こぐれ日録 KOGURE Diary 2001.6
6/4(月)
今日やっと観たい映画に会える。で、大学へは顔を出さず、武藤さんにコンテストの進捗状況をメール。京都みなみ会館での映画のあと無印良品でOA対応の椅子を買おうとして待っていると、その商品は製造のめどがないとのことで、折り畳み椅子やスタンドも買うつもりで住所を書いていたのに、何だが一番必要な商品がないならと思ってすべて買わないで京都芸術センターへ向かった。だいたい売ることができない椅子を展示しないで欲しいものだ。
さて、京都みなみ会館から。『ヤンヤン 夏の想い出』(2000年。英語タイトルは、a one & a two)。監督・脚本/エドワード・ヤン。173分の長尺ものということもあって、上映が難しいのか、やっと京都にこの台湾・日本合作映画がやってきた。
とてもドキュメントな感じがする。姉のティンティン(15歳)が、眠り続ける祖母へ話しかける映像や、その母ミンミン(40歳)が同じくお祖母さん(ミンミンにとっては実母)へと話しかけ、でも話す内容が何もなくて、それがつらくてずっと泣いている空虚なマンションの暗がり、そこへ帰ってくる父NJ45歳(彼がとりあえず中心人物なのだが、その姿は実におとなしくて目立たない)。
コンピュータ会社を友人と共同経営しているエンジニアであるNJ(エヌジェイって呼ばれる割にはおとなしい無口で表情もなくはじめは日本にごろごろいる働きバチサラリーマンみたいに映っている)。彼が義理の弟の結婚式が終わり披露宴に行くときに、一度マンションに戻る。
何かを取りに帰るのだが、家族と話したりしているうちに何を取りに帰ったのか忘れてしまう。それで、共同経営をしている友人の社長(幼なじみで初恋の人とも旧友)に会い、二人は初恋の人シェリーに出会う。すると、その社長もシェリーとNJのことを思い出したりしているうちに何で、いまエレベーターを降りてきたかを忘れている。もう、そうなんだよな。45歳のそろそろ健忘症が冗談でなくなる時期のわびしさが身に沁みる。
(詳細はアーツ・カレンダー「こぐれ日記227」をみてください)
京都芸術センター。二人の知り合いさんにやっと自分のCD-ROMを販売する。
嬉しい(まいど)。贈呈すべき人と買ってもらってしまう人と、この違いをきちんとする必要があるのだろうが、何だか甘えてしまっている。
アネッテ・メイヤー〜ファッション・インスタレーション。売っているらしいがかなり高い。おかきのパッケージを丁寧にスーツにしていたり面白い感じもあるが、やっぱり着て動く人をみたい(そんなビデオも欲しい。と思っていたら、このあとのスパイラルガーデンでは青山の街にこのスーツを着たモデル20人が出かけるイベントやビデオ展示をするらしい)。
2階の講堂はいっぱい。アンクリエイティブの永利さんも東京で追加公演をしたと話していた。
『CJ8』Canada/Japan Dance Partnership。19:06〜20:53(間に15分ほど休憩)。日本とカナダを代表する8名の振付家が互いの国の先鋭ダンサーとともに作品を創るというもの。すでにオタワ、モントリオール、トロント、バンクーバーと回っている。
板井さんが来ているのはもちろんだけど(受付していた小鹿さんは最近JAM Westに来ないなあ)、京都橘女子大学文化政策学部の学生がいて挨拶されたのには驚いた。試験に公立文化施設のリポートを取り入れているのでそんなに驚くことはないのだが。
(次の日彼女に聞くと、実際はコンドルズのメンバー3人が最後に挨拶するのは実に面白かったけれど、ほとんど「怖い」という感情のなかで呆然とダンスを眺めていたようだ。)
1)山崎広太振付。小さなカナダ人女性がくねくね踊る。ひたすらに。14分。
2)サージ・ベネトン振付。3人の日本女性(ひとりは中性的)。無音。ぼそぼそ。8分。
3)ホリィ・ボディ・タトゥ振付。鎌倉道彦と椙本雅子。9分。かっこいモノトーンの衣装。光も鮮やかにモダンな陰影を与える。ようやく私の眼球も観る歓びに震えるようになってきた。
4)山田せつ子振付。11分。ひとりの女性。それにしてもカナダのダンサーはぴしぴしメリハリをつけて動く癖があって、それが邪魔になる振付家もあるだろうなと思うが、せつ子さんの振付には、形の面白さもあるから、それなりに楽しく踊っているように推察される。汽車、時計の音。肩の揺れ、記憶のかけら。音楽も変化豊かだ。
5)島崎徹振付。11分。男性二人が上半身裸でもつれる。コミカル。ゲイ的ダンスのようだが、げてもの的な面白さがある。本人たちは真面目にやっているとしたら・・?
