Arts Calendar/Art's Report site/《KOGURE Journal》funeral arts management-2


vol.473.
9/4(木)
葬祭アーツマネジメントを考える(その2)

(その1)では、以下のようなことを箇条書きにしてお話しした。
(1)ハッピーでないエンディングという現実
(2)死の摂理と、摂理に反するエンディング
(3)見えないエンディング、あるいは隠された「死」
(4)明治期における葬列のスペクタクル化

(4)の続きということになると思うが、今回(その2)は、まずお葬式ビジネスの現状から見てゆこう。そこには自宅には一度も戻らずに病院から葬祭会館に搬送される遺体という現状が浮かび上がってくるし、葬祭会館立地に対する意識の問題や演出における文化ホールとの比較論などが生み出される。

(5)シティーホールの謎
数年まえに岡山市に行ったときだったが、駅前に「シティーホール」と書いてある建物を見つけて、これはきっと英語圏の人なら市役所と思うだろうし、ぼくみたいに市民会館(文化ホール)のマネジメントについて考えている者にとってもいろいろ考えさせてもらえる名前だなと思った。じつはシティーホールという名称は全国にある冠婚葬祭互助会の会社、セレマの葬祭会館(葬儀場)のブランド名(シティーホールのあとに「玉泉院」がつくこともあるが)なのだ。

なお、「シティホール」という名称はベルモという同じ系列の互助会のパテントのようで、葬儀場というと線香の匂いが連想されたり火葬場とも直結したりするイメージがあり周囲からの反対がより強くなることから、このような名前(なんとかホール)が選ばれたのだろうと推察される。

が、「シティ(ー)」という名前は、旧来のお葬式でないお葬式の舞台であることを投げかけるとともに、これが都市の装置(インフラ)なのだとフューネラルビジネス(葬祭事業者)側が宣言したことばとも受けとめられる。

(6)「文化観光都市京都駅前に葬儀場建設反対」の垂れ幕
京都駅をおりて京阪七条駅のほうに歩いていくとこの垂れ幕があって、いろいろと考えさせられておもしろい。まず「観光」産業側の言い分だろうなとは思う。喪服(いまは黒一色)の人や霊柩車がうろうろされるのは縁起でもない(人出に悪影響)ということだろう。それにこれはセレマなのできっと飲食なども自前だから波及効果も少ないと踏んでいるのかも知れない。ホテル業も葬祭ビジネスにはとても興味があるので、自分たちの進出にとって迷惑だということもいえるだろう。

「文化都市」のほうはどうだろう。確かに葬送の文化はもっと地域に根ざしたものだったはずだ。京都には多くの寺院もある。自宅やそこが筋だろうし、第一全国共通のブランド名のものができること自体京都文化を汚すものだ、というのがこの垂れ幕の言い分かもしれない(これはぼくだけの深読みで、「文化」には死にまつわるような穢れたものは入らないと思っているのかもしれない)。

ところで、この間隙を縫ってかどうかしらないが、ぼくもお世話になっている睦建設のマンションが3つもこのあたりに建設された(同じパデシオンという統一ブランド名だ)。これについては昼間人口が増えることもあり反対はなかったのだろうかしら。もちろん自動販売機も乱立しコンビニも多くできて便利ではあるが、これも文化都市京都にとってそんなにいいものではないようにも思う。どうして葬祭会館だけ目の敵にされないといけないのか。このあたりがじつにおもしろいのである。

(7)毎年百か所以上増えている葬祭会館
全国の文化ホールは民間も入れると三千ぐらい(公立は2500)といわれている。じつは、葬祭会館も同じぐらいあるのだ。この偶然の符丁がいかにもおもしろい。

『月刊フューネラルビジネス』(綜合ユニコム株式会社)という葬儀業界の雑誌によると(2003.5号)、2002年の新規開業葬祭会館数は142か所(前年比11%の増)であって、2002年末、全国の民間葬祭会館数は2814施設という。なお、このほか寺院斎場と呼ばれる寺院が所有する葬儀専門式場や、自治体が設置運営している火葬場に式場を付帯しているところもあるから、三千は優に超えているけれど。これは、ぼくにとっては10年ほど前に公立の文化ホールが乱立した時代を思い出させてくれるものでもある。

ちなみに、1889年は891施設、1992年には1140施設(年間新規開業数:99施設)、1994年で1422施設(年間新規開業数:133施設)、1998年が2191施設(年間新規開業数:217施設)というぐあいである。
最近の傾向としては投資規模1億円内外の小規模会館(家族葬の増加)が増加しているという。これはいわゆるロードサイド店の展開であり(DIY店とかファミーレストランチェーンとかにそっくり)、じっさいに中小葬儀屋さんをフランチャイズして再編成する動きが出ている(有名なのは、家族葬の「ファミーユ」)。

(8)葬祭会館数における地域的な特色
郊外都市に乱立する傾向にあった文化ホールとはまた違う形で、葬祭会館数が都市の人口規模とはなかなか比例しないのもおもしろい現象であって、じつは葬祭文化はいまの地域文化全滅時代にあって婚礼などよりもずっと地域性を保持していたということがいわれている。それが、以下のような分布上の特色となって現れているのだろう。とりわけ、京都における少なさはこれだけで研究調査(もちろんビジネスチャンス)の余地が多いと思う。

【主な大都市の葬祭会館数】
 東京23区117 横浜市86 北九州市71 名古屋市60 福岡市49 札幌市37 神戸市33 大阪市28 仙台市23 千葉市20 京都市14

【都道府県の葬祭会館数 ( )内はO2年新規】
 福岡県254(7) 神奈川県186(6) 愛知県167(15) 東京都162(7) 千葉県135(7) 埼玉県118(6) 北海道109(2) 大阪府108(6) 兵庫県99(3) 鹿児島県92(1)
 ・・・・・・
37位:京都府23(2) 41位:滋賀県15(0) 44位:奈良県11(0) 47位:秋田県9(1)

(9)『お葬式ビジネス、花ざかり』(綜合ユニコム、2003)
引用してきた雑誌と同じ綜合ユニコムが出した本によって、フューネラルビジネスの概要を紹介しておこう。まず、葬儀業界(今後30年間で市場規模が2倍に拡大するという)は超高齢社会の成長産業であるとしていて、以下のような数字が紹介されている。

2兆円産業の葬儀業界には、異業種・ベンチャー企業の参入が相次いでいる(鉄道系、農協・生協、ホテル、百貨店など)。ただ、葬儀単価は調査によると175万円(東京都、2001)で最近単価が減少傾向であることが懸念される。ただ、冠婚葬祭業の売り上げ規模は2兆1864億円(サービス業基本調査、1999)となっていて減少はしていない。

2002年の死亡数は、98万2371人(1992年:85万6643人)であり、ピークは170万人(2040年頃)と予想される。
また、葬儀社(互助会を含む)の事業所数は、7254(平成13年事業所企業統計調査:葬儀社が6383、冠婚葬祭互助会が871)、従業者数(社員、派遣社員、パート等専業従事者)は78000人(うち女性が46.0%)である。また、葬祭ディレクター技能審査協会(厚生労働省認定資格)によって認定される1級・2級葬祭ディレクターが増加しているし、ISO9000シリーズの取得も30社以上になっている。


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