Arts Calendar/Art's Report site/《KOGURE Journal》die pratze HIROSAKI-GEKIJO
学会の人たちは、代表会の終了後、お茶して、アサヒ・アートフェスティバル2004のグランドオープン・パーティーに行く人も多かったが、ぼくは、昔働いていた狸穴へ向かう(ここでつい最近自死した知人と一緒に働いていたことも脳裏にかすめる)。黒いNOAビル(墓標のよう)を通り過ぎて、都営大江戸線の赤羽駅方向へ。
ずっと大きな通りを通ればすぐに「麻布die pratze」もすぐに分かっただろうが(モービルのある2階にある120席の小劇場だった)、途中で祭礼の提灯につられて、公園に寄ったりしていて結構迷う。麻布自動車とか見慣れた景色があったりするから余計にうろちょろ。
それでも開演まで少し時間があったので、ラーメン。弘前劇場の制作の佐藤さんに挨拶して、池澤聖悟さん(今回は彼の作・演出で長谷川孝治さんの姿はなし)が立つ入り口へ階段を上る。劇場は一か所しか出入り口がないので、奥に詰めて客入れ。見下ろす感じで客席がせり上がっている。ホテルの一室。ツインの部屋。日本海の温泉場らしいが、温泉は塩水らしくて効能もこれといったものでもなく、閑散としている。
弘前劇場公演2004『背中から四十分』19:05〜20:35.きちんと前説どおり90分。
寂れた温泉場の角部屋。15年前につぶれたストリップ劇場の話も悲しい(首つり自殺でこれは直接つながっていく、この芝居の主テーマに)。観音33か所めぐりが一応の観光名所で若い女将さん34歳稲葉緑(工藤由佳子)がその33か所を暗唱するが、それは稲葉が観光ガイドだったからにすぎない。窓が小さい。これはあとで大きな意味(というか場所性)を持つ。下がすぐに岩場。落ちたら死ぬ確率もある。
男、相本信義(48歳、福士賢治)がこの部屋に入ってくる。フロント係(野島敦子、26歳)が案内する。チップが3万円、豪勢。ここではまだ若い女と待ち合わせなので秘密を守るためだろうとこちらは想像している。シャンパンにおつまみ。このホテルの極上を注文するが、すでに深夜。出せるのはシャンパンと林檎しかない。浴衣はいやで、ガウンを所望するのもどこか異常な感じはしているが、まあ年の離れた女との逢い引きなのかとも思わせている導入である。
当日パンフに年齢が書かれているのは、それが登場人物の関係を知るのに大切だからであろう。相本役の福士さんは実年齢に近かろうと思うけれど、女性3人は示さないとその年齢差は読みづらいからだ。
女性3人と書いたが、このあと、相本の相方となる大切な人物、マッサージ師の木村せつ子(33歳、森内美由紀)が登場するが、若女将と1つ違いで、若女将はこのせつ子をかばうのは、その年齢の近さ(同じような苦悩も含めて)故だろうかとも思う。
マッサージ師は密室で確かに大変だろうと思う。フロントは受話器がはずれる合図ですぐに飛んでくると言うが。木村は旅のお坊さんに習ったという「全身マッサージ」〜40分・シングル〜を淡々と行う。いつもその体験が可能な場面に遭遇するが、いまだやったことのないホテルのマッサージってこんなのかという単純な面白さもある(このあと東陽町のホテルで頼んでみようかとも思ったがやめた)。
少し時間が経っていて、マッサージ師せつ子の身の上話と相本の身の上話のきっかけや前後関係がすでに忘れている。携帯電話する相手を女房と偽る相本、これは違うのは明白なので、それを聞くせつ子。
そのうちに、相本は借金を背負って女房と娘に逃げられたことを話し出す。お金は実家が渡した手切れ金15万円で、それを使ったあとに、ぐうぜん飲み屋で知り合った携帯電話で話している女と死のうと思っているのだ。でも、心中話は、うまく行かない。
一方、せつ子は先に自殺を試みている、2度も。女将たちは彼女の自殺を予防しているのだった。生まれ返りますというのもそう簡単ではない。相本には死んでくれる相方がいなくなった。せつ子はどうしたらうまく死ねるかをまだ考えている。誰もつっこみが入らないから、密室での二人はどんどん死ぬ以外の解決はないようになっていく。いや、この温泉場ではそういう空気が支配している。
ラストに死に化粧のようなオイルマッサージをする相本。男は泥のように眠ってしまった(かのごとく思えた)。ここでそうか告白があったのだったか。それを知る(実は途中で目覚めたのだろう)相本はせつ子の死をとどめる。
背中の油づたいの接触。生きている最後の感触。そこにある対話というのにはほど遠い物理的生理的温度。暖かくない背中が暖かくなっていく。きちんとするマッサージ。エステ。人には最低限の役割があり、それが最低限の尊厳となる。職業の名前。それは、マッサージ師であったりエステシャンであったりして。
見ながら、自分がよく知っている男の最近の自殺について考えてしまう。首つりだった。年齢が確か48歳だと思う。買い物から帰ってきた奥さんと子ども。その発見の瞬間。どんな死装束だったのだろうか。
さて、相本がもしここで当初の目的通り飛び降り自殺をしたらどうだったか。ガウンで死ぬのだろうか。若い女がいることで、逃げた女房への復讐となったのか。もしそうだったらら、空しかっただろうと思いつつ、ぽっかりと空く穴がふさがらないまま東陽町へ向かった。
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