こぐれ日録 KOGURE Diary 2002.6
6/28(金)
朝日新聞の朝日21関西スクエアさんから『私のレッドカード』というタイトルによるリレーエッセーの依頼があった。最近では中川幾郎さんが書いている(「失敗を前提とした組織文化を」)。さきからレッドカードを出された私としてはそれどころではないのだけれど、何か書かなくちゃいけない。
一番初めに頭に浮かんだのは「発信」ということば。それから文化振興基本法、成人式、リクルートスーツ。大学にいって、三題噺としてとりあえず綴ってみた(14字×60行)。でも、どうもぱっとしない。どうしよか。以下は自信なく結局ボツにした原稿:
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子どもからレッドカードを出された。だから自分が出すどころじゃないのだが、それでも出したいレッドカードを考えると、すぐに「文化芸術振興基本法、成人式、リクルートスーツ」が三題噺のように出てきた。
まずこの新しい法律は、文化についての国の後見的な発想をなくすために全面的に変更しなくちゃいけない。つまり、文化権が市民にあることを明確にし、市民の自由で多様な文化活動を基本にNPO法人や地域の自治体がそれを支える環境づくりを行う仕組みにする。そしてこの文化権を国が保障するという本当の「文化基本法」につくり変えるのだ。
そうすれば縦割り行政のモデルである文化庁補助金要綱的な基本施策条項(第三章)のほとんどは消える。振興政策を書くのなら、省庁的なわばり関係で抜けている観光や放送、そして衣食住という根幹の「生活文化」をざっくり取り込んで、国内外から「日本の文化政策ってこんなにちゃちいものなの?」と思われないようにできる。
成人式については、もうすぐほとんどのうちの学部生がそれを経験するので、ちょっとでも意味のある自治体事業になればいいのになあと思っているが、どうも改革の動きは鈍いようだ。成人式もまた、自分たち自身が成人になることの意味をかみしめ、どのようなプログラムを選択して魅力的な大人になるかを考え心に刻む通過儀礼という真の原点が忘れられている。
その環境づくりはお役所の担当者が発想するより、専門的なNPOや若者自身による方がいいに決まっている。選択できるセレモニーやサポートプログラムが多彩に用意され参加型であることが決め手だろう。
最後にリクルートスーツ。思い思いだったキャンパスでの服装が就職活動でみんな紺や灰色のスーツに化ける春。サラリーパーソン生活の始まりの儀式服であって、「就活」が実際は学生の成人式なのだろう。が、私がそうだった頃と変わってないのが可笑しすぎ。そんな画一的な「リクルートスーツはお断り」と言う企業に学生を送り込みたいものだと思っているが、さて。
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文化政策事例研究は少しずつ充実してきていて、今日のアトリエ劇研とアートコンプレックス1928の発表は、杉山準さんや小原啓渡さんはじめスタッフの熱い情熱が彼女たちの発表から伝わってきて、自然と学生たちから拍手が沸いてくる。
発表する山崎さんなんて、まるで霊媒師みたいで、こういうヒアリングの大切さを感じるし、ちょっときちんとしたレポートを作って学内に配ろうかしらとも思う(それとも学生学会にサイトを作ってアップする方が環境に優しくていいか)。
そうそう、この日録を見た静岡県立大学経営情報学部4年生の学生さんからメールが来ていて、ライブハウスの研究についてのレポートがあれば見せて欲しいということだった。うちはそんなしっかりしたものを要求していないけれど、どんなことをしているか、担当の学生にちょっとメールするように言っておく。
逆にその人の「ライブハウスの経営に関する研究」についてのリサーチプロポーザル(研究の概略)がとても興味深かったので、これからの卒業研究に向けての参考にするよう、みんなにも伝える。彼の概略を見ると、キーワードをあげて分かりやすくしているし、調査としても個別のインタビューのほかに全国のライブハウスを対象としたアンケートや出演者の傾向分析、ライブハウスに関する先行研究の分析などがあって私のこれからの指導の勉強にもなった。
