Arts Calendar/Art's Report site/《KOGURE Journal》NfG-arts competition.vol.4

vol.523.
4/3(土)
アーツ・コンペティションin 京都vol.4西陣ファクトリーGarden

桜観光のピーク日だった。なんで人気があるのか不思議すぎる京都、至るところ観光客である。
西陣へと今出川から乗ったバスも満員だった。帰り祇園、東山へと向かうバスは、交通渋滞で、どちらもなかなか動かない。それでも大学での儀礼的な挨拶とか説明会とかの世界から抜け出しアーツ・コンペティションが行われる「芸術のある場」へと向かうときに、ああ、ここにぼくの本当の居場所があると思い心が緩む。

夕方から小雨。明日は雨だから、花の命は短い。今日は暖かい方だが、それでも、西陣ファクトリーGardenにいると日が暮れだすと、少しずつ足の下から寒さがじわじわやってくる。だから、差し入れ残りの日本酒や焼酎を飲んで体の中から暖めて、出演者たちと会話する。

この西陣ファクトリーGardenは、名前のとおり、アーツに関わる人達の工場でありアーツをこよなく愛する人たちが集まる小さく可愛い庭である。明日も竹の楽器演奏があるし、来月末からは林英世の一人語りなど楽しみな企画が続く(7/18には、第5回目のアーツコンペも予定されている)。

文化資源的には元西陣織ネクタイ工場という過去の部分がファクトリー=「工場」の記憶をとどめている。これまでは、じっさいに織物工場の痕跡が各所に残っていた。織り機もあったし、作業用の道具や痕跡がいろいろあった。今日入ったら、梁がのぞかれ、それら過去にあたったものの残渣がないせいもあり、少し調子が違う。他方、黒い幕が奥にあって、少し劇場の顔が強くなった感じがした。

少しずつ少しずつ、いまここに人たちが作業して場というものは、その様相を変えていくのである。芸術のいれものは、こうして生き物になって変わっていくからこそ本物だが、ちょっと今日は入ったとき慣れない感じがしたことも事実である(帰り頃にはもうその違和感はなくなっていたけど)。

公演にはこれがいいでしょうと岩村原太さん。そう、確かに見やすくなった。その分、ファクトリーというより、ガーデンの様子が強くなったなあと思う。
今日は、バスが混んでいるから10分遅れです、とアナウンスあり。それにしてもぎっしりのお客さん。

アーツ・コンペティションin 京都vol.4西陣ファクトリーGardenは、笑いも多く、バラエティに富み、意外性も随所にあったとても素敵な、17:10〜18:30だった。

はじめは、インスタレーション。照明家の高村由香理「ひかりのヒ」。写真を撮りだしたのは、1年前。日常の光を観る一環だという。今回の作品は、チェキというインスタント写真の展示だから小さい。洗濯ばさみみたいなので、紐を吊って吊していく。お話のあとみんなで観た。闇から光になる時間と、光から闇に行く時間が吊される。お花の写真が多い。肉眼では見えるのにデジカメではすくい取れないような微弱な光のことを思い出した。

2番手は、木原アルミ「サイコキネシス・シンドローム」。文字を書いた二つ画用紙帳を活用して、言葉を使わないようにしている。マイムだから当たり前?彼女の魅力は、立派で難しげなタイトルとそのマイムなどのパフォーマンスの大きなギャップである。念力とか宇宙人とかがやってくる。最後の手品はまっとうなもので、それがとても意外なオチとなっていた。客いびりは割と少な目。よかった。

ハラダリャン「ハラダリャンのSF」。一人芝居。彼は定期的に路上ライブを四条高島屋前でやっているという。無言でのモップの掃除。後ろ姿が力強い。静かなところから、精神が不安定なホテルマンがお客と対応する寸劇。のぶおちゃんにお母さんが乗り移り、かなり激しくなる。ヒッチコック映画が元らしい。ところでタイトルの「SF」というのは、何だろう。

クロノズ「Yes-7% No-91%」。愛知から来たらしい黒野靖子と増殖ダンサーズ5名。黒野靖子が椅子に座って英和辞典(TRENDという現在に使われている用語辞典のようだ)の674ページだかどこかを読み出す。food・・・バイオ野菜とか生命科学関連らしい。英語の発音を聞くとプロだなあと思う。

辞典が「クローン人間」についての解説のところに来る。これが主題なのは、ユニット名からも明らかだし、当日パンフにも「水色のワンピースに黒縁眼鏡、黒い髪、ダンスシューズ姿のメンバー」と黒野さんのクローンを仄めかすものがあった。

が、客席にいた、徳毛さんらポポル・ブフとかセレノグラフィカとかが、この増殖ダンサーズとして、変身(=クローン化)するとは知らず、なかなかのおかしさ。紙袋ががさがさいうのが、英語の発音うまいけどちょっとスノッブやなあという退屈モードをうまくあしらう結果となったところが、一番面白いポイントである。

踊りというよりも、ショーぽい。セレノの阿比留さんは女装には興味がなかったらしいけれど、脇の毛を剃ったりがんばっていた。このバリエーションってやっぱり面白いしやってみたいものである。

最後は、クロノズダンスとは対照的な、清水なお「徒然」。ソロのダンス。まっとうな矯め。ただシューズの音には、日常に軋みとかいらだちを感じたりした。後半の大きな移動が前半の静かさとうまく対比されて、15分枠として観る分にはちょうどいい緊張と開放だった。

下手の窓が前のクロノズから空いてしまって、それを即興で使うとはうまいなあと思っていたら、彼女はもともと使う予定だったらしい。ということは、そういう仕込みのために、クロノズのときに空いてしまったということかも知れない(でも、クロノズの場合は特に大きな問題なし)。

アルミさんのパフォーマンスも今日が一番すっきりと枝葉がなくなっていたと思うが(今回はみんな大元の幹がしっかりとあって気持ちよし)、そもそもパフォーミングというのは、どれだけ枝葉をなくして表現の大元をすっきと見せるかが勝負だなあとつくづく思って帰る。


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