こぐれ日録 KOGURE Diary 2001.7
7/27(金)
今日は立命館大学産業社会学部のアートマネジメント論のテストだ。火曜日に156名が試験を橘で受け、木曜日のキャンパスプラザ京都では54名、そして今日は200名。立命館は大きな大学なので専任教員が2名(演劇論とメディア論の両方とも女性のベテラン先生)がつき、あと派遣の職員もいた。こちらはぼーとしていて、向こうはひねた学生かと思ったそうだ。
役人を3月までしていまして、というとそういう恰好で役人をしていたのですか!と驚かれた。時間は60分間、30分を過ぎると退出していいというのは橘と同じ。1枚で書き足らずに2枚目の用紙を要求する学生が二人。一方、「K」と書いて棄権する学生もいる。あと持ち込み自由だとは知らなかった学生も結構いた。あれだけ問題を教えておけば彼らは何もみないでも出来るのかも知れない。
ただ、ジャーナリストになったりマネージャーになったりして文章をまとめるときに暗記力はそんなにいらない。自分のメモや資料をもちよってそれを短期間にまとめる方が大切だから私の試験はこれからも持ち込み自由にしようと思う(立命の事務局は持ち込み禁止を原則にしたいようだ)。評価できますか?とそのベテラン先生には言われたけれど。
解答用紙は整理してから自宅に送られてくる。どんなリスポンスがあるのかまたどきどきである。
ギャラリーそわかで24日から、《THE LIBTARY 2001-Exhibition of the book abject-》〜アーティスト・ブックによる展覧会〜が始まっている。その数ざっと170冊(個)以上。3つの壁面にぎっしり並んでいる。特色は椅子があってそこに座って読むようになっていること。座って読み出すと絵本形式のものが多いので、通常の美術展よりも滞在時間は長くなる。
集める方もすごいが、もし返却するのなら大変だろうな。でもこういう、出版されないけれど「本」という形式を大切にする美術って共鳴する人が多いだろうなと思う。
なぜなら、本棚はあるけれど、絵画を壁に掛ける風習もスペースも私たちにはほとんどないからだ。ページを繰って読む本ではなく、オブジェとしての本の作品(壁に展示されるのではなく、下の台に置かれていることが多い)もあったが。
もう少し早ければ、うちのゼミ生に見せたかった。自分たちがいまつけているアーツ日記の未来形(理想像)をこの中から探せただろうからだ。
清水克久さんはこの展覧会の、インスタレーション部門(関連企画)の人として作品を地下に出していて、その作品のことが心配でもあり来ているという(触らないで、という注を近くにははりだせないから)。
そういえば題名を聞くのを忘れたが、百科全集をまず2冊用意してある。背表紙を見ると日本地図と世界地図のようだ。それを、華奢なガラスのグラス二つに載せるというシンプルなインスタレーションである。(詳細はアーツ・カレンダー「こぐれ日記248」をみてね)
さてと。
HIGHLEG JESUSという劇団(パフォーマンスグループ)のSTAGEは、東京にいた頃奇妙な案内手紙(袋に気色悪い小さなオブジェつき)が送られてから数度目撃した。武蔵野の映画館で観たのは、シーンがどんどん変わる(男の裸がよく意味もなく飛び出す)パフォーマンスだった。その劇場や劇団という枠に縛られない彼らの感じが興味を持っていたが、そのうちに大津へ移ったために、気にはなりつつ忘れつつあった。
今宵、扇町ミュージアムスクエアで観た長塚JESUS(HIGHLEG JESUSの役者と阿佐ヶ谷スパイダースの3人の役者から構成されていた)は、HIGHLEG JESUS総代の河原雅彦が、作・演出をした長塚圭史(阿佐ヶ谷スパイダース、長塚JESUS総代)に丸投げして自分はバカンスをする(といっても、怪しい美容整形外科医の比呂島役で出ている)という企画ものだった。
満席。お馬鹿な出だしのラップ調なヴォイス。コントの集合かと思いきや、出だしからは信じられないしっかりとした筋書きのあるお芝居がその後に展開する。これはまったく予想ができなかったわけで、今日は嬉しい裏切り的な観劇をした。タイトルは『テキサス』。‘テキサス(田舎)のなかのパリというカフェ’と同じ発想で、日本の中のとんでもない田舎の実家が舞台である。
19:03(3分間は声だけ)〜21:01。ここで展開されたのは、大人計画の流れに一応位置づけられるシュールなブラックユーモア、残酷差別助長的風刺偽悪趣味。ただ大人計画よりも落ち着いた展開で、閉鎖集落のなかの権力関係と死ぬまで続く片思いやだまされやすさをカリカチュアしながら、「どうしようもなく愛おしい」人間群を描く。
牛が整形で人間になっていたり、金髪の女を連れてきた主人公マサル(岸潤一郎)を見て、ずっと片思いの千鶴子(新井友香)が「マサルは外人が好きと勘違いして外人に整形しちまうなんていう、めちゃくちゃな展開。