そのあと、キャリアセンター主催で行われるシンポジウム(7/10)の打ち合わせ。なぜかコーディネーターをすることになっている。東山青少年活動センターの表美由紀さんに出てもらうことにしたが、彼女自身が出るのは慣れていなくてえらく困っていた(ぼくみたいに歳をとるとずうずうしくなるんだけれど)。
一緒に出演する東美佳さんと岡本武史さんという人とは初めて会った。どちらも株式会社リクルート出身。東さんは京都精華大学出身のデザイナーで、岡本さんはトラバーユとかビーイングとかをやっていたらしくて、昔は吉田拓郎とバンドをやっていたという。コンサルタントの資格を持っているのだと言っていた。
そのあと夜に京都橘高校で連合組合の打ち合わせがあり(ダンスボックスごめんなさい、いけませんでした)、帰るとはなが歌をうたっていた。明日のライブの曲順についてちょっと一緒に考えてみる。7月はすごい量のライブスケジュールになっているはな。大丈夫かなあ。
6/29(土)
朝、朝日新聞の木曜日夕刊「夢」という紙面に出る予定の「私のレッドカード」を書き直す。昨日に書いたものとまったく違うものになった。
まず、アーツレビューするということは作品や作者にレッドカードを出すことでもあるという書き出しで、その芸術批評家の判断にレッドカードが出される可能性があることを、批評する者はいつも覚悟すべきである。しかしながら、マイナーなアーツをそれでもレビューすることの大切さを訴えるものにしようと書いてみた。
そのあと、OBP(大阪ビジネスパーク)に出かけ、10時過ぎから、大阪市の山崎文化振興課長や乾芸術創造館館長らと、文化振興懇話会やさまざまな事業体制の位置づけのすり合わせをする。キーポイントとなる事業評価の審査会を巡る人選をしたが、その人たちが承認していただければ関西では最高の組み合わせになりそうで、うまくいくことを願うばかり。
その間もOBPのツインタワー4階、ホール21では「関西学生アートマネジメント会議」の準備が行われていた。学生スタッフが20数名ほどいててきぱきやっている(当日パンフの大学名が「橘女子大学」となっていたのはご愛敬)。この1年での成長は目覚ましいものがあった。
初めの挨拶をするために松本さんにJAM Westのメンバー数を聞くと幽霊会員を除外したあとの数字でも70名以上はいるということ。もうどんな人が入っているか彼でもきちんとはつかめないという。
会議の合間にビデオでインタビューしたり(ぼくも感想を言わされたりした)、パソコンで映像を映すレクチャー方法もぼくらなんかよりもずっとハイテクで、うちの川上牧世さんも先輩たちに混じって発表姿はちゃんと様になっていた、ガチガチだったが。
客席には東京からも2名の学生が参加していたし、鳥取県智頭町役場生涯学習課河村係長の姿もあった。
会議は、15分ずつの事例報告が5大学まずあったのだが、3分前にかねが鳴るなどえらく厳格なもので、そのあとに会場からいただいた紙での質問に答えるコーナーがあり(会場から直接にも質問がでた)、最後に講評(これは松本さんとの軽いトークショーにした)が控えていた。13時5分から17時5分までのこの長丁場も無事に終了して、実にほっとする。
事例報告のタイトルと発表者は以下の通り。
1)京都大学吹奏楽団「リクエストコンサート報告」(京大工学部放射性廃棄物専攻/斉木大)、2)「アジア学生写真キャンプ-順天2001」参加報告(大阪芸術大学写真学科戸塚康二/別宮沙織)、3)アーツマネジメント入門ゼミでの体験〜実践的学習現場から〜(京都橘女子大学文化政策学部/川上牧世)、4)OBPアーツプロジェクト参加報告(大阪教育大学大学院美術教育専攻/竹内潤)、5)「公共ホールにおける市民参加状況」調査〜神大アートマネジメント研究会の取り組み〜(神戸大学大学院総合人間科学研究科/畔柳千尋)。
