こぐれ日録 KOGURE Diary 2003.5
5/1(木)
メーデーへの参加は2回目。出発の二条城前へ。今年は京都橘高校は休みにしなかったので参加は大学だけだ。哀調がかった組合の歌がステージで歌われている、アコーディオン伴奏。ここでしか聴けない音楽である。
デモは限界芸術の例示の一つであり、パレードは冠婚葬祭の基本でもある。被り物とか横断幕とか、メッセージをいかに表現するかという点では応用芸術部門ともいえる。政治のためのアーツ、そこに「素人による」が付け加えられる。アマチュアの応用芸術はほとんど限界芸術であったり限界芸術に近似していたりする。
鶴見俊輔『限界芸術論』88頁(ちくま学芸文庫)では、「デモ」の芸術体系は、「演じる→見る、参加する」の行動の種類のなかの最後に書かれている。その他の限界芸術の例示は「祭、葬式、見合、会議、家族アルバム、記録映画、いろはカルタ、百人一首、双六、福引、宝船、門火、墓まいり」である。墓まいりを明日にする予定なので、その他の「芸術のレヴェル」も含めて、この「行動の種類」部門は実にご縁が深いことになる。
無邪気な遊びとしての限界芸術(親密圏芸術=メイトアーツ)だけでもなく、いろんなボーダーラインが結構あるわけだ。仕事歌もそうだし、冠婚葬祭のためのバンドというのも、目的は別にあったりする。神道流に言えば、客人(まろうど←まらびと←まれびと)としての神への祭祀。神まつりのためのマージナルアーツたちである。
お昼はがんこ寿司二条苑。角倉了以が高瀬川を開通した所のお屋敷。それが山県有朋のものとなり、いまは庶民的な(このお庭としてはとてもリーズナブルな)価格の食事の場所となる。それはそれでいいことだ(料理は何だか収拾のつかない感じの組み合わせだが)。
ビールを少し醒ますために三条河原町の「まんが広場」でバガボンドの続きを読む。ところが夢中になっているとあっと言う間に18時半を過ぎ、あわててアートコンプレックス1928へ。そういえばうちの大学にもラジオカフェ(コミュニティFM)の協力要請があっていて、6日に相談することになっている。専門ゼミ生が乗り気だといいけれどなあ。
ART COMPLEX1928主催ロングラン公演、電視游戯科学舘『牡丹燈篭』(総合プロデューサー:小原啓渡、製作総指揮:谷伸一、脚本・演出:国本浩康)。19時10分から。前半が80分、10分の休憩のあと60分。
芝居の始まる前のほの暗さ。これが結構大事な照度なのだろうと思う。そのためにうちの2回生(つい先日まで新入生歓迎公演で役者をしていた)の荒井美香さんが足元を照らして誘導している。Special Thanksに安藤きく(4回生)さんも上がっていて、京都橘女子大学の演劇スタッフ網も出来つつある。学内劇団スタッフとともに、小林さんや工藤さんらも入れて一度お茶会でもするか。
(詳細はアーツ・カレンダー「こぐれ日記442」をみてね)
5/2(金)
朝早く野田に行き、そこで母親に落ち合ってから姫路へ。お墓の整理が出来たので、墓石屋さんにお金を払ったり、院主さまにお経を上げてもらうためだ。いい天気。綺麗になったが(知らない人の墓を別のところに移してもらったし、古い墓石をまとめてもらった)、隣同士と同じ雰囲気になったことで、母親は、何だかお墓の長屋みたいになったねえとつぶやいていた。
それでも不動院内にある墓石群よりも寂れていて、国有地にある(小さな川と堀の近くなので国有なのだろうな)ぼくらの墓石たちにはどこかうらびれた味がある。でも、ずっと大丈夫なのかどうかは分からない。
帰りタクシーが拾えないこともあって、姫路文学館に行く。1991年、安藤忠雄の建築。中身の割には建築物がえらく豪勢で、ぐるぐると回らせられるのは、足が弱ってきたお袋にはしんどすぎる。でも車椅子には乗りたがらない(のは当たり前か)。最近(といっても10年以上前だが)の展示はだいたいこんな感じだ。
姫路の文学者で二人ともよく知っていたのは、椎名麟三で、あとはぼくなどは和辻哲郎は気になるところだし、有本芳水の「日本少年」はお袋には懐かしいもの。双六もあった。阿部知二も名前は知っているが読んだ記憶がない。
アトリエ劇研のダンスにも行こうかなあと思っていたが、昨日今日と、「演じる」限界芸術に参加したので少し草臥れていたのでそのまま家に帰る。アマゾンで買っておいたCD、大熊亘『シカラムータ』をかけて、限界芸術的(冠婚葬祭系ブラス)バンドのことを考えつつビールを飲む。
5/3(土)
この期間は、衣替えの時期で、長袖から半袖へとどう移行するのかが難しい。予報では最高気温28度。野外でダンスを観るので(はなも踊るらしい)、シミを増やさないように出かけないといけないなと芳江と話す。
さきがフルーツが入ったレモン風味のチーズケーキを作って石山の友だち(小学校時代に家族全体でお世話になったうどん屋さんだ)の所に行くという。いつもとは違う所に行かなくちゃ、と。
まず三条通りのneutronの地下。ここはアーツカフェ調査として必須の場所になってきた。今日芳江と出かけたのは、橋本恵美・カオリ(SiSi nacco)が「エホンノミライ4」に参加していたからだ。橋本姉妹からは精力的な展示案内をもらっていて、その展示場所を見るだけで、いまの「可愛いものみっけ」場所の検索となる。
