Arts Calendar/Art's Report site/《KOGURE Journal》popol-vuh sketch call

vol.618.
5/21(土)

土曜日のしあわせな芸術探偵記録

(その2 『林英世ひとり語り』西陣ファクトリーGARDEN&『ポポル・ヴフ=スケッチコール』shin-bi)


うずらギャラリーで、みやじけいこ展を見たあと、烏丸御池まで歩いて行って、地下鉄。今出川駅下車、そしてバスにて今出川浄福寺まで。西陣ファクトリーGARDEN。今日は町家が続く。このあとも京都芸術センターの前身、明倫小学校が、1930年代のものだし、最後入ったshin-bi(四条烏丸)のビル(COCON烏丸)も戦前のビルを全面的に改造したもの。アーツスペースがまちの保存修景と関わる事例がずいぶん増え、当たり前なぐらいに定着していることは、素直に喜びたいことである。

さて、西陣ファクトリーGARDEN『林英世ひとり語り』(終わった後、林さんの朗読の教え子さんたちによる一人語りもあった)。1時間少し(15時過ぎに開演)があっという間に感じられる。一人で、椅子に座り、マイクもなく、この空間全体とともに、小説を読むというシンプルな公演。5年目になるという。単線なかたちなので、いくぶん変化に乏しいこともあるだろう。だが、今回の坂口安吾『桜の森の満開の下』では、そんな心配は不要だった。

白い舞台美術が、桜色にも紅色、血色にも変わる。声と読み姿、白い着物にときおり朱がにじむ衣装のみで、林英世は、ダイナミックな語りを披露してくれる。桜の木の満開の狂おしさについては、誰しも宴会など騒がしくない場所に行けば何がしかの感慨として得られることではある。だが、これほどまでに、イメージを定着して語り継がれる作品は稀有だろうと聞きながら思う。あとは、桜の下の死体というイメージぐらいか。

このあと、岸和田市の五風館(山本周五郎「雨あがる」8/21、マチネ)、富田林市の旧杉山住宅(9/3、ソワレ)、大阪市西区の細野ビルヂング(江戸川乱歩「芋虫」9/9、ソワレ)において、彼女のひとり語りが催される。大阪楽座事業でこの企画を行うことが出来たのは、幸いだった。9/3(泉鏡花『高野聖』なのだ、じつにぴったり)がAO入試関連でいけないかも知れず、それは残念だが、期待感がますます高まる。

京都芸術センターでは、篠原資明+佐倉密『言ノ葉ノかげ、二人の詩人の二つの美術』が行われていた。篠原資明はおやじギャク的な余裕。いろんなことを知っていることから駄洒落まで詩なのである。百人一首までことば遊び。でも、いささか自分勝手な感じもする。

一方の佐倉密という方は、より美術的に凝縮した展示だった。豆腐かと思ったら大理石。言葉も日頃消耗品みたいに使っているから、美術品に展示して、その無造作な使い方を反省するきっかけになる。それにしても、詩人というのは、いい意味でプロフェッショナルではないのかも知れないと、この展示を見る限り、そんな気がした。講談に来てくださいと奥田さんに言われる。

COCON烏丸3階、shin-biに行く。ショップでは、off-noteレーベルがいっぱいあって、よかった。はなのCDも少しは売れているのかも知れない。スタジオで、ポポル・ヴフのスケッチコール。《5月の森へ行こう もゆる みどり もゆる ひかり もゆる もゆる》。ダンス公演自体は10分強ぐらいで、それをあと、2回して、そのあとに最終公演となる(なんと、来年の5月)。

机になる木箱を、横にしてゆっくりと座る。10名プラスぐらい。まず、身体のほぐしワークショップ。これが、冒頭に書いた(こぐれ日記617の冒頭部分)、気持ちのいい身体ほぐしだった。やってくれたのは、はまだくみ(たぶん)。肺の大きさをこんなに手で感じ、呼吸の大切さをしみじみと思ったことはなかった。なくなった親父が肺がんだったこともあり、肺が病むことのこわさもあわせて思う。

そのあと、休憩した後(ぼくは、休憩中、ずっとからだをくねくねしていた)、スケッチコールへ。このスケッチコールというのは、客席の照明を落とさないで、お客さんも、ダンスを見ながら、それに基づいて絵でも言葉でもなんでもいいので、紙にスケッチするというものだった。

ぼくは、単にダンスを見に来たので、スケッチをするつもりは始めなかったのだが、ワークショップをして体とともに気持ちがほぐれて、自然に何かやりたくなった。アンケート用紙の裏に黒と赤のペンで、まずは、舩橋陽のソプラノサックスが背後に響いて自動的に、抽象的な線が生まれ、そのあと、腕の動きに、腕のみが、下津浦端希と徳毛洋子のデュオを見ながら紙に残されていった。

あと、幾分詩的な言葉の走り書き。shin-biの田村さんとのトーク(この企画がじつにゆっくりとスロースタイルなアーツプロセスであることが浮き彫りになる)でも、ちょっとスケッチの手は止まらないようになっていた。帰り、いたずら書きのようなメモを葦田さんに渡した。いつもより、早く家に帰ったのだが、それでも、実に充実した土曜日だったと、また一日を芳江に話していた。身体ほぐしのワークショップも再現しつつ。




こぐれ日記」の扉へ

無断転載禁止 掲載:アーク編集室