こぐれ日録 KOGURE Diary 2002.9
9/1(日)
先月から「こぐれ日録」の文体を「であります」調にしました。柳宗悦が青少年のために書いた「手仕事の日本」の影響なんです。ただ、冗長になることとか、すぱっとリズミカルに畳みかけることが難しいという問題点も分かりました。そこでこれは8/1の詩のワークショップの影響で「日録ソネット」という「限界芸術的」文学をも織り込んだんですけれど、さていかがだったでしょうか。
さてまたぼちぼち後期の講義も始まりますので、ライトで気軽をモットーに無理しないでこの日録を続けていきたいと思います。
何かありましたら、kogure@tachibana-u.ac.jpなどへご意見ご感想をいただければと思います。「こぐれ日記」も含めて、特に事実関係が間違っているという時はご連絡ください。気をつけて自分で発見すると鈴木さんに頼んで訂正してもらっていますが、単純ミスや思い違いなどがどうしても見つかるかも知れませんので。
生前契約という自立自助型の社会保障システムをNPO法人の設立(NPO法人りすシステム、NPO法人日本生前契約等決済機構)によって進めている人の本を読みました。
松島如戒『死ぬ前に決めておくこと〜葬儀・お墓と生前契約』岩波アクティブ新書20、2002.3。遺言などについての公正証書の大切さや死者の権利という考え方には新鮮な驚きと発見がいっぱい。ペットの始末や形見分け、焼骨の六価クロム汚染問題など従来の価値観では処理できない数多くの文化問題が発見できました。
葬儀(自分らしく死んだことを知らせる方法)と墓標(死後のアイデンティティづくり→生前の生きがい)という、アーツマネジメントに隣接する人生マネジメント(コンサルティング)の重要なアイテムをぼちぼちと考えるために役立ったのは、もちろんです。
京都で見た2つのステージはどちらもずしりと重いものでした。一方はプロに支えられた演劇ビギナーたちの発表、他方は東京で様々な展開を見せている生きのいい、でも切ないほど生きるのが大変な時代を感じさせるグループです。
ウイングス京都イベントホール、13:05〜14:28、演劇ビギナーズユニット2002“海蛍”公演『神田川の妻』作:坂手洋二、演出:藤原大介、脚色/演出補:山口吉右衛門。出演した浦浜さんがくるくる坊主の飴坊だったのでたまげました(彼女を見るといまだにダンスの公演前にすでにパンを食べていたときのことを思い出します)。
うちの安藤さんがタイプライターを探していたなとか(いままでの「神田川の妻」では生徒数だけタイプライターがあったけれど、今回は1台を大切に使用していた)、この発表が終わるといつも夏が終わるよなあとか、結構感慨が多く沸き立つ公演でした。
正直、演技はもちろん燐光群みたいにはならないのですが、逆に初々しい台詞が逆に素直に原作の骨が見え、ちょっと心にジーンとなって目眩がしそうになったところがありました。20年数年前にはまだ誕生していなかった若者たちとは違う感情でしょうが。
ART COMPLEX 1928ではニブロールの『コーヒー』を観ました。
15:37〜16:36。振付:矢内原美邦、服飾デザイナー/アートディレクター:矢内原充志、制作/企画マン:伊藤剛、映像ディレクター:高橋啓祐、照明ディレクター:滝之入海、建築家/インテリアデザイナー(舞台美術):久野啓太郎、音楽ディレクター:加藤由紀(岩田智夏子/上條智史)。
売っていたTシャツを買った、羊か山羊だった、案内の女性にぼくの授業取ってましたと言われた、映像が特に心に切なかった。昔ダムタイプと比較したけど、今日は瞼の裏側にピナバウシュのソロが重なった、つじつまが変に合わないものが多いのところが好き、終わってからの挨拶のにこやかさが好き。
【日録ソネット*14 20020901 シャボン玉の人影も落ちる少女も】
鳥たちも影絵になってホールを横切る白い丸い壁が空の反転になって体
が宙に浮いてくる音楽の接続のジャンル的電圧差は大きくてそこに退屈
のたの字も生じさせないダンスは激しく暴力的にしかつながれない率直
な感情は適当な距離を失ったままニブロールアバウトストリートになり
背中にジャケットであることダンスなことを朗らかに主張している昼下がり
ミルクをこぼす女の子のテーブルに白い液体が広がって誰も何もいわないので
そこには街がただただフレームで重なり続いているけれど住んでいるリビング
と街のなかとはテレビのキャラクター人形よりもずっと離れたままになっている
