こぐれ日録 KOGURE Diary 2001.7〜8



61)7/30〜8/2

7/30(月)

トヨタ・アートマネジメント講座、帯広セッションのチラシを見ていると、ここにアーツマネーの楽しい実験があって(藤浩志ワークショップ、はじめてのアートマネジメント:体験編)、「かえっこタウンの住人」(小学生以上のこども)がどれぐらい集まって、どんな物々交換をするのだろうかと興味を持った。8/11〜14。(これは藤さんのビニプラというプロジェクト(d2000支援)の一環で、すでに各地で行っているものだそうだが。)

「そこそこのもの:1ポイント、まあまあのもの:2ポイント、なかなかのもの:3ポイント」とバンクマンが決めてかえっこカードにスタンプをもらい、かえっこショップでかいものを楽しむ。かえっこファクトリーやかえっこステージでおてつだいをしてポイントをもらうこともできる。
少し真似させてもらって大学祭でやってみるといいかもなあ。その前に地域通貨の簡単なレクチャーをした方がいいかしら。

大学にゆっくりと出かける。
必修の科目を受けていなかった学生がレポートを届けに来た。嬉しかった。炭酸が抜けてしまったC.C.レモンを飲みながら雑談をした。池上学部長の講義も比較的すらすら要約とかできることはできるのだという。でも大学に自分がいるということの実感がなくて困るのだそうだ。ちょっとうちの娘のさきも同じようなことを言っていたと思ったりした。

髪の毛の色が茶色すぎてバイトが出来ないと言う。でもこの髪はこだわりたいと。そうだよな、ぼくも髭を剃れといまは茨城県の知事になっている先輩から言われてとても嫌だった話をする。分かるよなんて言われるのは嫌だろう(ぼくも分かるわけではない)な、とも思いつつ(だってこうやって話すのは初めてだからなあ)。

そのあと、本当はP.A.N.PRESSの原稿を書こうかと思ったが乗らずに帰る。
帰るとさきがちょうど徳島市から帰ってきていた。3泊4日で杉浦良さんらがずっとやっているNPO法人太陽と緑の会の体験合宿にお世話になっていたのだ。

とても働いたと自分でさきは言っている。いっぱい食べたのに体重が減って喜んでいる。風呂場でシャワーを浴びていると思ったら髪の毛をぐさぐさに切っていた。徳島ではメンバーさんたちは散髪屋などにいかずにいい加減に散髪をしているから、それに影響されたらしい。

移り気なさきだからいつまでこの興奮が続くか分からないけれど、頭で考えるだけじゃあだめだと話している。アートをやろうとしている若い連中(特に某芸大生たち)を見ているとうんざりするなんて生意気なことも。
障碍のある人達とほとんど言葉では通じないのに、実に気持ちが分かり合えたことが一番の感動だったようだ。素敵な絵を一人の人から描いてもらっていた。当分、アーツよりも大きな力を徳島からもらったと言い続けるように思う。

7/31(火)

9時半から京都橘女子大学AOセミナーの打ち合わせ。文化政策学部は4回チャンスがあるが、私は第1回目で、午後に織田さんがまちづくりをテーマに2回目をする。そこで、まあ、私のレクチャー(70分間)を聞いた人が父母を含めて28名、うち受験した生徒が11名で、まずまず集まったなとほっとしたところだ(両方を受験する学生ももちろん出てくるだろうが)。

私のテーマは《文化ホールがみんなの芸術‘カフェ’になるために》というもので、みんなはきっとホールよりもカフェの方が好きななのだと思います、と冒頭に話す(一応こういうキャッチな入り方を準備していた)。黒板には個人研究費で買ったカフェの雑誌などを並べ、おまけに100%ORANGEさんにいただいたボードを並べて、少し雰囲気を和らげた。ほんとはラジカセも持ち込もうとしたが、それは今回は控えた。

以下は、彼女たちがそこに書き込むようになっているレジメ。
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《文化ホールがみんなの芸術‘カフェ’になるために》

1.文化施設って何だろう〜「文化」、「施設」、「芸術」〜
美術館、ギャラリー、アトリエ 劇場、文化ホール、稽古場 文学館、映像館、などなど 課題(ばらつき、利便性、伝達)

2.文化ホールでは何が行われているのだろう(ここでは、碧水ホールの1年間のチラシ使って説明した)
音楽コンサート 演劇・ダンス公演 リハーサル・創作・ワークショップ その他
(集会、販売、展示・・) 課題(鑑賞者は育っているか、情報は?チケット料金は?)

