こぐれ日録 KOGURE Diary 2001.4



28)4/6〜4/8

4/6(金)

京都橘女子大学新入生キャンプのバスが出る。暖かい朝、8時半、文化政策学部は滋賀の長浜市をめざす。豊公園の桜はまだつぼみ。でもお弁当を食べていると春が始まっていることが実感できる。

次に黒壁へ。5年前に初めてここに来たことを思い出す。アーケードのある商店街の方にも店の改装がぽつぽつおきているようだ。曳山博物館が出来ていた。1週間あとだったら、子供狂言が曳山の舞台で観れたなあ。

黒壁ガラス鑑賞館(黒壁十號館)。ここのチケットを全員に渡す。人いきれに弱い学生も古い商家の調度品を見ると生き返って熱心に眺めている。水を流して一人ずつ水琴窟の音を竹筒から聞き取るために列が出来た。

ヨーロッパのガラス作家の美術作品(実用から離れ、何を意味しているのかが鑑賞者の理解に任されているもの)の前であれこれ不思議がる学生。これがいわゆる「現代美術」鑑賞の初経験の学生も結構いて、これからの授業の原点に出来るかも知れない(作品的には中途半端な感じがするものもあるが)。

ふらりふらりと、黒壁の散策。アイスクリームを食べながらぶらつく。京都橘女子大学の周辺から山科駅までが、こんな界隈になると楽しいよね、と河原さんや学生らと雑談している。大通寺ものぞく。

長浜オルゴール堂は人気。オルゴールは1852年にオランダ人によって日本に紹介されたという。手回しオルガンがいい音を奏でている。藤本由紀夫の話をしようとするが、まだ彼女たちには早そう)。
守山市の琵琶湖プラザでクラス懇談会、夕食、そして親睦会という名の「出し物」発表会。19時から20時45分までで収まりほっとする。Dクラスの○×クイズがだらだら始まったときはどうなることやらと心配だったが、合唱が短かったこともあって、最後のお芝居までだれることも少なく無事終了。

舞台に上がれば、そこは観客へと身を投げ出され、舞台上にいる仲間と打ち合わせや雑談をしたりすることが出来ない、という基本的なことがまるで分かっていないので、ちょっと大声を上げてしまうが、まあ、それでぴりりとなったからよかったかも知れない。

池上学部長が審査講評を行い(彼女たちの名前を学部長が紙に書き丸善の「文化政策入門」に挟んで一人一人に贈呈したのには驚く)、無事打ち上げへ。

4/7(土)

天気予報ははずれて今日もいい天気。午前中は滋賀県をフィールドにしてきた織田教授からレクチャーがあり、クラス懇談会。ここで各種委員会委員を決める。クラスのみんなが積極的に参加を希望するので河原さんはびっくりしている。大学祭などが楽しみだ。そのあと琵琶湖博物館に向かう。

触ったり覗いたりする体験型の展示に対して学生が実に積極的なのが嬉しい。1964年当時の農村の家の実物展示(アメリカホームドラマを映すテレビがかわいい)は、博物館についての私のイメージを変えてもらったものだ。ちゃぶ台の前にオリターさんと座っているとお芝居をしているように学生には見えたかも知れない。博物館来訪者まで展示の要素にしてしまう参加性がやっぱり面白い。

このキャンプを通して学生は概して新鮮な体験を数多く経験しだしたように思える。でもいつしかその「新鮮さ」が苦しさやマンネリに変わるときが来るだろう。そこからまた抜け出せば、大きく本物になるだろうが、そのときに振り返る原点の一つとしていまから数ヶ月の文化体験が良い支えになってくれることを願う。

15時、山科で下車。インターネットカフェでメールを処理してから扇町ミュージアムスクエアへ。売込隊ビーム《OKIRAKU SHORT STORY 2》19:04〜21:17。前回は長編で「笑えないコメディ」だったので、今回は短編4つ。爆笑コメディをめざす。作/演出/構成:横山拓也。果たして成果は?

受付でゴルフボールをもらう。これを第2話「contact!」で投げるという説明は、第1話「キューバ」(密室監禁の中の体重ねたの笑い)の後の場面転換のための空き時間で明かされる(by くまさん=三谷恭子?)。観客参加コメディというわけだ。ここの特徴は、女優陣4人と男優陣3人(あとゲストに2人)のバランスがいいところ。

ゴルフボールが客席の前列に落ちると客の頭に当たったりはしなかったかなあ。面白かったのは、投げ出すと続けてどんどん舞台に投げ込まれるが、一端とぎれるとぴたっとボールが投げられなくなる。すると、予定した展開を微調整する必要もあるだろうから大変だ。
そんなことを予想したのか、あらかじめ説明の中で、何時投げるか分からない人は、役者が逆立ちするときに投げてくださいとサジェスチョン。ゴルフ練習場のネットの中が舞台。こういう即興を観察するのはスリリングで楽しい。

