Arts Calendar/Art's Report site/《KOGURE Journal》shiteikanrisya-1
こぐれ日録にも以前書いたりしたが、「指定管理者制度」なるものが公立文化ホールに激震を与えていることを、岡山のNPOアートファームの大森誠一さんから聞いたり、具体的な動向を伊丹アイホールで津村卓さんからまつもとの新しい芸術劇場の話との関係で聞いたりした。
そこでまず驚いたのは、貸し館だけのホールは別としても、何らかの自主事業をしているホールは、いまは直営であるホールを含めて、かなりの数、施設の設置形態は公立のまま、管理運営は民営化するのではないかという推測であった。どうしてかというと、直営のままで行くかどうか市民や議会に諮ると民営化がいいという意見が多いだろうし、自治体の行政管理・財政当局は民営化の方向を示唆するだろうからだ。
いままで、ぼくは、ばくぜんと文化振興財団スタッフのプロッパー化が進んでアーツマネージャーの職場ができそうだとか、いまできあがったばかりのアートNPO法人の出番がきたというふうにずいぶん楽観的に考えていた。そんな者にとって、各地域の民間企業の積極的な動きが半端でないというのも実にびっくりした話だった。地域の主要な企業は自分たちが抱えている中高年社員のちょうど都合のいい仕事場として文化施設管理部門を考えていて、そのためにはずいぶんと破格の委任料で指定管理者として応募をするというのだ。
これはいけないと思いインターネットを調べたり、加藤哲夫さん(NPO法人せんだい・みやぎNPOセンター代表理事)によるニュース解説「指定管理制度とNPO〜公共サービスの質的向上と市民参画型公共施設管理への道を開く正念場」(『NPOジャーナル2004.10』)を読んだりした、この解説文は、仙台市で実際にNPO法人を運営している代表によるものだけに、実態にとても即していて参考になった。
それによると、たとえば、大手商社の社員がギャラリー的な場所の活用方法についてNPOとの連携の可能性について相談する時代になったのである。このような現場にいる加藤さんの結論部分はNPOの決意として自治体文化政策部門の方々やアートNPO法人のみなさんにぜひ知らせたいと思い引用する。
《いずれにせよ、徹底した民営化路線による小さな政府、自己責任社会への移行が企まれていることは明白であり、指定管理者制度はその露払いである。NPOはこれを単なるビジネスチャンスと捉えるのではなく、公共サービスの質的向上と市民参画型公共施設管理への道を拓く正念場と捉えて、取り組んでいく必要がある。・・》
そのようなとき、たまたま、公共文化施設についての原稿依頼が建築学会からあったので、まだ勉強不足ではあるが地方自治法にも浅からず縁があったこともあり、加藤さんの分かりやすい解説を生かしながら、以下のような趣旨(アーツマネジメントの視点、自治体やNPO法人など非営利の立場)内容で原稿をまとめることにした。
・・・2003年9月の地方自治法の改正によって、公立文化施設の管理運営は新しい時代に入った。法第244条にいう「公の施設」の管理運営に対して、指定管理者制度が導入されたためである。この制度により、法律に定められた経過措置期間(2006年9月)後には、全国各地にある公立文化ホールはじめさまざまな「公の施設」は大きく様変わりする。つまり、多くの「公の施設」では、その設置者(自治体)とその管理運営者(民間)はまったく別の組織原理に基づく団体になるのである。
他方、現在、市町村立文化施設の担い手たちは、市町村合併促進の波を受けている。そのため、施設の企画運営について独自の展望をもちにくい現状が出現している。さらに市町村合併が進むと、旧来の文化施設の設置者が新しくなるとともに、その管理運営手法も新しい地域内で統一されることになるだろう(たとえば文化振興財団の統廃合とそれに伴う財団プロッパー職員の処遇問題などが当面の課題となる)。そして、全体としては、自主企画事業の継続という持続的継承的側面よりも、合併を契機とした刷新、すなわち施設の委任化、民営化の傾向がより進むものと予想される。
このように、指定管理者制度は、市町村合併や財政危機という激動する地方自治のなかで、地方自治の統合化、民活化、スリム化促進の一翼を担って導入され、その課題を推進する役目を担わされている。その結果、市町村立の文化施設の担い手やその運営や企画に関心を持つ住人、市民に対して、変化することに対する期待と変化の方向が見えにくいことによる不安をもたらしている。
また数量化される事業評価指標が部分的であることもあり、文化施設はその他の施設や事業に比べて緊急性に欠ける、効果が見えづらいとして予算削減のターゲットになる傾向が続いているが、その傾向に対して以上の変化がどういう影響を与えるかも慎重に見守る必要がある。
ところで、アーツマネジメントを研究している者としては、指定管理者制度の導入はマネジメント主体(担い手、player)の多様化と高度化、競争環境の形成という面で実に変化に富んだフィールドを展開するきっかけをつくるのではないかという期待をまず抱く。他方、そのような急激な変化に対して、従来の文化施設のハード面、機能設備などは対応できるのであろうか、とか、ソフト面のノウハウがどこまで文書化され委任するために整備されているのであろうか、とか、いろいろと心配になることもまた多い。
従来、アーツマネジメントの主体として目に見える形でアーツマネージャーという担い手を特定できる公立文化施設は少数派に属していた。顔の見えるスタッフづくりというのが公立文化ホールの研修では大きな課題とされ、そのためのノウハウとスタッフ間のネットワークづくりが進められてきたのである。
(この続きは、こぐれ日記568にてお読みください)
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