Arts Calendar/Art's Report site/《KOGURE Journal》for OBP arts project-2

vol.623. 
6/27(月)

『都市と芸術〜OBPアーツプロジェクトに寄せて〜(その2)』

新世界アーツパーク事業の行方




『都市と芸術』のつづきである。これは、こぐれ日乗(http://kogure.exblog.jp/)の発言要旨に基づいている。


(2) OBPアーツプロジェクトの意義と最近のエポックについて〜新世界アーツパーク事業の行方


2-1) OBPアーツプロジェクトの意義


 以上で、駆け足ではあったが、OBPアーツパーク事業がいかに大都市政策として意義があるのか、そして、それはまたそのまま都市の創造セクターを刺激することによって創造都市政策になっているのかが説明できたと思われる。
つまり、それは、そのまま、多文化の交差を生み出そうとする文化政策であること、そのなかのいきのいい芸術政策であり、さらに仕事に追われているビジネスパーソンへのアーツアウトリーチ活動であると同時に表現によって自らの未来を模索している若者たちへの応援のためのプロジェクトでもあることもいうまでもない。

ところが、困ったことに、ずいぶん評価されていた大阪市芸術文化アクションプランによる事業のうち、大都市(メトロポリス)でしかできない事業として議論し提示してきた「アポリア的アーツ事業」(みずからが未知なる芸術領域へと道をひらくことをしないと、みち=すべがない事業)が、不祥事が続く大阪市の気の迷いによってどんどん縮小されてきているので、その記事と、大阪市の芸術政策の策定と実施をフォローしてきた筆者のとりあえずの発言を記録しておくこととする。

2-2) 新世界アーツパーク事業の危機

(毎日新聞2005年6月22日大阪夕刊の記事【フェスティバルゲート:大阪市、ああ無情 芸術団体の誘致3年後、移転打診◇「経費軽減のため」−−入居の4団体、困惑】より)


《都市型遊園地「フェスティバルゲート」(大阪市浪速区)の空き区画を活動拠点として利用している現代芸術系のNPO法人4団体に対し、入居を呼びかけた大阪市が、来年度以降の移転を打診していることが分かった。施設がある新世界周辺の文化振興を目的に入居費などを負担している市は、「経費軽減のため」と説明。NPO側は長期利用を前提に多額の投資をした団体もあり、わずか3年での方針転換に困惑している。

《大阪市は10年計画の地域文化振興プランの一環として、経営不振でテナントが退去したフェスティバルゲートの空き区画を借りあげ、文化イベントの活動拠点として芸術文化団体に提供する「新世界アーツパーク事業」を02年にスタート。市の呼び掛けで、ダンス、映像芸術、現代音楽の3団体がNPO法人の認証を受け秋から本格的に活動を開始し、その後、朗読などをしている1団体が加わった。
市は年間計約1億円の賃借料と、共益費・光熱費を負担。先端的な芸術表現の場を提供する「未来への文化投資」として、全国の自治体、芸術関係者の注目を集め、視察も相次いだ。
《ところが、今年5月になって事業を担当する市ゆとりとみどり振興局が4団体に、現在の場所の利用が今年度限りとなる可能性を示唆。経費をねん出していた文化集客振興基金が今年度でほぼ底をつくことなどが理由で、経費の負担が軽い移転場所を探し始めていると説明した。

《4団体はいずれもフェスティバルゲートでの活動継続を希望。02年から入居しているNPO法人「ダンスボックス」の代表理事、大谷燠(いく)さんは「劇場として整備するのに4000万円の借金をするなど、10年計画で投資し、新世界という地元と密接にかかわる事業も行ってきた。成果が出るまで時間がかかるのに、簡単に場所を変えては地域に対する責任が果たせない」と話している。【岸桂子】

《◇小暮宣雄・京都橘大教授(地域芸術環境研究)の話 現代芸術に特化した取り組みは、福岡や山口など他の地方都市にも影響を与えるオリジナリティーがあった。都市政策として失敗した施設を芸術という別の価値観で救おうとしていたのに、大阪市は結局、個性を消したいということなんだろう。毎日新聞 2005年6月22日 大阪夕刊》

2-3) 2年半前の新世界アーツパーク事業への期待と評価についての紹介


この記事の3年弱前。ちょうど、アーツパーク事業が出来たときに、まったく違う明るい記事にも筆者はコメントをしていたので、それも引用しておくことにしたい。どれほどの落差がこの間にやってきたのかがよくわかると思うので。

2002.12.6(金)朝日新聞(夕刊)
『大阪市の新世界アーツパーク事業 不思議空間にアートの拠点 「公設民営」の新方式で』(鈴木京一記者)より:
《行政が全部直営でやるのはどうしても無理があり、その点で受け皿作りに徹する大阪市の方法は注目に値する。アーティストの側も、NPO法人化することで社会性をもつことになる。フェスティバルゲートに本来期待されていた、わいざつ性を取り戻すことにもなるのではないか。》(「文化政策を研究している小暮宣雄」の2002.12.6のコメント)。

2-4)新世界アーツパーク事業の未来を考えるシンポでの発言要旨


 2005.6.23の15時半から、新世界のフェスティバルゲート3階にあるNPO法人ダンスボックスが運営を任されているアートシアターdBにおいて、以下のようなシンポジウムがあった。