クラゲや菌(苔?)がテーマになっていて、その菌に紅茶とか100%ORANGEとかを飲ませた記録があった。結構、現代美術的でもあって、それが微笑ましいブースに置かれている。
そこからめんどくさかったので、タクシー。遊・空間「u」へ。千本出水のバス停から西陣の方へ入ったところ。市原さんという方の祖父が道楽で建てた洋館と約1000平方メートル(300坪)の荒れ地(150種類以上の植物が勝手気ままに繁っていて、良い風が吹く里山が洛中に珍しく残っている)。それらをクラブハウスと野遊び(野菜作り、果樹・山菜・薬草採り)などとして開放している(会員制で)。
ちょうど、これからパン屋さんになるかもしれない廃屋でシタールの音がぼんやりと流れていて、それに気ままに耳を傾ける。そこに無造作に落ちている金具とか陶器の破片、わらびとか山椒の匂いなど、気になり出したらなんでも面白い。
野外に美術が置かれている。白い大きな物体(はなたちがここでかくれんぼダンスをしたりもする)、サイみたいな置物(脚がもげていたり、草がお尻に生えたり)などなど。ゲーム機がかってに流れていたりもする。屋内(クラブハウス)では、暗い部屋で映像がながれ(ランプがやけに吊られている)、豆で出来た大きな赤ん坊がどどーんと横たわっていたりもする。
はなたち5名のダンス「あるひてひると」は16時かららしいので、その間、時間をつぶす。上立売通りへと北に行けば西陣factoryガーデンなどへも行けたのだが(ちべたで赤崎みま展があったりもしたのだ)、どうも土地勘がなく(みんな同じような懐かしい風景)、ただ暑いねとぶらぶら。
「あるひてひると」の始まりは、5名のへんてこりんな行進から。赤いTシャツに青い上着を頭にかぶって、顔は白塗りぽい異形さ。野原の妖精というかコロボックル。いやいや、ちび鬼たちがころころやってきて、ころころ去っていくような。
ハマッコさんが趣のあるバケツに頭を突っ込んだり、インスタレーションの音がかってに伴奏になっていたり。二つだけ音楽に合わせて踊るシーンがあって、これは練習していたものだろうなとは思うが、あとはこの場所で勝手気ままに、その土の味、風の気持ち、草の感触を楽しんでいるようなもの。
でも、如雨露で水をかぶって土まみれになり、地下足袋で土や石を踏んで自分たちで木に吊した笛を吹き、そこにやっぱり吊していた赤ピーマンをみんなで食べる開放感は、普段では出来ないことなので、舞踏的な変身でもあり、無邪気な戯れ心でもある。
運動会の組み体操を使ったダンス(3人チーム)もちょっとやっていた。一方、男女(女性は弥生ちゃん)のペアは石がごろごろしている場所をうまく使って踊っている。
そんなにちゃんとした踊りというものではないが、自然との接点を観る方に随分と広げてくれるような自在さが面白かった。
アートキャンプ白州に小さかったはなとさきを連れて行ったときは、(アトピーが酷かったこともあり)はなはすぐに帰るってむずっていたのにずいぶんと変わったねえと、芳江は感慨深げ。山梨に行っていたさきがいまではケーキやパンを室内で作っているんだからなあ。
はながモトキシノブさんに撮ってもらっていた着物写真をはなから借りる(替わりに昨日撮ってきた新旧の墓の写真を渡しておく)。お見合い写真以上に素敵だ。馬子にも衣装、そして孫にはカメラマン。
5/4(日)
大学院講義「アーツマネジメント」(6)のパワーポイントをやっと仕上げた。連休中の授業準備はたったこれだけだったなあ。まあいいか。
「アーツマネジメント」(4)と(5)が芸術環境のなかの芸術施設と芸術団体を取り上げ(6日に講義する(4)が実演芸術で翌週の(5)が視覚芸術)、(6)だけで芸術サービス支援組織論とする予定だったが、サービスオーガニゼーション、とりわけ非営利民間組織はゆっくり説明したいので、(6)は実演芸術だけのそれにした。
(6)はNPO法人JCDNとNPO法人DANCE BOXを取り上げるだけで十分(すぎる)内容になるだろう。できれば、コンテンポラリーダンスについても説明したいが、それは実際に見てもらった方が早いだろうし、e-ラーニングの問題はビデオを流したりできるかどうか、それをあらかじめ相談しておくことの面倒さがある。
・・・
また伊丹駅に早く着いた。14時15分。
のんびりアイホールのロビーで芳江と座っている。
渡されたチラシの束と深い青色の『透明人間』の当日パンフ。
の表紙や裏表紙、クレジットされた文字は黒色で目を凝らさないとよく見えない。
・・・アイホールダンスコレクションvol.30、Take a chance project005。山下残ダンス公演『透明人間』、振付・演出:山下残。出演はマイクで自分の書いたダンスを語る文章を読む山下残のほかに、7名のメンバー。音楽:ORGAN、舞台監督:西田聖、照明:三浦あさ子、音響:加藤陽一郎、宣伝美術:納谷衣美、宣伝写真:河上隆昭・西園佳代、翻訳:コゴナオコ+サラ・ヤンセン。主催:伊丹市・(財)伊丹市文化振興財団、平成15年度文化庁芸術拠点形成事業。・・・
(内容詳細はアーツ・カレンダー「こぐれ日記443.444」をみてください)
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