6)伊藤キム演出。彼もせつ子さんとともに会場にいる。12分。初めに出てきた女性よりは背が高い。奥のスクリーンに映るかげ。それに向かっているのだろうか、「哄笑」に近い笑い声が何の前触れもなく彼女から起きる。下手の奥から上手の前方への一条の光の路。これを観るとすぐにキムさんだなあと思う。
指さしているとそれが自分を指すことに返ってくる。皮肉なものですね。バイオリン。自分を指さして自分が映り自分が笑う。その笑いを聞いている自分だっているし。
7)ルイーズ・ベダール振付。12分。衣装の色が黄色などアルカイックな感じを出している。暑苦しくなる一歩手前。
8)テッド・ロビンソン振付。笠井瑞丈/河野眞子。11分。もうどこへも外には出られない。踊っているのをみている人をまた観る。そんな関係があるように見える。
朝に、まだ締め切り前だが、送られてきていた〈「朝日舞台芸術賞」候補推薦のお願い〉の用紙に、その候補(新人賞は寺山修司賞という)を書いて送っておく。文化メセナ部という所がしている。出しても私の推薦するものはマイナーだから屁の突っ張りにもならないだろうが、関西などにこんな清新なアーツがあるということを知らせたいと思って投函。
京都橘女子大学へ。隔週の授業なのだが、この日は授業があってうっかりして聞かなかった学生もいたみたい。尼崎市と大津市の広報紙を取り上げ、01年度の市長の1年間の方針(所信表明)と当初予算がそこには市民向けに載っているものをテキストとして使う。
2講時目はなかなかしゃべる学生を黙らせることは難しい。大きな蜂が今度は入ってくるし(先週は蛾だった)。3講時目は、学生にマイクを持たせて少しずつ読ませてみた。これの方が静かになる。
読む番になっても吹き出して読めない学生もいるし。こうすると楽ということもあるが、どこでつっかえて読めないのかということが分かるので、そこを丁寧に解説すればいいわけだ。たとえば「繰入金」が読めないので、そこから会計間の関係を話したりする。
さて、トリイホール。DANCE BOX vol.65。『北村成美のダンス天国』<新作・60分1本勝負>。題名からして彼女の決意(未完のままでどんどん壊しては創っていきたい!)が滲んでくるみたいに思えて仕方がない。19:37〜20:28。
もちろんパーツパーツに彼女らしい身体を大胆にさらけ出した、なじみのテイストが現れる。それは彼女の個性であるしマンネリとはまた別の「回路=特色」だと思う。何せ、わははとその口の開け具合があっぱれ、さすが。そして屈託なく。しかもそれでいて小心いや、デリケートな「祭りの後」的うらがなしさもほのめかされて。
背中の上の方にブラジャーらしき白いものがあるポーズから始まった。ハードロックはしげやんお気に入り。上手奥から下手手前までの往復。徐々に速度があがる。楕円になる。・・
(以下は、アーツ・カレンダー「こぐれ日記228」をお楽しみに)
京都橘女子大学デイ。ゼミで島袋道浩「帰ってきたタコ」展のために作られた図録を5枚ほどコピーして配る。彼の文章を読んでもらいたくなったからだ。先週、アーツマネージャーになるためには最低限英語はできなくちゃということを伝えるべきだと学部懇話会で話したこともあって、そこに書かれていた英語訳も一緒に見せる。そして、日本語と英語を順番に読んでもらった。
事前に目を通していないから大変だっただろうけれどみんな素直に読んでくれる。たどたどしくてもいいのだ。きっと島袋さんの文章の魅力で英語も読ませたのだろうとかってに思う。鹿を探す話などは印象に残ったようだ。書き言葉ではこんなに多くの言語を使わなくてはいけないけど、美術ではもっと少ない「言葉」(想像力という言葉なのかな)で伝えることができるはず、そんな彼の思いを話すことはできなかったが。
コンテストのこと、大学院のこと。もう梅雨になったのだろうか。湿度が高くて学生も私たちもぐったりしている。来週のゼミは、少しプレゼンテーションの勉強と新聞記事を読むことをやろうかと思う(彼女たちもこの日録を読んでくれると助かるのだけれどなあ)。
古本屋で買った『広告図像の伝説〜フクスケもカルピスも名作!』(荒俣宏、平凡社ライブラリー291、99/6)。森永エンゼルマークの秘密とかグリコのお手上げ300メートル走者とか、10年以上前に書かれたものだが、なかなかに楽しかった。商標やマークの懸賞コンテストのことなども分かって身につまされる感じもする。