3.文化ホールはどのように運営されているのだろう
商業施設の一環として、あるいは企業メセナとして 公立施設として(国立劇場、自治体立ホール) ホールでない場所での実演芸術の公演 課題(アートマネジメント・・/これが書けていると基本的に評価が高くなる/)

4.「カフェ」ブームを考えてみよう
気持ちいいカフェについて〜メジャー系とこだわり系 オープンエアのカフェとまちづくり ザッカフェ、イベントカフェなどいろいろな展開 カフェ運営から、みんなを楽しく演出するためのノウハウを盗もう

5.文化ホールをカフェみたいに楽しく人が集まれる場所にするには
アーツとコミュニケーション〜観客、鑑賞者、享受者、参加者 カフェにあって文化ホールに不足している魅力を考えてみよう 哲学カフェ、人生カフェ、そしてアーツカフェ (ここで臨床哲学の話を少ししたら、これの反応は思いがけず答案に多くあって、いまどきの高校生が「哲学」にアレルギーがないことがわかって勉強になった。)
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そして設問は講義の内容を理解しているかどうかを聞くもの(文化ホールのあり方)と、独創力を見るもの(アーツカフェの企画アイディア)の2問。45分間では短すぎて、どちらかの記述がを時間切れにしている生徒が見られたが、一生懸命書いている姿を見るだけでうれしくなる。

富山(海のそばのカフェを思い浮かべていた)や静岡、長野、岡山などの遠方からの生徒(お父さんが自動車で連れている子もいた)も、近場の京都や滋賀、大阪、兵庫の生徒もいる。

その色々から集まった彼女たちが、自分の町や学校を思い浮かべて自分なりのカフェの名前を考えているのを見ていると嬉しさがこみあげてくる。実際、こういう問題が好きです、なんて書いている答案もあった。10点満点で評価。4回終わった段階で合わせて合否を判定することになるそうだ。9月23日、24日に予備面談があり、このあたりで絞られてくるということらしいが、初めてのことでどんな風になるのかまだぼんやりしたままだ。

ART COMPLEX 1928。朝4時すぎに起きてP.A.N.PRESSのエッセイを書いたまま大学に行き、椥辻のコンビニで買った沖縄パイナップルリキュールを地下鉄内でこっそり飲みながら、やっと花嵐の踊りをみるための階段を上る。

《妄想きかん車》19:37〜20:40。花嵐(古川遠、むしちゃん、伴戸チカコ)、由良部さんが来ている。
チラシもかわいい。初日限定プレゼントのカードもついている(夏の炎に目を向いた機関車君の汗が空から炎とともに落ちている図柄)。今日が初日。6日間の公演はすごいことだ。

客席は絞ってあって、ポリプロエチレンの幕をくぐると入り口にバーカウンターがある。袋坂ヤスオさんに無農薬のオーガニック発泡酒(日本ビール)を薦められるままに飲む(300円、白い方は400円で伊藤キムさんが買っていた)。さらにカフェを切り盛りしているJURIちゃんが作ったケーキを食べる(これはお腹が大満足したからか、ステージを前にして緊張感をきちんと維持することを怠ってしまった)。

私が食べたのは林檎味だった。健康にこだわったものばかりなのに、さっぱりとほのかな味がカフェ世代の実力だ。胡麻ほうれん草とかいろいろあって、袋坂君が毎日1個ずつ食べると言っていた(帰りにお土産で買おうと思いつつ、忘れてしまう、残念)。

実際の踊りの方は無音の部分が多くて、かなり内面に厳しいステージを目指しているようだった。突然音が切れて、客席までが明るくなる所は、妄想の甘美な世界が何かの侵入で中断してしまった白けた状況を示しているのだろうか。

この公演も6回を重ねるともっともっと深く鋭く怖くなるのだろうと思う。3人の特徴は声である(むしちゃんはそれは少ない)。その声にはすごく反応する私なのだが、対照的に、彼女たちの声でなく在り続ける身体の揺らぎの方が今ひとつ察知できないなあと思いつつ・・。そのうちに、私は今日の疲れとほっとした安堵感から幾度かぼんやりしてしまっていることに気づいてそのたびにびくっと身体が痙攣する。

