「発信(→送信)→受信→返信」という手続きすら省いてしまっている。つまり、ただただマス的盲目的散弾銃的に「発信」だけを剽窃しピックアップしたものなのだ(まだ「送信」の方が相手を想定するだけに良心的平和的なことばである)。
だから、当初出かけるのをためらっていたのは、そんな人たちが「発信」したい情報や文化は、自己満足、他者迷惑なゴミであることを予め明らかにしていることが極めて多いと思っているからである。
それでもこの『湊町アンダーグラウンドプロジェクト』に出かけたのは、チラシの束のあとに橋本敏子さんからの自筆が付け加えられた招待状が大学に届いたからだ。
「こぐれ日記」の扉へ
無断転載禁止 掲載:アーク編集室