こぐれ日録 KOGURE Diary 2001.4
4/9(月)
午前中、こぐれ日録(28)をまとめて書く。書き出すときりがないぐらい今月の初めはいろいろなことがあった。そういえば、夜に会った宮沢章夫さん(劇作家)も日記をインターネットで掲載していると言っていた(日記形式は何か書くことを習慣化できると宮沢さん)。京都造形芸術大学の芸術関連のセンターのweb担当だそうだ。覗かなくちゃ。
日本アートマネジメント学会関西部会事務局の松本茂章さんからは、彼の日記とその一部を掲載した雑誌『大阪春秋第102号』(01/3発行。発行所は大阪府豊中市)が送られてきている。
この『大阪春秋』を斜め読みしていると、奈良市に住んでいた志賀直哉が1931年当時税金として「女中税、扇風機税などを払っていた」ことを日記でつけていることが紹介されている。それにしても戦前にはユニークな地方税制があったものだ。どうやって調査するのだろう?、扇風機を使っているかどうかを(あるいは購入時に売上税的に払うのだろうか)。
松本さんは、『駆け出しマネージャー/アートいえば交友(1)』という連載をこの大阪地元誌に始めたのだ。『大阪春秋』の編集後記には「庶民の中に埋没している無数の文化にスポットライトをあてて、それを記録し保存し、未来への橋渡しの役割をつとめたい」とある。だから彼の日記にはアーツマネジメントの話のほかにOSKなどの記事もあるのでこの雑誌の編集意図によく合っているわけだ。
はなは何度も花見をしているのに私たちはしていないね、と芳江に言われ、八幡市駅の反対側の堤にあるらしい桜並木まで散歩する。すでに風に吹かれて桜の花びらが川を覆い、桜木には若葉が目立つようになっているけれど。
木津川の堤防まではトラックが多く通る道沿いで殺風景だが、桜堤に入ると一転して、大きな桜の木が両側から覆い被さり大きな花のトンネルになっている。
北側には淀川が流れて、南には石清水八幡宮がある男山が枕のように横たわり、きれいな水ではないのだろうが水鳥がいる。でも花見の今は人間の出した餌を求めて烏の軍団が水鳥よりも優勢。大きなススキが川辺に立って熟年の男性たちが桜の撮影に飽きてそんな風景を撮ったりしている。
出町柳から叡電に乗って3駅目の一乗寺駅に降りる。恵文社一乗寺店に初めて入る。
なかなかに広い店内。普通の本屋さんではない落ち着きがある。漫画もこだわりあり。
小説や詩のセレクションも独特。ウンゲラーの絵本や大人向けのかなり鋭い風刺画本が特集していたりしている。
なにもかも買いたくなって困りそうな店内。5000円で100%ORANGEの原画がかかっていたり、福田美蘭の作品集やベネッセハウスの画集(これは以前にいただいた)が並んでいたり。
奥には小物ショップもあり、合わせてギャラリーと呼べるぐらいの展示スペース。いまは、榊和也という人の人物イラストがかかっていたり、外国人ばかりをスケッチした紙がざーっと並んでいたりする。巧みさの感じから見てストリートアーティスト系だろうか?