第3話「ブロッケンマン」。関西から東京に出てきた新入社員の部屋。かってにストーカーみたいに部屋に上がり込んでいるばかっぽいぶりっこ女がオカシイ。ネタはドイツ語に筋肉マンのなかのブロッケンマン。おちは、おばあちゃんの「×ど×つ」。

第4話「お前たちが殺した男」。場所は山小屋。カマイタチという現象が、大鎌になって怖くなっていく?女子大生をだまして怖がらせているうちに、本当に怖くなってしまう男二人の心理がもっと鮮やかに展開すると迫力がでたかも知れない。
なかなかに笑えたが、こちらは疲労の極限だったので、少し4つも話があると最後の方は草臥れていく。

堀江に北接するところに、劇団員(宮都謹次、梅本真理恵)らが経営する創作家庭料理の店「KING MANMA」が出来たという(そんなことが載っている当日パンフの充実はここの宣伝に賭ける意気込み-特に山田かつろうのDM手配り-を如実に現している)。
「謎の主婦M・K子(50歳)が作る手料理」に惹かれるぞ。
帰り、扇町公園がきれいになってアベックがベンチに座っている。

4/8(日)

今日出かけると明日は少なくとも休みになる。さすがにくたびれた。

キャンパスプラザ京都へお昼に出かけ、まず木曜日から始まる自分の授業の教室を確認。MD装置がないのでいま調達しているということ。音楽療法の講師の時には間に合うといいのだけれど。250人の教室は横もあって巨大な感じもなくほっとする。ただ、7日が「締め切り(社会人は20人ぐらいということ)で、京都橘女子大学の学生がこの講座の存在を知りだしたのはキャンプの時だったから前期は受けることができない学生が多くて残念だ(後期が増えるかも知れない)。

財団法人大学コンソーシアム京都主催、キャンパスプラザ京都大学公開講座。1000円(会員は500円)。《21世紀の豊かさを問う−文化政策がめざすもの−「市民力と幸福論」》。講座担当大学:京都橘女子大学。2時間前に受け付け開始。混雑が予想されたので指定席(前から番号を席に打った)。でも、初めは50人ぐらいが2時間前に並んだが、結局200名弱ぐらいだったのではないだろうか。

筑紫哲也、堀田力というスターがやってくるから溢れるのでは?という予想ははずれた。でも、内容はざっくばらんななかになるほどいう話が混じって成功だったのではないかと(まあ当事者ではあるけど)思う。池上惇学部長の司会。前半の京都タワーをめぐる創発的な話題展開など、即妙なやりとりも見られた。

オリターをしてくれた村田さんなどの上回生、それに昨日の疲れもあるのに10名足らずの文化政策学部の学生もいて、「demanding」消費者という意味について終わってから質問された。私は堀田さんの「stipend」(聖職者への報酬という意味から、ボランティアなどへ払うサラリーとは別の給料)という言葉がなじみがなく新鮮。彼は地域通貨を強調していた。

終わってから、はなが欲しがっていたタイの古典音楽のCD2枚とたまたま1000円で売っ
ていた中国の少数民族のCDを買ってから、村田さんらと食事。
帰ってはなと一緒にタイ音楽などを聴く。特に中国の少数民族のボイスを聴いて、はなが、これって私とおんなじ!と喜んでいる。学芸員資格を取ることとタイへのフィールドワーク(これは実は選考があるのだ)は両立しないようで悩んでいたはなだけれど、タイで行く(アイヌはもちろんするけど)心が決まった(?)みたいだ。

さきは、やっと入学式を終えたばかり。実力試験が火曜日にあるのでびびっている。

この間に読んだ本。角川oneテーマ21『ミトコンドリアと生きる』(2000.12)。著者は、「パラサイト・イブ」という小説を書いた瀬名秀明と、日本医科大学教授の太田成男。

ミトコンドリアの遺伝子はすべて母親からだけ(卵子に精子が入ったときに、核遺伝子とちがってミトコンドリアの精子の遺伝子は卵子に分解されてしまうらしい)という話はじめ、なかなかに興味深い内容だった。
後半は、ミトコンドリアが「人類の起源と民族の大移動」をかなりの程度解き明かすキーになることとか、「アポトーシス(プログラム細胞死)を制御するミトコンドリア」の話。

なお長距離ランナーのミトコンドリアDNAの塩基配列が、鳥類のミトコンドリアと同じであるなんて話題も想像力を刺激させられる。鳥類は活性酸素が作られにくいようにできているので、同じぐらいの大きさのラット(寿命4年)よりも長生き(鳩は寿命が35年)だというのだ。

そして最後に「老化」について書かれている。その一節を引用しておこう。

《人間は優れた活性酸素除去能力という偶然の体質によって、知識を他者や次世代に伝達することが可能になり、厳しい自然を生き抜いてきたのではないだろうか。このことは、今後の高齢化社会において、高齢者の役割を考えるうえで実に示唆的であると筆者らは考えている。・・・ゆったりとした有酸素運動でミトコンドリアの機能を改善し、よりよい老後を送りたいものだ。》


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