こぐれ日録 KOGURE Diary 2002.9
9/6(金)
久しぶりにびわ湖ホールへ。あいにくの雨模様の天気。でも、舞妓さんがいたりする賑やかな中ホールでした。今日は(社)全国公立施設文化協会主催西コース『松竹大歌舞伎〜十代目板東三津五郎襲名披露』なのです。13:00〜15:34。
初めは、梶原景時(中村富十郎)が主演の「梶原平三誉石切〜鶴ヶ岡八幡社頭の場」。浄瑠璃は後から出た大きな体格の人が聞かせてくれます。お話は源平物で、自分の体を刀で試し切りにされても、源氏に使えようとする六郎太夫と娘梢(澤村宗之助)を巡る話。
休憩の後口上。丁寧語の勉強になります。また休憩のあと、「喜撰〜六歌仙容彩から」。久しぶりに歌舞伎の踊りにおける醍醐味を堪能しました。滑稽なものとしては一番面白かったなあ。
八十助改め板東三津五郎の喜撰法師(お坊さん)が、小野小町的美人(茶汲女、祇園のお梶=中村芝雀)にふらふらする様子を踊っています。江戸時代にはやった「ちょぼくれ」(俗踊)や女の身ぶりを誇張した「悪身(わりみ)」を見せるものだそうです。
このあと、京橋へ。OBPアーツプロジェクト、近畿大学の始まりです。美術展示は今日から20日まで。ダンスは今日が、2回公演したあと、後日2度ワークショップをしてもらいます。17時半と18時半の2度のダンス公演「コンクリート組曲」(構成・演出:碓井節子)を両方観て、初めは1階で、2回目は2階の反対側から観たのですが、色々と発見もあり楽しく面白かったです。
学生が7つのグループに分かれて作ったものを構成しているので、数十人(プログラムで数えると57名ほど)がフロアーを埋め尽くす群舞特有の息苦しさ(下手をすると動員型怖さ)がなかった点が一番よかった点で、それ以外にもところどころはっとする振付の新しさもありました。
美術の方は、エレベーターの横のスペースがきっと多くの人の眼を引くと思います。美術、美術した作品よりもキャラクターやデザイングッズで育った環境を素直に写しているものが多いようでした。20時から近大主催のパーティがあり、松下電器、松下興産の責任者から挨拶があったりしました。
残念だったのは、京都橘女子大学文化政策学部の学生が2名ほどしか来ていなかったこと、それに1回生の学生を見つけることすら出来なかったことです。
9/7(土)
今日は芳江と一緒に京都芸術センターのフリースペースへ。土曜日になるとワークショップも多く(立命館大の青木さんなどは2つのワークショップを受けるという)、庭ではテニスをする住人もいてここは様々な人たちの交差点になっています。
JADE2002アジアン・ネクスト・ウェーブ『京都レジデンシークリエイティブプロジェクト』ワーク・イン・プログレス公演、平成14年度文化庁国際芸術支援事業。カタカナ文字のオンパレードで、特に「ワーク・イン・プログレス」(いまだ成長過程にある作品)という言葉は講義では絶対に説明しなくちゃいけない言葉でしょうね。
同じアジアといえどかなり文化の違う舞踊家が2週間の共同制作期間だけでコラボレーションとしては足りるはずはないのですが、出会うことで一緒に作ることの難しさ、もっと言えばダンスというアーツのコミュニケーションの大変さとやりがいを感じることは多いのだろうと観ていて思いました。
初めはムギヨノ・カシド(インドネシア) vs 砂連尾理「to-gether」16:11〜34。次に「iner missions」ダニエル・ユン(香港) vs 北村成美、16:45〜17:09。(内容は「こぐれ日記384」に歌舞伎やダンスの時間と一緒に少し紹介します。)
休憩のあと、ディスカッシ?ンがあるのですが、芳江と買い物をすることにしていたので、退席させていただきました。お客さんの顔ぶれは関西ダンス界のコアメンバーと言った感じ。たまたま城陽市で演劇のワークショップをしている横山一真さんが近くに座っていて、彼からうちの学生が熱心に受けていると教えてもらったりしました。
9/8(日)
久しぶりにJAM West例会。OBP。神戸大学の藤野一夫さんに『ドイツの文化政策−劇場制度を軸に−』をお話ししてもらい、途中、神戸大大学院の畔柳さんから彼女が行ってきた「バイロイト青年音楽祭」の報告も聞きました。
ドイツが州や市町村による自治体芸術支援を中心とした文化政策をしていることは結構みんな知っていますが、その背後にある歴史や「美学的思考」などを掘り下げて話していただいて為になりました。時間が少なすぎたので、また来年藤野さんが社会文化運動の研究などのためにドイツに行ったあとにでも続きなどは教えてもらうことになりました。
日本語では劇場の文芸部員/チーフとか訳されることのある「ドラマトゥルク」の重要な役割、そして、そのドラマトゥルクを保障する言葉としての「ドラマトゥルギー」(「作劇法」や比喩的に方法論とという意味合いでよくカタカナ語として使われましたが、この使用法であえて訳せば「劇場専門スタッフ制度」)が、200年のドイツにおける劇場史とともにあったことなどは、芸術監督と経営監督制度を中心に議論していた劇場スタッフ論をより充実する知見だと思います。
また、従来は貴族中心の招待客しか入れなかった宮廷劇場の変革により、入場料を払えば誰でもコンサートを鑑賞できる仕組みを作ることなどによって、ドイツの市民社会が生まれていったという研究は、文化ホールが自立する市民を育む場になるにはどうすればいいのかという今日的な日本の課題と重なります。もちろん19世紀のドイツと同じ演目をいまやっていても仕方がないということも合わせて考えるべきですが。
京橋から天王寺、そこから南へ数分歩き、はじめてアベノロクソドンタに行きました。劇団キオの稽古場でもあります。路面電車が走っているあべの筋は自転車の往来も多くあんまり歩きやすい通りでもなくごちゃごちゃしたところです。一番安い個室マッサージ店とかもあります。
『ダンスの時間』〜クラシックからコンテンポラリーまで〜。プロデューサー=上念省三/サイトウマコト/中立公平(劇団キオの作演出の人)。これからシリーズで行われるようです。
14:05〜13:26。バレエは高橋愛美「白鳥の湖」、前野香代子「眠れる森の美女」のそれぞれの触り部分。数分ずつですが、こうしてかぶりつきで見上げるように観るのも初めてです。シューズの使い方とか間近で観るのはなかなかに面白いもの。
同じように森美香代「もう一つの花」も素足の動きが特によく見えました。それに直線のない有機的な腕の動きが目の前なので、水族館の水槽の中に首を突っ込んでいるような錯覚すら覚えました。
サイトウマコトは踊り終わった高橋愛美を人形のように椅子に座らせて「愛と誠」を構成。えぐい部分をいかにすっきりとさせつつ意外感も出していく、そういうお芝居的な仕掛けに挑戦しているようでした。
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