Arts Calendar/Art's Report site/《KOGURE Journal》Cannelle

vol.591
1/13(木)
光島貴之展『触覚と視覚の交差点』GALLERYはねうさぎ など

午前中、紙芝居のサイトを探して、けっこう、いろいろなことがあるなあと思ってサイトを更新してから、上田假奈代さんに依頼された400字原稿を書く。タイトルは「テレビとアーツ」か「テレビと学生さん」のどちらかということだったので、なにを書くのか戸惑ったが、後者にした。

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《テレビと学生さん》
テレビは分からないし書くこともない。アーツを紹介する番組に出てその出演ビデオが送られてきたと思ったら、ぼくが映っていないビデオを間違ってNHKが送ってくれたことぐらいだ。
学生さんのことも分からない。分からないもの同士なので、もっと分からない。ただこの人たちのことで分かっていることは、テレビをよく見ているということだ。この前、「戒名」についての講義をしたら、パソコンで戒名をつけている僧侶のテレビを見たと書いた人が2割いた。

基礎ゼミで「アンアン」別冊から始まった雑誌「クウネル」のことを話したら、「アンアン」自体をほとんどの人が知らなかった。雑誌文化というのはどこに行ったのだろう。ますます学生さんが分からない。それでもぼくは、このなかから、何かのきっかけでアーツに向かう人が一人でもいることを祈りつつ、テレビ好きの人たちと向かい合わなければいけない。少しはテレビを見るかその話題を糸口にして。
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エッセイを書いたあと、三条へ。途中で時間割がまずいことになっていることに気づき、教務課へ電話したあと、三条から東山へとゆったりとした上り坂を行く。

光島貴之展『触覚と視覚の交差点』へ。
「GALLERYはねうさぎ」がまた復活したのだ。以前はねうさぎは同じビルの1階のあったのだが、事情でなくなり、今度は、cocoの場所で、再び画廊が開かれた。広さもゆったりしているし、前よりずっと気持ちのいい空間が展開されることになる。直前にはたよしこさんが来ていたことが署名で分かる。

巽さんも、光島貴之さんもいなかったが(光島さんは1時間ほどいたあと、NHKの取材だという)、ギャラリースタッフの平塚浩平さんが、丁寧に応対してくれる。彼はもともと版画専攻(京都精華大)で、いまは写真集を出している人(『ココニイル』新風舎)。売っていたはがきを8枚買っておく。手触り感と独特の遠近感を学生に見せたいと思って。

Room1の方は光島貴之だけの展示。雨の木、実のある木、夜の木、こもれび、森の夜。5つの作品が並んで見られる。丸いシートが果実になり、星型のテープが夜の木を輝かす。木漏れ日の赤い光が幾筋も木々を通過し、下方の青い水の流れに交わる「こもれび」が爽快だ。対面の壁には、より大きな「光の滴が流れる」と「青そらの中へ」がある。

「もり」は、20枚が組み合わさって大きなモノクロームな長方形になっている。「何かがやってくる」、作品群が円環になって大きなワークになる。希望という言葉がふいに口から出てきた。

Room2は、日本画の船井美佐との「連画」だという。
「ストローで飲む人」は、まったく同じタイトルで2つの線が浮かび上がった作品になっている。でも、光島作品では、コップから伸びたストローが、唇に到達して、それが長く細い食道を通過し、胃の入るまでが描かれている。体の表面や衣服ではなく、内臓感覚そのものがここに出ている。だから、視覚としていま見ているのだが、体内感覚が表示されているとみなすほうが本当なのかもしれない。眼が見えないことで、余分の表面が省かれ、本質に直に届く術(art)を獲得しやすいのだろうと思う。

「観葉植物」も二人が同じように対応している。光島は面での構成。それ以外はゆるい対応であるが、ほほえましいものが多い。とりわけ光島「巴チュー」の3匹の蛇、それに対応する『蛇」(タイトルは忘れた)がほのぼのとしていて、二人でする展覧会の理想だなと思う。「指と指」に「蓮華」とかもそうだ。

草間弥生展に行こうとしたが、向かいに古着物屋さんがあり、その上にフランスのパンが食べられる喫店ができていたので、上ってみる。明るい店内で、ゆったりと14席。南から太陽。暖かい。聞くと、今年オープンだという。休みをどうするとかも決まっていない。一人でやっていて、パンは友達が作って持ってくる。客席のしつらえもおいてあるグッズも彼女のこだわりではなく、自由にやってもらえるのだそうだ。

なんとなくはじめたという感じがまたのどかであって、雑談をずいぶんした。美術を見に来たお客さんや外国人が着たりするそうだ。リピーターもいて、のんきにやっていくしかないですね、と「Cannelle(カネル)」の人は微笑んでいた。

心斎橋でインターネットカフェに入り、今見た展覧会などのことを書く。
そのあと、ウィングフィールドで今年初めての観劇。
南船北馬一団『ニンゲンカンタン』作・演出:棚瀬美幸。エレベーターのなかで、棚瀬さんにドイツ行きのことを尋ねたら、これからヒアリングを受けるのだという。さきがドイツに行ったこともあるのだが、ぼくの周りはドイツやオーストリアに行ったりする人がにわかに増えているように思う。いまゆっくり買って読んでいるのも浦沢直樹『MONSTER』だし(今日、9.10巻を購入し、帰りの車中で読む。旧東独やチェコスロバキア時代の闇の部分が広がって行って・・)。

19:37〜21:12。ずいぶん長く感じられた。夢の中でもなかなか目覚めさせてくれない悪夢。悪夢を描こうとすると、やはり悪夢みたいにまどろっこしくてじれったくて同じところをぐるぐる回るお芝居になるのだなあと見終わって思った。観ていると頭痛がしてきて、悪くないはずの歯が痛く感じられてくる。でも、終わって、いつもなら前の店でビールを買い飲みながら帰るところ、今日はもちろんそれはなし。ただ、外気に当たって帰り出すと、いつの間にかその頭痛は消えていった。

引きこもりの妹が主人公。行方不明の姉との夢紀行。昔のじゃんけんや遊び唄など、興味のある部分もあった。ぼくが繰り返し見る夢をそういえば夜明け前に見た。洞窟みたいなところでお芝居を見る部分は初めてみたものだったが、その帰り、歩いていると、ズボンをはいていないことに気づくという場面。これは、裸のことも多いが、よく見るものだ。どうして、そういう恥ずかしい夢をぼくは見るのだろうなあ。


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