Arts Calendar/Art's Report site/《KOGURE Journal》shiteikanrisya-2
いままでアーツマネジメントを論じるとき、日本では文化施設のマネージャーの能力向上と専門的な処遇やネットワークづくりについて、議論されることが多かった。しかしながら、アーツマネジメントの担い手は、文化施設内だけではなく、アーティスト集団(Aと略する)内にも存在することは言うまでもない(Amと略して説明することとしている)。
つまり、芸術家の集団内において、たとえば劇団やダンスカンパニーであれば「制作」スタッフ(プロデューサーと呼ばれる場合もある)がアーツマネジメントの担い手であるし、オーケストラなどの楽団ならば、「事務局」スタッフがそれに当たる。ただし、この場合劇団なら劇団の維持発展を担うのが制作の基本的な役割であり、もちろん外部へのお届けなどいま盛んになりつつある「アウトリーチ」をも行うようにはなっているが、団体としては一定の制約を持っている。
ただし、新しい指定管理者制度のもとで、劇団や楽団がより大きなミッションのもとにさらにNPOを形成し、アーティストがいるメリットを活かしつつ、文化施設の運営企画にタッチする可能性は増加すると考えられている。
アーツマネジメントの担い手のひとつが芸術団体(そのマネジメント主体であるAm)であるとすると、もうひとつの大きな担い手はいうまでもなく文化施設である(芸術団体をAとし、一般の社会をBとすると、文化施設や企業メセナ担当など社会側の芸術窓口であるマネジメント主体はBmと表示することができる)。
また、自治体の文化振興部門とともに自治体の外郭団体である文化振興財団なども広くBm主体ととらえておく(自治体からの出向職員が存在しているなど自治体の付属機関として位置づけられているためである)。なお、ここでは、文化施設Bmのうち公立の施設を考えているが、「公共文化施設」という場合は政府自治体立以外の設置主体も想定することができる。市民出資の映画館などNPO立と考えられる公共文化施設も重要な担い手であることも留意する点である。
さて、アーツマネジメントの担い手論として現在脚光を浴びている主体は「アートNPO」である(全国のネットワークづくりも進みつつあり、第2回目の全国大会は札幌であり、またアートNPOネットワークを使命とするNPOづくりも計画されている)。
たとえば、小学校などにアーティストを派遣し、総合の時間などで子どもたちとアーティストとの出会いを実践している東京のNPO法人エイジアス(ASIAS)。コンテンポラリーダンスのネットワークやワークショップ、海外交流、データベース化など各地で孤立していたダンス関係者をつなぐ大きな役割を果たしているNPO法人JCDNなどが有名である。さらに、各地において、その場所ならではのアートNPO法人が形作られている。
大きくアートNPOを分類すると、いわゆる「サービスオーガニゼーション」といわれるソフト系のNPO(A主体とB主体を結ぶ独立したコーディネーターなのでアートマネジメントの「C」主体と呼んでいる)と、ハード施設を拠点としてその運営ノウハウをソフト財産として展開しようとしているNPOに分かれると思われる。
先に紹介した二つのNPOはサービス型であり、拠点型NPOとしては、たとえば関西に例を取れば、京都市内のアトリエ劇研のスタッフルームから発展してできたNPO法人劇研などが挙げられる。
また、すでに大阪市の遊休施設(このフェスティバルゲートについてはいま大きく動こうとしている)を使ってコンテンポラリーダンスの拠点劇場を作っているNPO法人DANCE BOXは、指定管理者制度の前から公設置民営劇場として名高い。なお、劇場を運営するNPOはアーツマネジメントのABC分類によると、非営利民間タイプのBm(文化施設運営型)ということになるが、C(サービス機関)としての機能も強いことに留意する必要がある。
さて、ここで地方自治法「公の施設」条項の改正、すなわち指定管理者制度が登場する。公立文化施設Bmに指定管理者制度が導入されるということは、いままでは「公共的団体」として一部の自治体でのみ拡張解釈されてその運営を委託されてきたアートNPO法人に対して、真正面からその門戸が開かれるということになる。
上記の拡張解釈による管理委託や自分たちの拠点での企画運営の実績、自治体や企業との協働や委託による成果も少しずつついている。同じBmに属する拠点型NPOはもちろん、Cとしてのサービス機関型のNPOも文化ホールのワークショップや公演の実績を持っているので、あとは管理ノウハウが課題となるだけである。逆にサービス機関としての長所であるネットワーク性や人的資源を強調することが有効になると思われる。
もちろんアートNPOにとってはバラ色の期待ばかりではない。第一に自治体に運営企画予算が十分あるのかどうか、特にソフト事業予算の有無が気がかりである。また、公立文化施設の所管部署がどういうミッションを提示するのかも十分見極めなければいけない、さらにそのミッションを何で評価するのか、どのスパンで評価されるのかもよく検討する必要があるだろう。
さらに、指定管理者候補としては、自治体外郭財団やアートNPO(あるいは芸術団体Am)だけでなく、民間企業の参入意欲が強いと聞いている。NPOとは違って企業は短期的な効率追求ノウハウと財務力、機動力を有している。
ここで自治体がただ効率性とかマスコミ有名人志向による「発信」性だけで管理運営の指針を形成してしまうと、代理店や商社など営業力のある企業の方が俄然有利になると思われる。もちろん営利企業の中にも指針さえしっかりとしていれば、公共的文化政策として適切な提案をする可能性は十分あるし、事実、神戸市立の神戸アートビレッジセンターの運営を担う(株)プラネットワークなど実際にそういう委託を適切に行っている例はすでに存在している。
したがって、芸術文化振興のための施設において、この新しい指定管理者制度を真に活かすかどうかは、結局、その制度を運用する自治体側の芸術文化についての見識次第であり、その見識を支える自治体の市民の関心と参加、参画とチェック機能にあるといえよう。
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