こぐれ日録 KOGURE Diary 2002.9



182) 9/27〜9/29

9/27(金)

少し憂鬱な週末の始まり。忘れることの多い会議。深く考えず思いつきで提案される市民ミュージカルの不意打ちに、思わず真剣に反応してしまう自分(場違いだったに違いない、反省)。熱心な他学部生とやってこないゼミ生のギャップ。

ウィングフィールドの入り口が2階の居酒屋の看板や自転車で狭くなっていた。降ったりやんだりの雨。ジャブジャブサーキットは、誠実でちょっと寂しくて暖かいお芝居をいつも岐阜から持ってきてくれる。芝居後乾杯に交じらせてもらった。咲田とばこさんにiBOOKを見せびらかせるガキなぼく。

ウィングフィールド10周年記念企画公演。大阪のど真ん中にいまもちゃんと踏みとどまる小劇場があることを忘れてはいけない。劇団ジャブジャブサーキット「サワ氏の仕業シリーズ4」【ベンチ日和】19:32〜20:51。3つの短編からなる。30分弱のお芝居が、白いベンチという共通項でつながれる。

構成・演出:はせひろいち。宮崎の藤井貴里彦『百円野菜』を「ステキな歯ぐき」(くらもちひろゆき)なはせひろいちが観たときにこれを再演したい!と思ったのがきっかけだという。そこで、盛岡のくらもちひろゆきと兵庫の芳崎洋子に声をかけた。ベンチを使うという条件で。

「地方在住劇作家シリーズ」の立ち上げである(7〜8年前、宮崎でのステージラボの終了から乗り継ぎで慌てて盛岡劇場にやってきたぼくを、くらもちひろゆきが初めて見たとき、何と落ち着きのない人なのだろうと思ったという)。関西にいると東京以外は地方という言い方に触れることが皆無のせいもあり、違和感がどんどん強くなっているけれど、関西も地方だとたまに考えることもまた大切だと思ったりもする。
(内容はアーツ・カレンダー「こぐれ日記388」をみてね)

今日メールを開いていたら青森の立木祥一郎さん(奈良美智展、ごくろうさま)から久しぶりにメールが来ていて(大学のアドレスに来たのはどうしてだろう)、あの青森県文化課にいた熱心な白取さんが急死したという。白取さんは地域演劇のことについても実によくやってもらっていただけに残念だし信じられない。黙祷。

他人事ではないが、アーツ・マネジメントをしている人たちのための健康管理はとても大切なアイテムであると痛感。

9/28(土)

OBPで2回目の「アートマネジメント体験セミナー〜まちと呼吸するアーツを求めて」。浪花グランドロマンを主宰する野外演劇の良識派、浦部喜行さんから、テント公演の醍醐味について話を聞く。20名ほど。以下浦部さんのお話の要点:

・・東京は新左翼など過激派と思われている人たちの集会をさせないために演劇も公園から閉め出されてきたが、関西は新左翼の活動が下火に早くなったこともあったのでその分まだ規制が緩やかであった。このことが客観的にみると、関西において野外演劇がさかんになった理由と言える。

何はともあれ大阪市文化振興課も関西の野外演劇が地域アイデンティティと認めつつあるのは嬉しい。野外演劇ではルールやマニュアルは自分たちで作る。それも事後処理的に出来てくるものである。それに劇団ごと、テントごとで異なるので共通のマニュアルにすることが難しい。

大変なのは雨だったがこれは傾斜を工夫して解決してきた。でも、突風はどうしようもない。野外劇の楽しみはふんだんに使える「火と水」。自分はラストシーンをまず考えてお芝居を創り出す。いまはホールでも低温で発火する火があったりして冷や水の使用が随分しやすくなっているが屋内では経費はかなりかかる。その点野外は便利だ。非常口も至るところにあるわけでだし。

遊劇体のキタモトマサヤさんが、野外劇は秘密基地を作る感覚と近いと言っていた。仲間で作った基地に地図を渡してこっそりと自分たちの友だちを招く感覚がある。思いがけないところに出現させるワクワク感。

それと演劇関係者でない人たちとのつき合い。それは苦情への対応ということが多いが、怒りに来た自治会長が気に入ってくれて20名ほど町内会の人たちを連れてきてくれたこともある。

大阪城でテントを作ることで、ここにいま1000名ほどの野宿者が居住していることが分かった。ここにも自治組織があって、数ヶ月前にホームレスになった人などは普通の住宅に住んでいて怒りに来る人とまるで同じ言い方で不況も深まっていることが分かったりする(以前の野宿者はもっと大らかに同じ狢の私たちとつき合ってくれた)・・
このように1時間ほど、淡々とでもとても興味深い実体験に基づくお話を浦部さんから伺った。

そのあとすぐにOBPから5分ほど歩いて、浦部さんらが作った大阪城公園のテントを実際に見学。塚本修(舞台監督)さん、岸田緑(照明)さん、秘魔神(音響)さんらが最終チェックをしているテント内にも特別に案内してもらった。どきどきする。魔法の花が下手の客席の壁にあった。座席の座布団置きが進んでいる。

テントの奥では大阪城を背後にして、これから本番を向かえる小泉ゆうすけさんと北角和恵さんが動きをチェックしている。いつものカラータイツだけではなくて舞台衣装を付けるんだな。期待感がますます膨らむ。