コーヒーは銀色の無機質のコップに入って持ってこられるが4人の輪に
どうしても一人は仲間はずれにしなくてはいけない決まりなのでそのコ
ップは割れてはいけないその男も女も熱いコーヒーが流れても壊れてし
まってはならない切れても切れてもサイコロのようにみんなの姿は立方
体に組み合わされたままだから ただ転がって五面だけが見えてもまた
転がれば出てくるそんなサイコロ遊びに過ぎないクマのプーさんなのだ。
9/2(月)
今日は、リニューアルした「一心寺シアター倶楽(くら)」を見に行こうと、天王寺区に出かけました。四天王寺前夕陽ヶ丘駅下車。四天王寺さんでは陶器市があるんだなあと思いつつ、一心寺の方へ右折します。
第99回一心寺門前浪曲寄席。13:02〜14:28。一心寺シアターが工事中のときは一心寺シアターPART2で行われていたものです。従来から月の平日13時から3日連続して行われます。
大人2000円、学生1000円。平日の昼間ということになれば、どうしても中年以下の若い人の姿はなかなか見ることができないようではありますが。
一方、劇場の方ですが、舞台の間口約7間(12.6m)、奥行き3間半〜5間(6.3〜10.8m)、天井高540cm(18尺)、収容人数278人程度の比較的オーソドックスな小屋です。客席は固定で椅子ではなく、段々になっていて座布団で座ります。後ろに凭れることは出来ませんが、高さ20cm、幅70cmなので窮屈な感じはないでしょう(今日は60名ぐらいだったので200名ぐらい入った芝居をまた見る必要がありますが)。
(詳細はアーツ・カレンダー「こぐれ日記383」をみてくださいね)
帰りにOBPに寄りました。6日から近畿大学がいよいよアーツプロジェクトを行います。芸術行脚というのがキャッチコピー(というかタイトル)だったと思います。今日も吹き抜けの広場で19時からダンスの練習があるのですが、その前から学生が集まって自主的に柔軟体操をしています。今年はグループに分けて学生が振付をそれぞれやっているので、同じ群舞でも昨年とは少し異なった姿が見ることが出来るかも知れません。碓井先生は一緒に重なるところを指導しているようです。
9/3(火)
ご無沙汰していた研究室へ。先週床のお掃除をしてもらっていたので、椅子とかをきれいに並べてあって、余計に机の上の汚れや棚の乱雑さが目立ちます。さまざまな事務処理。阪本さんにiBookのプロジェクターへのつなぎ方やプリンタードライバーの取り方を教えてもらってちょっと安心です。
大学院文化政策学研究科の準備も本格化しつつあります。男女共学ということ(すでに文学部系の大学院ではそうなっているのですが)がなかなか伝わらないかも知れません。もうすぐ「現在設置申請中」ということでいろいろ広報をすることになります。今日は中谷さんに頼まれて、素敵なゲスト講義(ワークショップになるかも知れません)のために東京へ依頼メールをしたりしました。
1回生のリボンゼミの二人がやってきました。池上学部長が毎年出す夏休みの宿題の相談です。といっても、先方に質問票を渡したままそのあとどうしようかという感じで、これから。第1回目の提出日は9/1だったので、それには間に合うはずもなく、10/1までに何とか書こうとしているようです。1万字というものですが、うまく引用やまとめなどを工夫すると、役所などの公的機関はインターネットやパンフを発行していますから何とかなるとアドバイス。写真などを入れ込んだりコラージュしたりするといいよとも話しておきました。
9/4(水)
ふくおひろし『デスマッチ議員の遺書』インパクト出版会、2001.12.10第1刷発行、1700円+税。
この本を読んでいて18年前の徳島市議会のことを思い出していました。市の財政部長の2年目になって、市長選、県知事選の関係でとても政治的な動乱を経験したのですが、ここ武蔵村山市も同じように大変なようです。
そのわけは、この本の著者、富久尾浩(ふくおひろし)議員という激しい正義の人のせいでもあるのですが、何もしない市長やそのあとに当選した若くてどうしようもない市長などを読んでいると、自治体については慣行をばさばさつぶして是正し公開することが本当に多いことがよく分かります。
大阪府門真市議会戸田久和議員(鮮烈市民派)がネクタイ着用を強制されて拒否しどんどん村八分がエスカレートした話は最近のようなので、こういう現象はきっと学生たちも社会文化論的に研究したら面白そうです。行政と政治という独特の文化的土壌も少しは分かるでしょう。