その千鶴子は千鶴子と思われず病気の原因はその外人だと間違われて、整形で顔がぐちゃぐちゃになった村人の若者たちにリンチされて、そいつらは免疫を得るためにと彼女の血を飲んだりする。気色悪さといえば、たとえば、マサルの姉(中坪由起子)とバカな沼田(政岡泰志)が首吊り自殺をするシーン。ふすまの奥のでは、ゆらゆらと二人の足が宙を揺れて、ぞっとさせられつつも静かな時間が流れていた。
沼田のせり上がった腹とブリーフも寂しい。闘鶏で勝ってえばっていた川島(小林一英)が、マサルに負けて彼の召使いになる劇的変化も哀しい。サラ金的な取り立て屋=四ツ星(中山祐一朗)の麻薬の草栽培に犯されていく伶奈(小林愛)。彼女って、その感情のなさというか、川島のものになっても動じない感じがフシギなキャラ。ところがヤクチュウの中で初めて生身の人物にやっとなる:そんな皮肉もまたほろ苦い。
四ツ星が自分の子どもにつける名前を思いつかない馬鹿さ加減の情けなさ。東京タワーのお土産への執着。千鶴子へ献身していた満彦(伊達暁)が、整形して千鶴子の顔になってしまい、彼が、千鶴子よりももっとへたにアコーディオンを弾く終幕。救いがあるのかないのかなんてどうでもよくて、飽きない展開に久しぶりに時を忘れて見入っていた。
第14回日本アートマネジメント学会関西部会。今日は大阪市芸術文化アクションプランとその展開を中西美穂さんから発表してもらった。18人の参加。新しく、学生さん(長尾さんなど)や芸術創造館で働いている奈良歩さん、それに可児市で3月まで働いていていまは、名古屋芸大に移った藤木周さんも参加。少しずつ着実に関西部会が狙っている“面白い研究と実践のスパイラル”が台頭する兆しを感じほっとしている。
中西さんも分厚いプランを30分ですぱすぱ説明し、そのあと全員から話を聞きつつ、後半は音楽事業を例にして、生涯学習的参加事業から、セミプロ的ミュージシャンの発掘と支援、そして築港レンガ倉庫でのアーツアポリアプログラムへとバランスよく例示して、また全国大会でも発表してもらってもいいなと思いつつ聞いた。
終わってから全国大会(11/17)の午前中の会場になるMIDシアター(夕方には関連企画をここで松下電器によって開催)を見学。相撲会場みたいな作りも面白いのだが、座布団座りはちょっと難しいという意見もでて、ここの会場設営は担当するチームで考えてもらうと実践的な学習の場になっていいと思う。発表者は座布団に座って笑点の大喜利みたいになるのもいいなあ。とりあえず、JAMはスーツやネクタイはできるだけしないでくつろげる感じをモットーにしつつ、内容は真剣でかつ伸びやかなものにしたいものだと思う。
HEP HALL。第1回女性作家・演出フェスティバル〜姫ごと〜の最後。私は皆勤である。少し用意不足の劇団が多かったようにも思われるが、こうして集めて見ると関西の女性演劇人の豊富さが実感できて、これからの展開を期待したいと思うし、多分そういうフェミニズム的な視点は徐々に減ってくるぐらいに当たり前になっていくことも実は予想される。
南船北馬一団《カラブリテイエン》。作・演出/棚瀬美幸。19:06〜20:45。久しぶりに観たら、演出に踊りがあったり、びっっくりするほど感じが違っていた。
浴衣の女性陣が男4人に帯をほどいてもらって、色とりどりのスリップ姿になるのが、エッチな感じではまるでなくて、すがすがしい素振りのは棚瀬の演出の妙。
もうすぐ整理されるだろう百貨店の屋上。そこは従業員たち(デパートガール)の昼食の場所だったり、就職活動の4人が会う場所だったりする。
3つのエピソードでは、初めのエピソード1がよかった。伊藤(片桐慎和子)の孤独がぐるぐる廻っている。彼女のヌード写真を理解できない女の方が就職には勝利する。伊藤は二人の男に変に持てるが、それは何のなぐさめにはならない。
同じメリーゴーランドの廻り方でも、エピソード2の園田(藤岡悠芙子)のは、どうしようもない男との別れがあほらしくてつらい。早くしないと夏が終わるから。エピソード3。りこ(谷弘恵)は引っ越しする。えっとどんな話だったか、忘れてしまった。
特に男優陣の台詞がうまくまだ入っていなかったので、演劇の入り口のところで芝居として楽しめなかった部分があった。もっと熟成した舞台でまた南船北馬一団を観たい。
今回は、加糖旅団(初回公演「帰れるものなら」)は観れない。結果論だが、こちらを選択しておけばどうだったろうか?という思いは出る。でも、それも大きな観劇の流れではささいなエピソードに過ぎない。ただ(とまた思い直して)、エピソードだけがぐるぐる廻ったりぎっこんぎっこんするのが私たちの普通の生き方なのでもあろう。
参議院選挙。ダンスに行く前に八幡小学校で投票(もっとゆっくり小学校を見学すればよかった。私が投票した人はどっちも落っこちる。中学からの同級生辻君がやっとのこと兵庫で当選していた。フジテレビキャスターのやはりクラスメイトだった黒岩君と日曜日の朝「報道2001」で対談したりするようになれば何だか可笑しいな)。