あっという間に時間が経つ。
とりあえず『Meets Regional 2001/05号』〜御幸町・堀江・トアウエストが特集〜。それに並んでいる本がみんな気になる(1986年生まれの著者というなぞの本2冊が特に気になるが)クラフト・エヴィング商會の一連の本。
そのうち、発行年月が早い(97.6)『どこかに○いってしまった○ものたち』(写真/坂本真典、筑摩書房)を買う。不思議なものをフィクショナルにしかも稲垣足穂ちっくに愛玩するため、実在しない骨董品を創り写真化して装幀されている本だ。
歩いて、京都造形芸術大学の京都芸術劇場studio21へ。りっぱな階段を上り、事務局とかカフェなどがある場所を通り、また階段を上ってstudio21に入る。トイレとかは小さいが、もう一つ850席の劇場(たしか春秋座?)があってそこできちんとしたユーティリティが備わっているのだろう。
映像・舞台芸術学科/学科長の太田省吾さんに挨拶。志賀玲子さん(ここでアートマネジメントの講師もしている)や鎌田さんがいる。アトリエ劇研をかつてやっていた鎌田さんとは1年ぶりぐらい。そして6年ぶり(静岡でうちたもみいちさんらと超歌劇団を発見したとき!)ぐらいに宮沢章夫さん(袋井市の長谷川逸子建築ホールに関わっている)に会った!というわけ。
オープニング記念連続公演のはじまりはじまり。18:09〜20:19。京舞二つが能を挟むプログラム。椅子の客席に座っていたここの学生が、人数が増えてきたので追加して作られた前の座布団席に移っている。
(詳細はアーツ・カレンダー「こぐれ日記207」を参照してください)
今日もたらたらしている。北海道の二風谷でアイヌ語のラジオ放送が始まったということを聴く。がぜん、はながアイヌ文化とタイ文化をフィールドワークに選ぼうとしているので関心が高まってしまう。アーツ・カレンダーの鈴木さんもタイつながりだし・・。
午後、芳江の車で電気ポットといらなくなった掃除機、CDなどを京都橘女子大学の研究室まで運ぶ。前からいる先生より職員組合への加入の誘い。組合とはいつも交渉する側だったから、なんだか嬉しいようなとまどうような。学生はすでに授業をしているのだなあ。
京都駅の無印良品にて、ファイルとルーズリーフを買い、15名の「アーツリボン」ゼミ生の名前をインデックスした。明日から、このファイルに彼女たちとのコミュニケーションが記され始めるのだ。
18時から、京すいしんにてJIAM教務部の歓送迎会。私と一緒に替わった佐々木前教務課長が京都市立芸術大学事務局の教務課長になっていて、井上明彦助教授などのことを話す。私の後任者はシドニーのクレアオーストラリア事務所長をしていた田部くん。昔、一緒に地方分権(道州制)の勉強会をしていたことなどを思い出す(その中心だった人が今度川崎市長選に出るのだった)。
はじめての基礎演習『芸術のリボンをまちに結ぶ(1)〜伝える道具』が始まる。まずは教室をロの字形に変えることから。燐光群のチラシを配って、それの見方から話そうと思っていたのに、そこまでいかず(入学課のカメラが入ったので、学生は緊張してしまったからでもある)。話の流れで美術に関するアーツマネージャーには、大きくいって美術館などで働く学芸員と画廊を営むギャラリストがいるという説明をする。
学芸員は美術館で説明をする人(チケットを切ってくれる人と答える学生もいておかしかった)というのが彼女たちの共通認識。
展覧会を企画したり、美術資料を調査研究する、というキュレーターとしての活動についてはもちろん知らないから、おいおいその実像を伝えていこうと思う(実演芸術についてはもっと説明が難しいなあ)。
学生にとって大切な評価については、自分らしいノートを選び、アーツにまつわる「ノートブック」(日記風)をそこに書いて提出してもらうことにした。
できれば、大学文化祭などで、それらのノートブックを展示したりできればいいなと話す。つまり、芸術との交流に関する自分たちの成長の記録を、大学生になった初めての作品=アーツワークとしてプレゼンテーションするのだ。
授業の後半は、清風館の周りを散策しながら、どこでアーツ企画が出来るかを探すというもの。これにも入学課のカメラが随行する(シャッターが怖い学生が多い)。野外のステージで演奏者と聴衆に別れて、どこで演奏したらいいか、席を作ったらいいかを考えてもらう。
清風館1階のピロティはみんな初めて行ったので面白がっていた。ここで企画をするのは自由度は高いけど、さきの野外ステージよりも難易度が高いなどと説明。
昼休みは私の研究室で学生がたむろする。食事を持ち込みながら、Lマガジンを見たり、「姫ちゃんのリボン」があることに驚いていたりしている。100%ORANGEの人気は圧倒的。劇団四季のキャッツやユニバーサルスタジオに行ってゼミしようという学生ももちろんいる。USJに行くのなら、まずその良い評判と批判的な記事を両方読みながら、自分たちでチェックするみたいなフィールドワークになるだろうか?
