こぐれ日録 KOGURE Diary 2002.2



121)2/25〜2/28

2/25(月)

何だか、今日が休日の美術館やホールなどの人と同じ感じのオフな月曜日。この日録をまとめて3日間分書いて、ぶらりとアメリカ村へ。ホワイトキューブギャラリーの松山賢全作品展をのぞき(今週はふうぞく個室)、となりのカンバッチ展のなかから、これはつけれそうだと思うバッチを7つ買った。

バッチを作っている人たちがいくつか展示即販売しているコーナーで、1個300円だから手軽に買える。私が買ったのは、hatano yoshiko「We love MUSIC」のシリーズ。白いベースにシンバルを叩いたりリコーダーを吹いたりする少年少女が可愛いもの。さっそくこれをつけて黒いジャケットを変身させてみよう。

アメリカ村は閉店するお店が多い。半額で売っていたコートを買う。この辺りでみんな着ているフリースがついている上着。静電気が怖いけれど。

ヘップホール。満員。新生そとばこまちの第1回公演。『シークレット・ライフ』第1部めぐる秘密生活編、19:06〜21:25。住宅街のカラオケボックス。すごく大勢の新人が出演(バテレンからころんだ尼とカラオケボックスのお客の2役)。時間も長い。

すでによく使われた素材がモザイクされている。隠れキリシタンとか辺鄙な村の近親愛とか。そこに虚無僧とサックス吹きといういまと過去を往復するハーメルンの笛吹伝説が使われる。かなりいま見るのは恥ずかしいような時代がかった演技もあった。ただ、ギャグで客席がわいていたし、こういう芝居が好きな人が多いということを知ることが出来る。

2/26(火)

10時に立命館大学経営学部3回生の二人の学生が研究室にやってきた。リクルート姿だったので、去年に衣笠でアートマネジメント論を受けていた同じ長谷川さんとはかなりイメージが変わっていた。長谷川さんはサービスマネジメント専攻で、彼女と一緒についてきた森永君はスポーツマネジメント専攻である。

いま、就職活動真っ盛りのふたりがアーツ(文化)マネジメントについて真剣に知りたいという。お母さんの個展をプロデュースしてあげたいと思う長谷川さんに、高校時代横浜フリューゲルスがらみでスポーツマネジメントを志した東京の森永君。

就職に迷ったら起業とかNPOとかも可能性はあるし、うちも共学で大学院をちょうど君たちに合わせて作ろうとしているんよ、とはあんまり露骨には宣伝しなかった。が、立命館大学の学生の積極性には感心する。北山クッキーの手みやげも忘れない配慮。学会についても非常に興味を示していて、二人の方から申込書を持って帰った。

大部屋の講義、マンモスのなかにおいて自分で納得できる生き方を見つけるためには、どんどん積極的に他大学の研究室の扉でもノックすることを先輩たちから受け継いでいるのだろうか。うちのように手取り足取りしているよりも、放任の方がよっぽどいいのじゃないかとも二人を見ていると思いそうになる。

でも、就職を考えたとき二人には立命館というブランドがある。自らにプライドや自信もあるだろう。こちらには何もない。そんなハンデを文化政策学部の学生はどうやって克服するのだろう。

実は二人は、一昨日の『好きなトコロで生きていく〜夢中を伝える〜演劇・ダンス・音楽系』に参加していたという。それも2番目に長谷川さんが質問したらしい。そういえば、研究室の前に立っていた長谷川さんを朝に見たときつい最近どこかで会ったなあと思ったのだった。一番始めに発言したおとなしい男性以外に実は発言者の顔も内容もほとんど忘れていることに気づく。ほんとに情けないことだ。

山陽新聞社の方から電話取材。岡山でもミュージカル専攻とか日本音楽コースとか出来ているが、こういうアーツマネジメントを含む新しい大学の動きをどう思うかという内容のもの。「識者」っていう柄でもないのだが、まあなんとか話す。

去年、AO入試でうちに来ることになっている生徒のリポートを読んでコメントを書く仕事が織田さんから回ってきた。3名の文章を読んでなかなかいい感じで自分の意見が書かれてあって嬉しかった。ラスキンに触れていたので、宮澤賢治の「羅須地人協会」の話に持っていったり(たまたま中沢新一の文庫本を読んでいたので)、ワークショップやさまざまな異文化の出会いについて、コメントを書いて入学課の中村さんに渡す。

教授会。卒業判定。留保のなかに知っている学生がいてびっくり。一方、めちゃくちゃ単位や資格をとっている昨年4月にお世話になったオリターさんの名前もあった。

2002年度の名目上の入学競争倍率は英語コミュニケーション学科の8倍を先頭に、うちの3.3倍のビリケツまであるが、それでも5倍は確保した模様だ。
ただ、2001年度のように、文化政策学部の定員130名のところを158名入るという数字にはならないだろうというのが事務局のベテランの読み。後期の合格者の入学比率がかなり低いからなのだそうだ。何はともかく明日は、文化政策の63名を含む後期試験だ。

