こぐれ日録 KOGURE Diary 2003.6



252.6/6〜6/8


6/6(金)

芸術文化鑑賞演習は、劇団八時半の役者で今月末の公演「棗の実」の原案者である東理子さんを招いて、ざっくばらんにトークをしてもらった。ぼくがあらかじめ質問を送ればよかったのに、そんな手順をきちんとしなかったためにかなり即興的な対談になった。

が、トークの前半は、本公演を鑑賞するためにどのような作られ方をしているのかについて東さんからきちんと誠実にお話ししてもらったので、きっと学生たちは、小劇場演劇を観劇するための準備として、十分に有益な情報が得られただろうと思う。今回は役者も作劇に参加する「エチュード」形式で作っていることや、(原案の兵庫西部弁だとうまく話す人とそうでない人に分かれるから)東北弁に変えたこと、そして、そのために映画「楢山節考」をみんなで見たことなど、当事者ならではの作劇風景が聴けてぼく自身もとても参考になった。

また、後半(少し時間がすくなかったが)は、東さんがどうして演劇を始めたのか、どんな思いで芝居づくりに関わっているのか?について、つまり彼女の生活などを含めて個人的な思いを含めてお話を聞いた。大学に入ってからサークル活動的にお芝居をはじめたことなど、なるほどと思ったことも多く(うちらの学生だってはじめることが出来るかも知れない)、もっと聞くべきことがあったなあとで反省する。

続いて2回生の事例研究。今日は一組だけの発表。ただし、ちょっとモチベーションが弱い二人組だったので、サンプルとしてこれからの発表の心構えをみんなで考えてもらう機会になったのではないかと思う。去年でだいたいのムードは分かるので、専門ゼミのような濃度をもともと期待していないから、心静かに授業する。残りの時間、基礎知識チェックの演劇と音楽をやってもらう。これもある刺激になればいいのだが。

終わってすぐに、CAP HOUSEへ。cap ART fair2003。「アートのお買い物」のオープニングパーティ。神戸市役所の人たちにもまたお会いする。前は、コーヒーカップとかマフラー(とてもアーティスティックだったが)なども売っていて、お手頃に買い物ができた(美術作品は死蔵してしまうので、うちでは宝の持ち腐れ的になりそうなのだ)のだけれど、買いたいものは数万円以上するし、今回はちょっとお手軽に買うというものではなかった。とりあえず、イチハラヒロコ「防水」傘と鳴海健二「ネガフィルム栞」だけは、家のお土産として購入しておく。

それでもたとえば、藤本由紀夫のサイコロオルゴール10万円は、もちろんぐぐっとくるものだから、自分のためそして授業教材として、思い切って買おうかどうしようかと迷いつつ、5階に設置されている彼の耳の延長椅子に腰掛けて、両耳でブーンという夕暮れ時の神戸の音を聴いていた。明後日は藤本さんも出展しているという銭湯プロジェクトも覗こうっと。

6/7(土)

雷を伴う雨はちょうど畑(とりあえず「スロー畑」)が出来たときだった。農のワークショップの始まり。五感で感じるスロースタイル〜縁側でつづるアーツ、前期の開始。15名の予定が一人キャンセルになった。

パーマカルチャーということばが今回はクローズアップされたために、京大大学院の工学系(情報システム)の研究室が教授ともども過半数の参加になって、午前中のトークの際、中年の二人の女性は心配そうだった。でも、実際に畑(一応「スロー畑」と仮称しておくと)に出ると、このお二人は実践的で、とても楽しく積極的にワークしていて、ほっとする。

あと、意外にも女性が少なかった(京大組が男性ばかりだからである)のだが、若い女性参加者たちも徐々に楽しそうになって(散水とか看板描きもやってもらったし)、はじめの試み〜ファシリテーターの布瀬真央さんもこういう長丁場のワークショップははじめてだったが〜なかなかに多くの成果があった。

とりわけ作業などの過程でのコミュニケーション(京大組もコミュニケーションとか共生を研究しているだけあって柔軟に対応していた)とか創発的なアイディア産出が嬉しかったし、それを加藤さんや小松さんが記録してくれているので、その記録ビデオや写真を見ながらいろいろなことを考えることができるだろうと思う。

専門ゼミ生たちの役割も、当日パンフが予想以上に評判が良く(納谷さんにも感激してもらった)、小鹿さんのアシスタントとして雑用もふくめてよく動いてくれたと思う。雑誌『ソトコト』の取材に来てくれたのが、沢田さん(前エルマガジン編集長)だったのにもびっくりする。きっと、用務員の長野さんが丹誠をこめて作っていた培養土のこととか器用仕事の数々など、彼女の視点で山のすそ野にある小さな女子大の魅力も含めて取材してくれただろうと、ぼくは安心している。(詳細はアーツ・カレンダー「こぐれ日記450」をみてね。)

6/8(日)

さきも今日の朝、京都みなみ会館に「過去のない男」を見に行った。ぼくは水曜日にリボンゼミとして出かけるので、それまでの辛抱。替わりに映画の基礎チェック問題を作っている。もちろん、アキ・カウリスマキも入れた。ほかにはアッバス・キアロスタミやヤン・シュワンクマイケル、ケン・ローチにエリック・ロメール・・とどんどん紹介したい監督は膨れるばかりだが、まあ、映画は自分で知識を入れることは容易いから、ぜひ自己開発してもらうことにしよう。外国よりも日本の映画監督をより知っておいて欲しいものだとも思う。

12時前、ゆるゆると、大阪市鶴見区のお風呂やさんに出かける。
現代美術のインスタレーションを見に行くのに、手拭いと石鹸、それに小さな垢擦りを持っていく。それだけでむしょうに嬉しくなる意外性である。こうでなくては日曜日ではない。

京橋から二駅目の放出。ハナテンという名前が可愛い。「ホウシュツ」と呼ぶなら市中からホウシュツされている可哀想な町のイメージになるけれど、ハナテンとそれが呼び交わされれば、放たれていく自由さがあるし、第一、読み方を知っていることがちょっと得をしたような気がする地名である。

ただ、高架になって殺風景な駅ではあって、改札を出て北口に降りたいのだが、そこは覆いがある階段なので、かなりの銭湯客(=美術見学者)が間違って南口を降り、30分以上も迷っていたりもしていた。ぼくは葉書があったので、間違うなくローソンの所を曲がって大阪市の公営住宅を眺めながら、めざす「日光温泉」の煙突を確認する。

(これは美術鑑賞をしたあと、入浴までの間にぶらぶら見たことだけれど)公営住宅内には児童の遊ぶ公園が点在していて、動物の座り台にかなりの小学生たちが座って午後の日曜日を過ごしている。

銭湯プロジェクト、場所は「日光温泉」という名称の銭湯である。1952年頃の創業。出品作家は、有地左右一+笹岡敬、井沢以佐子、岡晋司、金沢健一、日下部一司、倉貫徹、中西學、長尾浩幸、夏原晃子、西村知子、西村正幸、藤本由紀夫。

13時から15時半は、見学タイムで、番台には座っていないが、風呂屋の実質的番台者である室井絵里さんに500円を払って玄関で靴を脱ぎ、おしどり印の下手箱に閉まってそれぞれのドアへと向かう。・・(詳細はアーツ・カレンダー「こぐれ日記451」をみてみて。)


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