フィールドワークについては、まず小さな小屋で静かなお芝居を見てもらうことを考えていたら、ちょうど時期的にも恰好な公演が見つかった。藤原康弘・広田ゆうみ(ら?)のユニット「小さなもうひとつの場所」の第4回目『いかけしごむ』だ。これを5/12、14時に授業として観ることにする。だから水曜日の基礎演習が土曜日に振り替わるので、教務課に届けを出す。
16名もいっぺんにスタジオ・ヴァリエ(私はここに行ったことがないが小さな所だろうな)に入ると藤原さんがびっくりするかも知れないから連絡しとかなきゃ。
池上学部長の授業のT.A.が不足しているので急きょ私も授業に入る(お昼を食べ損ねた)。
13:30、びわ湖ホールの広報営業課長と主幹がPRにやってきて、そっと授業を抜ける。大きなポスターをさっそく文化政策研究センターの掲示板に展示。どんどんくると掲示するところがなくなるので、喫煙室となっていたけど結局不用になったスポットをチラシなどの秘密基地にしようとセンター所長の端さんが私に言いに来る。端さんのゼミ生が、京都などの文化情報をさっそく探しに来たからだ。
全学教授会、文化政策学科会と会合が続いて夜に。これからも水曜日はなかなかにハードな曜日になる。
職員組合に入り、さっそく組合主催の夜桜会へ。「呉春」(池田にある幻の日本酒ということ、さらさらとしてうますぎ)や、鹿児島出身の学生支援課長が注ぐ焼酎を飲んで、降りかかる桜の花びらと共に夜が更けていく。
そうそう、JCDNの関西での会合に行く(トリイホール)と佐東さんらに言っていたのに、でかけられず(ごめん)。
雨。午後から晴れるが急に温度が下がった日。
京都駅のそばにあるキャンパスプラザ京都へ出かける。大学コンソーシアム京都『芸術を社会(まち)へ〜「癒す力」〜』の初日。
一番大きな教室に80名ぐらいだろうか。そのうち社会人が17名ということを聴いていたが、そんなには多くないかも知れない。圧倒的に女性(美術家や看護の仕事をしている人もいる)だが、中年や初老の男性もいて嬉しい。車椅子の男性学生もいた。
日本アートマネジメント学会に申し込んだという立命館大学大学院生(経営学)はじめ、どうやってこの分野を学んだらいいかと終わっても個人的に質問責め。日本舞踊をやっているという京都橘女子大学文学部の学生やダンスをやっている人などアーツ自身に関わっている人たちとともに福祉や心理療法へと進もうという学生もいる。
ただし、もっと漠然とこの分野に関心を持ったという学生層が最も多い。
後半に5分間ほど時間をとって自由に感想や要望を書いてもらったが、その内容はとてもバラエティに富んでいて、読むだけでこちらの勉強になる。バザール・カフェの紹介をしつつ、ダムタイプやきむらとしろうじんじんの話をしたり、劇団態変に言及したが、そういう具体的なアーツワークの紹介が新鮮に感じるようだ。
自己紹介をすると、どうしても地域づくりからの流れを話さざるを得ないので、長くなってしまいアーツへとなかなか戻れなくなる。文化施設についての考察に興味を持っている社会人や、アーツセラピーよりもアーツマネジメントの方が興味があるという学生もいる。
予想していたとおり全員の関心を紡ぐのは、出たとこ勝負だ。参加者同士が交流するような感じにすると、他大学や社会人とのコミュニケーションが図れて、私が話したようなアーツにおける「結ぶ力」をこの場も発揮できるのだけれど・・。
そもそも、このテーマを始めるに当たっては、芸術の社会的な役割の一つである「癒す力」のほかに、「結ぶ力」「創る力」「変える力」などがあることに言及したのである。
「結ぶ力」以下は集団へと働きかける力だけれど、個人的な作用の一つである「癒す力」の他に実は「覚醒する力」「気づきを促す力」もある。その部分をコメントし損なっていたから、次回にはその話を補足しよう。これがコミュニティを形成するための「結ぶ力」へとつながるのだ。
京都橘女子大学へ寄ると、大阪市の芸術文化振興アクションプランが送付されていた。講義に引用できるフレーズやアーツセンター情報が多い。機構改革があって山崎さんが文化振興課長になり場所も大阪南港に移るらしい。
先ほど集めた講義についてのアンケートをコピーし、これから前期に講義してもらう人たちへあらかじめ学生の声を聴いてもらうため私の資料とともに送ってもらうことにして、アトリエ劇研へ向かう(ディレクターの杉山準さんにあいさつ)。
アトリエ劇研演劇祭オムニバス企画。『京都お笑い迎撃マシンガン』の3日目。サキタハジメが3日間観ていた人は?と聞くと衛星の蓮行さんが手を挙げていた。彼はコーディネーターなんだから(それに1日目は出ていたし)当たり前じゃないか!
19:04〜20:47。4つのグループが20分間を与えられている。OMSのTIP COLLECTIONと同種のこの形式は新入生や新社会人への「迎撃」には最もふさわしいものだろう。つまり芸術見本市でよくやるプレゼンテーションですね。
(詳細はアーツ・カレンダー「こぐれ日記207」をみて!)
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