劇団態変の野外公演のお手伝いをはじめた2回生=TAM研の進藤さんが研究室に来ました。自発的にこうして取り組む学生が出てきたことはいいことだなあと感激します。本公演がちょうど大学が始まったばかりなのがちょっと残念です。TAM研の掲示板にアップしたりするように話しました。
今日は教授会が久しぶりにあり、京阪バスが増便になったり三条京阪からの直通も出るという嬉しいニュース。それに大学のない平日も運行されるというのはとても良いことです。集中講義がほんとに多いですから。
9/5(木)
川島伸子さんの集中講義(非営利組織論)のためにうちの学生たちがNPO(法人)を調べてペーパーを作っています。加古川市出身の学生が姫路市に去年出来たNPO法人を調べていたり、能楽部の学生がお能の団体を調べていたりしていて、眺めているとなかなかに面白いものです。
彼女たちがそれぞれ我が町など自分独自のデータを蓄積をしていけば、それぞれの講義の課題はゼロから出発しないでも、企業メセナならこの角度、非営利組織論ならこれ、文化行政の視点ならこうという形でレポートできる、そういうことが自然と分かってくるといいんですけれどね。
新しいアーツな場所を開拓しようと、誰から言われたのか失念しましたが、kyoto art map 2002にも載っていた『prinz』というギャラリーやカフェなどがある建物を探しに行きました。叡山電車で茶山駅下車、ちょっと線路づたいに南に下って京都造形芸術大学の方向へ。うろうろしましたが、すっと行けば駅から2分(と案内にあります)。一乗寺駅の惠文社とは歩いてどれぐらいの距離でしょうか、何とか散歩道になるかも知れません。prinzから京都造形芸術大学も近いのでいい感じで繋がっていますね。
カフェもできるガーデンがあってその前が駐車場(これはウェディングパーティをするときなどはどこかに車を置くのでしょう)。1階のカフェが広くて、中にCDのセレクトショップがあったり、デザイン古書や雑誌のライブラリー(ここには今度行ってそこでお茶してみよう)、それにギャラリーが入っています(インテリアにぴったしの加工された小さな写真)。
ここを、アーツカフェ、あるいはクリエイティブカフェ(文化喫茶っていうと昔あったようななかったような)というのでしょうか。白いiBookで作業したりしていると中身はたいしたことなくても結構さまになるし、ソファーが広くてらくちん。
穀物(オーガニック)コーヒーとか健康に気を使った飲み物、食べ物も多い。すぐにカフェ雑誌とかで人が多くなるかも。五条の有名なカフェ(efish)と同じデザイン的つながりがあるそうで、見覚えのあるガラスの吊り物がぶら下がっています。
2階には「apertotel」という2つの部屋があり、どういう人が使うのでしょう。そして、レンタルギャラリーがあって、そんなに大きくなく1週間5万円ということ。
いまは、岩本庄司という人の写真展『知らない国』。漢詩が緑の壁にチョークで書かれていて消したあとがあったりするのが面白く、それ以外は白い壁に中国のモノクローム風景です。奥行きのあるシンメトリーな構図が多くて、ずっと奥に寺があったりします。だからそうでなく細い昔からの家の細道の構図が新鮮だったりして。
屋上は行けなかったけれどバラ園らしい。これは本当にパーティの楽しさなのでしょう。ここで学生たちのお茶するのがいいでしょうね。
帰ってNHK衛星第2で黒沢明監督の『悪い奴ほどよく眠る』(1960年)を途中(結婚式のところだから始まったところか)から最後まで見てしまいました。なかなかお風呂に入れない面白さ。初めは結婚式や葬式の研究に役立つなと見ていたんですが。
未開発土地公団とかいう公団の副総裁をやっていた森雅之という役者が渋くて、最後にこの副総裁が電話の向こうの人(もっとえらい人=与党総裁っていうことでしょうか)に昼間なのにお休みなさいと言い間違います。そこで、弁解して一睡もできなかったものですからと相手に言うところで、電話の向こうのよく眠るもっと悪い奴を浮き彫りにするというところが多分面白いところなのでしょう。
それ以外にも役所人間の仕事以外の生きがいっていうことを考えさせられる映画でもあります。若い香川京子が副総裁に愛された足の悪い娘役。障碍者の描き方(無垢性の強調)を考えるのはメディアリテラシーの基本でしょうが、この映画ではどう分析されるんでしょうか。気になるところでもあります。
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