キャンパスプラザ京都へ。事務局の人から来年度の話。実は思ったよりこのコーディネート科目の受講生が少なかったので来年度をどうしようかという。学生以外の人たちは多いし熱心なのだが、学生がもっと多いことを期待していたようだ。いま受講している学生はとても純粋で熱心であることを分かって欲しいとは思うのですけど。
3大学でやっていくことは確認。各種の「癒し」の方を事務局でメインに考えたいということであれば、私のように「アーツマネジメント+まちづくり」の立場としては、来年度以降全体に対してずっと関わることは適当ではないのかな(何度か授業をすることはもちろん大丈夫だけど)とふと思う。
今日は岩田宗一先生の2回目。「声明が一般音楽に果たしてきた意義」。最後に韓国と中国、チベットの各声明を聞かせていただく。中国の録音は文化大革命直後だったので、録音をしたいと岩田さんが頼むとその中国のお坊さんは涙を流して喜んでくれたということ。
また、先生が学生の時イタリアオペラを聴いて、圧倒されてやめてしまった話。や、中学の音楽の臨時教師になったとき、越後獅子を聴いて笑って三味線音楽を真面目に聴けない生徒たちを前にして、日本音楽を研究しようと思った話など、彼の体験談がいっぱいで、その実話も含めて受講生によく伝わっただろうと推量する。
南港へ移った大阪市ゆとりとみどり振興局へ挨拶に行く。芸術創造館の乾さんも来ていて、CD-ROMお買いあげ(3人目だ)。局長寺川浩さんは、デュッセルドルフで自治省の先輩片木さん(灘の先輩でもある)と一緒だった人。文化集客部長永田兼一さんはまだ若い感じ。ミニレクチャーみたいに話してしまった。
今度の日本アートマネジメント学会全国大会に中西美穂さんが発表する方向で準備をしてくれている。その前にJAM Westで報告してもらっておいてもいいなあとも思う。
森ノ宮プラネットホールへ。時間があったのでテストの問題を考える(これから5つぐらい、授業などに対応して試験問題を作らなくてはならない)。いろいろあるから、すぐにごっちゃになる。どこでそれを説明したか分からなくなるのだ。
『解放と快楽その3』akick pop dance 10〜danceこそ私の解放と悦楽。19:07〜20:32。振付・構成安川晶子。今回は照明ではなく制作をしている三浦あさ子さんから、総勢21名であることを聞いて驚く。なにせ、トリイホールで安川晶子さんを観ている時には、孤独で直線的な踊り手のイメージ(それと客席では腰を痛めたダンサー)が強いからだ。
横に広い階段席。こんな形のホールは珍しいかも知れない。紅い手すりの斜めに傾く具合や一番上の所が途中で宙ぶらりんになっているところなど、この建物はかなり癖のある建築デザインであることを再確認したりする。
客席はほとんど女性。東京の宝塚劇場を思い出す。
1)Floating Women〜花が咲いて香りをひろげて、散っていく〜。10人、赤色を基調としたコスチューム。21分。動きも音楽も素直な感じ。とがった物はどこにもないが、コミカルに登場する人物が面白い。安川のソロに子どもの声。
2)Daily Life 1。現実の体から理想の体へたどり着こうとするdancerたちの日常。バレエのレッスン風景のようだ。音楽はシャンソンだったりするが。映画を観ているように感じてくる。11名。黒い衣装がくるくるくると回るのをただ観ているのも気持ちいいものだ。13分。
3)Daily Life 2。こんどは4人。気持ちは山々なのだけれど、なかなか狙った美へとたどり着けず、日々戦いのK1・DANCERやすか一の日常。ハードロック。曲調も踊りもがらりとかわる。交響曲で言うと第3章スケルツォという感じか。16分。
断片的な動きとシーン。理知的な構成。立体交差的とでもいうといいかも知れないが、もっとその感じを複雑になったらいいのではないかしら。とても面白いけど。安川の足をひっぱるシーンはおかしく身につまされる。
4)Long Song。31分。客電が落ちないまま、ぽつぽつとピアノが聴こえる。4分ぐらいついたままだった。3人。後ろ向きでのソロ。そして印象的なデュエット。
網をキックする女性、やっと本気になるのか、って思う。右太股叩き。無音のトリオ、ベースの音。
最後はしっとり静かにおだやかに。流れる歌、あなたの顔を/your face・・・。
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