銀色のテントの横には小さな着替えのテントとまかないのテントがある。弁当をいつも買っていると大赤字になるので、まかないは必須。これがよかったら役者はじめ制作やスタッフを含めてみんなハッピーになる。そういえば、うちの和田さんや大川さんも直前に手伝いに来たのだがずっと料理していたと言っていたなあ。また大学でその重要さを話してあげよう。ここは近くにお店がないので買い出しが大変だったという。

今日は劇団態変の公演の楽日である。初日が雨。いまは上がっている。テントを作るとここに数名が寝泊まりするという。若い連中の何気ないいたずらが怖いからだ。集団で襲われる危険はないではないが、まあ向こうも怖いと思ってくれているようだ。

観劇後、劇団態変の制作、川喜多綾子さんによると、昨夜は黒子をやっていたうちの(=京都橘女子大学文化政策学部2回生)進藤綾子さんもテントで寝たらしい。彼女は初めのうち大人しくて大丈夫かなあと思っていたがどんどん積極的になっていったと川喜多さんが教えてくれる。嬉しい。

文化政策学部の学生たちがやっと指示されないで歩みだしている感じがあって、公演後とてもハッピーになる。もちろん、公演自体のテンポのよさと明朗な祝祭性にも心強く打たれたわけではあるけれど。

特設テントは満員である。階段に座ってもらっても無理で立ち見である。遊劇体の人たちは天井桟敷を作っていた。
劇団態変『夏至夜夢〜まなつのよのゆめ』。原作:シェークスピア、作演出:金満里。金満里はタイターニアで、特別出演の4名の演劇家族のうちのロバの仮面を被った男の人と抱き合い転がっていた。

19:37〜21:19(アンコールも入れて)。前作の『マハラバ伝説』とともにストーリーが明確にある公演であるけれど、多くの人は原作がシェークスピアだからだいたいの筋書きが頭に入っているという強みがある。それに結婚からの破局が描かれた前回とは正反対に、今度はコミカルな恋のハッピーエンドなので、ラストは結婚行進曲が流れることを予測できる気楽さもある。

以下の内容とこの日のことはアーツ・カレンダー「こぐれ日記389、390」でリライトして配信(登録は、http://www.arts-calendar.co.jp/Report.html)する予定です。

9/29(日)

昨日の劇団態変のステージと対極的でありながら、ストーリーがみんなよく知っているシンデレラであることから、「ダンス(Ca Ballet)に戸惑うことがない」という点ではとても「夏至夜夢」と共有するものがあると思ったステージを観た。

具体的には、京都市東山青少年活動センター、プロデュースユニットCa Ballet(代表やすなみずほ)の「シンデレラ」である。客席を占める人たちのなかには、バレエをやっている小さな子どもも多い。また、年輩の男性たちがグループでやってきたのがとても印象的な光景でもあった。満席。劇団衛星の橋本さんやファックジャパンさんが誘導している。

14:35〜15:25。構成・演出・振付:Shige-yan(北村成美)。ミストレス:水野宏子、三林かおる。
「ミストレス」という役割があるのはバレエならではであり、この企画はバレリーナたちがより新しい表現に出逢うためのものであるとともに、バレエをより広く親しみのあるものへと開放しようという趣旨もあって、そういう面では「バレエのアウトリーチ」と考えることができるもの。

音楽はプロコフィエフのバレエ曲をだいたい使っていて少し違う音も入っているようだ。影絵が出てくるのがi.d.のしげやんならでは。総勢6名だけで王子様や使いの家来、舞踏会での紳士たちをする(男の時は黒子みたいな黒いベールで顔は覆われる)ので、なかなかにハードだろうと想像する。バックの福森さんと同じく軽やかに踊りつつも。

シンデレラ(木戸麻矢)は、みすぼらしい衣装のときにはシューズを履かないのでそれもバレエとしては特別なのだろうし、面白い振付や床に転がる転回などもあって、バレエ的な綺麗さだけではない面白さや意外感のあるアクションも少し交じっている。

かわいく楽しい動きのねずみ役は水野宏子。耳がミッキーマウスだ。シンデレラの実母に三林かおる、彼女はこの前の青山円形劇場でしげやんの影の人をしていて翌日ワークショップでもしげやんと一緒に指導していた人。

11月に4校で学校公演が行われる予定。とても素敵な学校へのバレエ=ダンスプレゼントなのだが、児童数の少ない学校では予算が足りないということで、帰りにカンパの箱が出ていた。しげやんによると、小学校公演では50分では長すぎるので少し時間を短縮するのが課題だということ。

Ca Balletってうちの大学にも公演しに来て欲しいなと漠然と思う。タフ3(漠然と次は伝統芸術を考えていたのでバレエはちょうどいいし)として?。あるいは専門ゼミ演習として?。もっと言えば、しげやんなどが教養科目の講師になるとどんなに良いだろうな。さらに「詩業論」を假奈代さんにしてもらば文学部の学生たちも充分に惹きつけられるしなあ。

招待状の抽選があって年輩の男性がもらっていた。お花のプレゼント(全員ではなかったようだけれど)。帰りと五条坂をぶらぶら歩きながら、タウンウォッチング。いま読んでいる木下直之『ハリボテの町〈通勤篇〉』(朝日文庫、99.4)の影響かも知れない。
五建ういろに寄り、さらに水徳の胡麻入りと湯葉入りちりめんじゃこを買って帰った。


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