最後の挨拶/講評トークで、久しぶりに「アーツは水」という比喩を使って話してみたら、なかなかにイマジネーションが沸くことに気づく(昔アーツは月なんてやっていたこともあった)。
生物が多様に生息する渚の有り様が、アーツと社会の接点としてのメインの比喩なのだが、それ以外にも、渇きを癒したり溺れたりと水と人間との関係は限りない。手で掬い容器に入れまたあふれ出す。鏡にもなるし様々なものを溶かす。そういえばアサヒビールのテーマも水だった。今日も飲み過ぎたが、まあ水はいろいろと形を変えて私たちに現れては消えていく。
交流会の途中で抜け出して、ネガポジへ。京阪電車の中で、アーツセンターを芸術の菜園+菜館になぞらえて話していたことも思い出す(これもスローフードにからめて新たにつながる話なのでまた使うかも知れない)。
はなはここで初めてライブをする。ごまのはえさんはじめ、この冬に、はなの歌をフィーチャーしていただくニットキャップシアターの面々がすでに来ていた。昨日はなと二人で曲順を考えていた。初めての登場なので色々なはなの声を紹介するプログラムにしようねということで10曲を選ぶ。43分かかった(40分が持ち時間)のは、珍しく深夜の線路歩き体験をMCしたからだろう。
新曲の「穴があいていた」(「ある日あの時のあの頃のお話」ではじめ「あわ」ときての3曲目。お分かりのように出始めは「あ」から始まるタイトル+歌い出しにしたのだ)は少し大人になったはなで、7月に彼女の前座をさせてもらう青木マリの匂いを少し漂わせて始めている。
「るのうみ」(上田假奈代さんの詩)を入れて、次はタイトルだけだが、「か」三連ちゃん(「風に祈りをこめて」「蚊」「風花」)。「風花」の作詞はダンスグループピースビーンズによるもの。アカペラで、この前のダンス公演で使われたものだからこれも新しい曲。
終わりの3曲はしみじみと歌い込むものとして、「まぼろし」「涙出る人」「川沿いの灯」を用意しておく。さき作詞の曲(ある日・・と涙出る人)が2つとも登場したことになる。そういえば、はなの携帯に少し元気になったさきの新しい詩が届いていた。作曲できればいいのだけれど。
はなのあと、MC長く短いフォークを唄う(高田渡みたいな)彰雄という着流しの人と背の高い美穂蘭という人が出た。二人ともはなと同じくアコースティックギターによる生の弾き語り。
(岐阜から来たという)彰男さんの顔をゆがめて歌い語るトークはお腹を抱えて笑うばかり。校歌(2番以降を作らなくちゃいけないけれど)、洟垂れ少女、不動心は特に面白かった。
美穂蘭さんは日向の出身で方言を表に出したしゃべり口が独特。顔は水前寺清子に少し似ている。ストリートで鍛えられた大きな体と大きな声だ。圧巻は「現場ワルツ」で、これは工事現場のアルバイト経験がなくては作れないコミカルな曲だった。ほんとに造っては去る現場ワルツ、町から町の現場ワルツだね。
6/30(日)
週末は忙しいかったのでやっと今日2つのお芝居を見た。見ているうちに「演劇におけるプロフェッショナルとアマチュア」ということについて考えさせられてしまった。
アイホールにて見たマチネは、これから片づけをして岐阜に戻る劇団ジャブジャブサーキットの新作『しるくさんど』(第37回公演)だった。
彼ら彼女らは、お芝居専業で生活の糧をすべてまかなっていないけれど、演劇することが「仕事」であることに充分自覚的であるからプロフェッショナルと呼べる集団である。ただ、作・演出のはせひろいちさんだけは演劇の比重が高くて第1種兼業か専業演劇家に近いかも知れない。
一方、ソワレで京大西部講堂において見たのは、学生たちによる演劇公演企画『全地蔵洗濯機』(脚本・演出・音響/北島淳)という1時間半ほどのお芝居だった。
(以下プロアマ論議から始まる詳細についは、アーツ・カレンダー「こぐれ日記360、361」をみてね)
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