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新世界アーツパーク未来計画〜フェスティバルゲートで活動する4つのNPOの検証と未来に向けてのシンポジウム
6月23日(木)15:15開場 15:30開始 500円(当日カンパもうけつけております)
会場:ART Theater db(フェスティバルゲート3F)
ゲストトーカー
小暮宣雄(芸術環境研究者)
佐々木雅幸(大阪市立大学大学院創造都市研究科長・教授)
吉田光宏(ニッセイ基礎研究所 芸術文化プロジェクト室 室長)
鷲田清一(大阪大学教授(哲学))
ナビゲーター
甲斐賢治(NPO法人remo)
トーカー
雨森信(NPO法人remo)http://www.remo.or.jp
上田假奈代(NPO法人cocoroom)http://www.kanayo-net.com/cocoroom/
大谷燠(NPO法人db)http://www.db-dancebox.org
西川文章(NPO法人ビヨンドイノセンス)http://www.beyond-innocence.org

平成14年10月、大阪市による地域文化活性のための政策「芸術文化アクションプラン」の一環としてオープンした「新世界アーツパーク事業」。現在、分野が異なる4つの専門的NPOが「公設民営」方式によって、大阪には未整備の「アートセンター」的拠点を運営、通年活動し、その他ふたつの団体も交えて様々な展開を繰り広げています。
当時、日本の文化の領域ではまだほとんど事例がなかったその「公設民営」という方式(注1)で進められるこの事業には、地方主権の時勢も合わさって、各地方自治体が文化政策を計画、実施する上の参照として、オープン当初より全国からの視察が訪れており、現在ではその成功事例として広く認識されています。
そのような中、本年5月に入って、担当部署である大阪市・ゆとりとみどり局文化集客部文化振興課より、現在、フェスティバルゲートの運営管理に関する先行きが不安定な情勢で、この場での継続の可能性を探ると共に、新たな移転場所での事業展開を考えたい。との投げかけがありました。

これを機会に、3年の活動を経た4NPO自らが、これまでの活動を顧みつつ、
ウ) 地域に貢献する「拠点事業」における事例と検証、今後の方向性
エ)公的な「文化事業」のあり方を考え、市民に還元するための方法論をさぐる
オ)都市機能として芸術文化における先端的な取り組みの海外・国内の事例紹介、本取り   組みの検証、社会的便益、今後の課題・指針について
カ)継続的に市民に開かれた場を維持する意味を考え、具体的な開かれた場作りのつくりかた など
をはなしあい、未来に向けた具体的な歩みを考えたいと思っています。そこで、本来的にパートナーである担当部局、客観的批評を行う有識者を招き、今後の方向性を考えるオープンな機会を持ちたいと考えました。つきましては、大阪のよりよい芸術環境への礎となる可能性を有する本シンポジウムへの参加を心よりお待ちしております。

新世界アーツパーク未来計画実行委員会
 NPO法人 記録と表現とメディアのための組織
 NPO法人 こえとことばとこころの部屋
 NPO法人 ダンスボックス
 NPO法人 ビヨンドイノセンス
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 さまざまな観点から(たとえば、創造都市やフランス、イギリスの廃工場の芸術施設への転換についての海外例を紹介していきつつ、このアーツアポリアの一環であるアーツパーク事業がそれらの事業と親和性がとてもあることの検証)、大阪市がいまとろうとしていることが、みずからを大都市でなくそうとしているのである、ということ、つまり、芸術政策と創造都市政策を捨てようとしているのだということを明らかにしていったシンポジウムであった。そのなかで、筆者の発言要旨(冒頭の15分間分のみ)を以下に記しておく。
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1) 芸術予算がだんぜん少ない大阪市(政令指定都市14のなかでも、人口比なら絶対にびりだと思う。絶対額はちょっと自信はないが)が、どうして、内容で個性化できるかを考えて、芸術文化アクションプランを作ったという話。つまり、ハードウェアがないことを逆手にとって、ソフトウェアとヒューマンウェア(その集まりであるアソシエーション=アーツNPO)へと集中する視点を考えた、ということ。

2) メトロポリスには、少なくとも(佐々木教授らのいう「創造都市」ならそこも)、自分でアーツの未知を切り開く「アポリア」部門を持つべきであるというテーゼをアクションプランに盛り込んだということ。自分で自分のアーツみちを切り開く勇気が都会に住んでいる人の矜持ではないか、ということ。これはあとの質問で答える形で、術のうち、学術と技術は市場で扱えない「未来の投資」として、行政でおこなうべき価値も認めているのに、芸術だけその認識がなかったことへの反省という形で補足した。

3) 大阪市が策定した(議会が議決した)振興条例の前文などにこのアクションプランがじつは濃厚に反映していることの指摘。条例には明示的にかかれてはいないが、法令というのは、行政が文化についてやってはいけないことも規定しているので、それについての、簡単なコメントも付与する。一つ、市場が成立しているジャンル、芸術産業に助成したり委託したりすることで市場を乱してはいけない。二つ、行政は動員イベントを安易に行って、芸術を強制してはいけない。三つ、政府が強引なコンテストをして、アーツの権威づけをしてはいけない。

4) 道州制の先取りと道州制になったときに、一番秀でたアーツ政策をとるための準備について。仮に西国州となったとすると(個人的には、4〜5の州あるいは道による政府がいいと思う)、その西国州にアーツカウンシルがあるという状態をさきに準備し、州政府ができると、まずドイツの各州の文化基本法のようなものを制定する。そのために、一度大阪市と大阪府はどちらもそれぞれの失敗した都市政策を清算するために機能委譲をしあって(大阪清算事業団)、東京都と同じような形態をとるための模索。そこで、まず大阪市が自発的に解体して大阪府と合体し、そのあと西国州になったとき、大阪府もなくなり、西国州の首都として大阪市が再生するという案。
これが精一杯の希望的な提案なのである、いまのところ。




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