小泉人気が自民党の圧勝に導いた。でも比例区を見れば郵便局組織票官僚やダム屋代表官僚、元自治省官僚(情報関係にも強かった森元さんは私の上司だった)などばかりが、学者タレントをまぶしつつ並んでいる。民主党も組合の代表たちだし。これで、日本の国の組織はどこまで変わるのだろうか。
国民に痛みを与えるためには、まず国自身を、ということで、「特殊法人」改革と言っているけれど、役所代行的公益法人を中心として、26000ある公益法人の整理削減を本気でやるきがあるのか。そして、役所の天下り公益法人をどこまで捨てれるのか。
もちろんこういう事態になることを見越して駆け込み的に私たちが作った財団法人地域創造も、芸術文化振興基金と一緒に検討されるべきだろうな。
岩波新書『公益法人〜隠された官の聖域〜』(2001.4、北沢栄)を読みながら考えにふける。この本に書かれていることは内部にいた私には当たり前のことながら、p160にある資料《財団法人「日本宝くじ協会」の助成方針》がこうしてみんなの目に触れるようになったのは、氷山の一角としても、とてもいいことだと思う。私も7年間、公益法人に出向して宝くじの外れ券購入者のお金でおまんまを食べらせていただいたわけである。
びわ湖ホールに駆けつけると、12時をまわっていて、ENTENがロビーで楽しく踊っていた。生声もいい感じだし、アルトサックスが断続的に優しい音を出していて、かなり場所的にfitしていた。
続いて、真っ赤な洋服、かばんの山本光洋。色物です、お気楽に、と手品とか大道芸風ピエロ。上念省三さんが一緒に鶏になっていた。
最後は、クルスタシア。祭りの法被すがた。ミニ法被お色気。4つのダンスを曲に合わせて楽しむ。クラブ風のダンス。私たちも踊っていなくちゃいけないのかしら。終わると間合いをいれるためもあり二人がマイクでDJぽくしていたが、はーはー言ってマイクの音は割れていた。
びわ湖ホール中ホール。イデビアン・クルー公演《コッペリア》13:35〜14:43。ローラン・プティが人形と踊る「コッペリア」を見たことがあった。今回は岩下徹がそのコッペリアだという。禁欲的な作り方で(ミラーボールが上手奥で優雅に回る時間の短さはかっこいいと思った)、これはこれでイデビアンの新しい境地なのかも知れない。
が、H.R.カオスが苦手な私はこういう翻案ものにはアレルギーがあるんだな、と(どうして自分がゆり根と慈姑が嫌いなのか分からないように)理由は分からないが、自分の弱みを自覚させていただいた舞台だった。元山海塾制作の市村作知雄さんに久しぶりに会う。
でも、彼のオリジナルなダンスのよさはときどきかいま見られて、その動きの面白さがもっといっぱいみたいみたいと思っていた。また、ばらっと群舞的に立つときに、人と人の間隔がクラシックバレエとは違う、ゆらぎがあって(等間隔でもなく、いい感じのばらつきなのだ)、そこに今回の振付/演出:井手茂太の真骨頂が少しだけかいま見ることが出来たように思う。
終わってまた山本光洋。ビールを飲みながら、1928の小原さんからニューヨークのオフブロードウェイで彼が見たラテンのすごいパフォーマンスグループの話を聞く。
NIPAFの3日目には、見つめられた観客がマジ切れをしてすごくエキサイティングだったという。私が観た2日目のパンの匂いを少し思い出した。
Abe “M”ARIA。椎名林檎の唄だろうか、痙攣してすさまじいダンスを踊る。めちゃめちゃに陶酔しているようで実はしっかりとバランスを保ちつつ踊っている。重心がきちんとあって、私はこれがあって本当に今日来たかいがあったと思った。動く彼女とともに座る席を移動する。一緒に身体がぶれる。半端ではなく、実に颯爽としている。撮していたビデオカメラの彼との絡みも計算されていて、驚きにも嫌みがなく(悪いけれど)客席に拍手を求めるような大道芸などはすっとんでしまう。
外に出て階段を上がると、すでに、ダンスは淡々とすすんでいた。この前アトリエ劇研で再演した「あしたは晴れるでしょ」だった。残りのデジカメを全部使って撮した砂連尾理+寺田みさこ。また最後の緑の如雨露でのコンクリへの静かな水まき運動を撮すことができなかった。でも。
踊りまわりのエッセイは「水」で決まりだな。びわ湖ホールの全体がさざ波になっている。やっと先週のホースのしぶきが未だに飛び散っているような北村成美や、今日のAbe “M”ARIA、クルスタシア、そしてこの砂連尾理+寺田みさこなどによってここの場所の価値を引き出す仕方をみんなに教えてもらった(びわ湖ホールの職員さんも大丈夫ですよね?)ように思えて、嬉しかった。15:53終了。
名古屋の七ツ寺スタジオの二村さんと、肉体労働者である(老人介護ヘルパー)八木さんとビールを大津パルコで飲んで帰る。明日は一日ビールを飲まないでおこう!
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