ほんとはもう一度観なくちゃいけないかも知れないが、前半に真っ赤な太陽へと移る鮮やかな展開とか、はっとする美しさが草臥れている私にも感じ取ることはできた。
一人が前で立ちつくし、二人が背後で絡んでいるパターンが多い。客席に一人が入って観客になってしまう部分とか、その舞台と客席との行ったり来たりは、もっとスリリングに今後展開するかも知れないなあとも思う。

8/1(水)

昨日、立命館大学から答案が200通送られてきていたので、今日は自宅に閉じこもって採点。言葉の説明を40点とする、こちらの方が出来が良かったからだ。企画プログラムに30点、プレスリリースの形式にきちんとなっているのは少なかった。が、ちらほらユニークなものも見られた。

学生が苦労して書いた解答例をここに残そうと思ったが、8/27に追試を受ける学生が2名生じたので、28日採点に立命館に行った日以降にアップすることにする。ずっと家の中だけだったが、外はとても暑かったらしくて岐阜県多治見市では39.9度とかいう信じられない気温だったとニュースしていた。

8/2(木)

ホットな8月が続く。体温よりも高い気温。基礎論の成績も無事教務課に提出してぼんやりと大学のキャンパス内をぶらつく。1回生がオープンキャンパスに来た浜松の高校生たちを連れ回っているので、私の研究室に案内したりする。

9501教室で国などの文化遺産の保護事業についての集中講座(「文化と社会[日本]」)があって、うちのゼミ生や立命館の大学院の森さん(JAM West会員)なども受けに来ているので、どんな講義なのかちょっとのぞいてみた。

増淵徹さんは、文化庁の専門職員だったと聞いたことがあったが、実に各地の文化財に詳しい。今回は史跡を中心としていて、戦前に南朝方の史跡や明治天皇の聖蹟、尊皇思想によって天皇に貢献した人たちのお墓などを集中的に指定した話や、それを戦後一斉に解除する話など、歴史が政治によって作り直されるさまが具体的なのでなかなか勉強になる。

戦後、戦前には軍事施設だったので指定されなかった主だったお城が次々と指定され、もうすぐ金沢城も大学が移転したために指定されるけれど、仙台城だけはいろいろな障害があって(たとえば生活道路が走っている)きっとずっと指定されないエピソードなど抽象的でないリアリティがある(鹿児島城は西南の役で史跡になれないぐらいに破壊された)。

歴史や文化財の教員は確かに物知りだなあと思う。それに(もちろんかもしれないが)勘所の小話を持っている。たとえば、夏みかんの日本発祥の場所が山口でその木が指定されていて、史跡が食べられる、とか学生が興味を持つひねりがあったりする。

戦後、国宝と重要文化財、特別史跡と史跡という格差を作ったが、これは文化財行政における改悪だったと指摘するあたりは、かなり力が入っていて実感がある。国宝と重要文化財っいうのは、法的な扱い、財政措置などには何の差もないのだが、こういう階級差別をつけることで、重要文化財を国宝指摘にしてほしいと地方自治体が「文化庁に陳情」するという構図が出てくる。

つまり予算のいらない権威づけであり、そういう天皇文化を頂点とする日本文化の均一的序列化による支配構造が新たな装いで張り巡らされてきたことが明らかになる。
これは、天皇との遠近関係構造づくりだと福岡県地方課にいたときに実感した「叙勲」(文化勲章なども似ている)と同じものだ。

パナクリエイトの松本さんが、アートマネジメント学会のことではなく、OBPアーツプロジェクトの相談のためにやってくる。今年度の企画を表すタイトルとして、「カレッジ・パルス」ってどうでしょう?と彼が言う。だったら、シンプルに「PULSE 01」にしましょうかなどと相談する。

初年度は数大学の芸術関係学部が参加してくれて、空き店舗(埋まる可能性がある所もあるのだが、秋まで押さえてある)をうまく活用する方向で調整が進んでいるのだ。彼はいつもニュースリリースをもらったりして記事にしてきたが、こんどは自分でニュースリリースを出す初めての作業をすることになる。

増淵さんの授業が終わった森さんもやってきたので、彼女も同席して打ち合わせを切り上げ、ギャラリーそわかに行く。いっぱいに並んだ本を眺めたり2階でビデオを3人で鑑賞したりする(お互いが1本ずつ持ってくるのは、偶然性があって可笑しい)。
清水さんが今日もいた。

そのあと、前にシアターXの上田さんとサーカス村の西田さんと一緒に食べた無国籍料理屋「しま」で食事。特に松本さんはウーロン茶2杯で23時過ぎまで熱く語っている。


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