Arts Calendar/Art's Report site/《KOGURE Journal》Orientity&MINAMI Karin-2

vol.560.
9/12(日)
「Orientity」京都芸術センター&南果里ライブ@はなのや

こぐれ日記559(異常に長い枕)で、固有名詞、とりわけ人名の記述の意義と問題点を明らかにしたのですが、日記本来のアーツ記録という本題にもどって、以下、敬称略で固有名詞を中心としたアーツ観察としての日記のためのメモを、スタイルとしての実験という意味合いで、しるしてみたいと思います。

織田寿文:「民俗芸能の文化開発型調査報告書の提唱〜尾張万歳を事例として〜」。日本アートマネジメント学会関西部会例会での発表。民俗芸能をその中身まできちんと鑑賞し記述し、参与的観察を行っている立派な研究。「文化開発」の視点やアーツマネジメント的取り組みにますます期待が高まる。京都橘女子大学大学院文化政策学科科目等履修生としていまうちの大学で研究を手伝ってもらったりしている人。

いろいろな点に興味を持ったが、たとえば、尾張万歳の再評価にともなって、「保存会員と新たな関係者との間で対立が生じている」という説明のなかで、保存会は「御殿万歳」(ステージもの)を、八幡区民、若手会員のなかでは、「門付け万歳の伝承を希望」しているという対立が、いまのぼくの課題であるアウトリーチやお届けするアーツという視座からとても興味深い点であった。

また、民俗学では軽視されがちである「身体レベルの分析記述」についても、文化政策学やアーツマネジメントですら、そのアーツの中身に触れず、その体験も実に貧しいことを棚に上げて議論する傾向があり、その不毛な状況に常に身をさらしている身であればこそ、こうしてフィールドに出てその研究対象へのひとかたならぬ愛情を持つ研究者を知ると、とても救われる気持ちがする。

徳山由香:「アートプロジェクトの企画/オーガナイズをめぐって〜じぶんでつくって[六甲山(かわいい)国]プロジェクト中間報告」。同じくJAM west例会。カタログ(図録)ができていないので中間報告だという。個人で行った経験が逆に美術館という組織(彼女は美術史を研究していて、いまは国立国際美術館に勤めている)のいい面などを実感できたと。

原果里:はなのやライブ。第1部が前のアルバムから、そして第2部がこのたび発売されたアルバムから。今年から一緒にやっているギターの丸山ももたろうのソロもあって、彼のベテランらしい演奏も美しく聴き応えあり。

長崎出身で、長崎の歌も二つ。軍艦島を歌うあたり、ただの個人的心情だけでなく、まちや社会へと眼を向ける感じが、キャリアを感じさせる。5枚目のアルバム『想い唄』を買う。この中の唄は後半に歌ったが、前半の唄よりも心に残る比率が高かった。カバー曲「あなたへ」がとりわけ丁寧。板を脚で踏んで音を出したり、ギターの胴を叩いたり、そういう力強さ(少し祭り唄のようなメロディー。あえていえば、北島三郎が声だけで歌い出す感じに似てなくもない)がぼくにはとりわけ気持ちがよく、でも竹内まりあみたいなソフトタッチもあり、その歌唱力はたいしたものだ。

ハン・ジェンマ:京都芸術センターギャラリー南でパフォーマンス。コリアン系若手作家展「Orientity:oriental+identity」関連企画(初日、終わりにもトークがある)。はじめ立っている鑑賞者。こういうときは、率先して座って見せて、ギャラリーで座っても大丈夫かなと思っている人を安心させる役目をするのは、まあ、「鑑賞のプロ」のぼくなのですわ。

彼女の作品のなかに入って出てまた入ってバイバイ。ジッパーを羽織ってきて、それを参加者にほどいてわたし、またそれをつなげるように促すもの。手渡された白いコネクターで果たしてつなげることができるかどうか、どきどきした。ぼくは図画工作のなかの工作ほど苦手な科目はなかったので。
ハン・ジェンマに「ほい、でておいで」と手招きされて前に出て行く快感がちょっと“マゾっぽくていいな”と思ってしまった。

呉夏枝(オ・ハジ):3代の民族衣装を彼女自身が同じ一本道で来て映っている。それが巻物にもなる。巻物は先祖代々の家系を載せているもののようで、前のシマチョゴリのレースと共に、縫い合わさる糸の永続性を強く意識しつつ、刺繍される3つの国花の意味がひきつづき残響していることも確認する。

ミヒ=ナタリー・ルモワンヌ:坊主頭の写真が気になる。銀色の連続と言葉の変容繰り返し。
レイモンド・ハン:旅行する鞄。この作家展の表題を一番ストレートに感じさせられる。
あと、アデル・キム=ギュィヨン、ジェーン=ジン・カイセン、ナオミ・ロイ、キム・キウォル。

三浦しをん:『格闘する者に○』草思社、2000.4。彼女の処女作。『月魚』に比べると終わり方とかもう少し余韻があればいいかなと思うが、初々しいルポ的タッチの小説。5年ほど前には若者でも携帯電話を持ってない人がいたんだと感慨深し。就職活動を小説にした人は他にどれほどいるのか知らないが、面接官の観察とかおかしい。「格闘」が本文を読むと、「アームズレングス」や「尾籠」について書いたぼくの上述の文章とも関係があることが分かる。固有名詞問題も、「集A社」、「K談社」とかになっているので、ホホホと思いつつ、漫画の発想かも知れないなと推測する。


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