劇団態変の金満里さんから私のこぐれ日記に配信した「マハラバ伝説」についてメールがあって、態変のホームページに載せてもいいか?という。もちろんオーケーである。そして、さらに「イマージュ」用に1500字でリライトして書いてほしいとも言われている。そのため大学にビデオが届いていた。

帰って夕食をとりながらビデオを観ていると(後半の赤ちゃんと胎児の関係が観劇だけではよく分からなかったのでその確認が主だった)、はなが帰ってきて食い入るように見ている。彼女は見たことがないのだが、すごく惹かれるという。固定ビデオなのでディテールも迫力もほとんど分からないように思うのだが、彼女には映像だけでも激しく共振するものがあるらしい。

2/27(水)

今日は後期試験の日。ジャケットにカンバッチをつけていると事務局長が怪訝そうな目で見る。編入の面接は2名。その前の小論文試験の出題文章は佐藤郁哉教授のもので難しかったようだ。でも、何とか読み解こうとしていた。

帰って、金満里さんからの宿題をする。“「もの語る」ということ〜劇団態変『マハラバ伝説』を観て”というタイトルにする。こぐれ日記を圧縮しながら、少し「物語り」について、特に言葉のない物語りはどこまで可能なのか、何があるといいのだろうか、ということを考えながら書いた。

2/28(木)

朝インターネットを見ると、金さんから文章の添削が来ていた。「最近」ということばが3つも出ているよ、と。こういう配慮が嬉しい。でも、物書きになるのならこういう初歩的なミスは恥ずかしいことかも知れないけどね。

9時半から採点。後期は前期よりも少ないのでゆっくりしている。「政治経済」がすぐに終わったので国語の手伝い。そのあと、大学の広報ペーパーの取材があるまで大学院のための調書を書いたり、2003年度に非常勤講師の依頼があった大学事務局へ概要の文章を作り送ったりする。

取材は楽しかった。載るのはかなり少ないものだろうが。
取材がほぼ終わったとき、朝日放送「探偵!ナイトスクープ」という番組の話が、取材をしていた高畑玲子さんの口から図らずも出た。私が自宅を「こぐれ芸術探偵事務所」と呼んでいるからのことだが、彼女のお気に入り番組なのだそうだ。

話題は全国各地の「アホ・バカ」表現へ。当時「探偵!ナイトスクープ」のプロデューサーだった(いまはどうかしらない)松本修という人の書いた『全国アホ・バカ分布考〜はるかななる言葉の旅路』(93.7、太田出版)をふとbook-offで買ったのだが、それが読み出すと本当に面白かったからだ。

さっそく富山や金沢の学生に「ダラ」(足らず系)、岡山の学生に「アンゴウ」のことを聞かなくてはいけない。青森や秋田の「ホンジナシ」、愛知の「タワケ」も確認しなくちゃ。

馬鹿と阿呆の語源が謎だというのも意外だった。評価の言葉、形容詞などが特に、都だった京都を中心に同心円的に何重ものわたって分布しているのを地図で見るのは面白くて仕方がない。馬鹿者がかつて京都でしゃべられていたというのも、「アホは関西、バカは関東」という固定観念があるだけにそれだけで新鮮だった。

この本のおもしろさは、放送番組を作る試行錯誤の課程が記されているところ。放送された後も、著者が方言研究者と交流したり、岩手県久慈市に行っていまの東北方言は古い都言葉だったという講演をする。一過性のイベントと同じ放送が多い中でこういう番組もあるんだなと感心した。

アルティへ。第23回Kyoto演劇フェスティバル〈公募公演プログラム・一般部門〉参加作品。文化芸術会館がいま改装中だから、臨時にアルティが公演会場になっている。それを活かして今日は客席の真ん中にグランドピアノがあって始まる前と後に生演奏があって、それはがんばっているなと思わせた。

FANTASY ADVENTURE『DOGS!〜ある犬達のコーラスライン〜』作・演出/中野圭子。ミュージカル。「キャッツ」のネタどり。保健所の檻から薬殺されるまでの1週間、新しいご主人が来ることを夢見る犬達の話。19:05〜20:15。終わるまで辛抱する。

いつもながら(といっても最近見たものといえば劇団とっても便利ぐらいでこれもしんどいものだった)、ミュージカルってなんだろうと考える。演技することだけでも、歌うことだけでも、踊ることだけでも大変だし奥が深い。それを中途半端にくっつけてお決まりの舞台に上げるのがミュージカルならば、それは劇団四季(こちらはそれなりに鍛えられているのだろうが)だけで十分なのだろうなあ。終わってから弾いているピアノの楽譜を見るとライオンキングメドレーだった。


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