こぐれ日録 KOGURE Diary 2007.7


こぐれ日録544 2007年 7/2〜7/8

7/2(月)

昨日、京阪、野江駅近くのS-paceという小さな小屋(はじめていったが、これからいろいろ使われるのだろうか)で、遊劇体『天主物語』を見る。
小さなアパートが並ぶ中、プレハブかどうか分からないが2階建ての倉庫みたいな場所。50名強で満席ぐらいか。入り口と受付とが近接。役者は二階から入り口そばの階段から下りてくる。

この間に見た映画、溝口健二『近松物語』、ルイ・マル『さよなら子供たち』。

今日は午前中、東部文化会館でこの前のフォーラムの反省会。

午後から専門ゼミ。めずらしく、どんちゃんがくる。9/7に一人芝居をするのだそうだ。
地母神から太陽神へ。人の定住場所としての住まいと神の住まい、産屋と喪屋のある建築へ。
桂枝雀『寝床』。浄瑠璃と文楽。
そのあと、研究室でポピュラー音楽におけるプロダクションとレコード会社との関係について。メジャーの定義として、「レコードの流通(配送)会社2社による」というものが使われるということをはじめて知る。


7/3(火)

ケン・ローチ監督『ブレッド&ローズ』2000年イギリス=ドイツ=スペイン映画、110分。
ハリウッドのお膝元のロサンゼルスで、不法入国したラテンアメリカ人を描く。ビル清掃労働者は、制服を着たとたん、そのビルの中を闊歩する弁護士や証券マンたちにとって、いないこと(透明人間)になってしまう。

強制的に見せるためにあるデモ。示威行為とは、尊厳(ローズ)のためのぎりぎりの表現活動だという主張が明確にでている。たしかに、こうしてみると、デモは限界芸術である。
以下、近大に行く前に、あさってのレジュメを作ってみた:
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2007.7.自分探しの旅
映画の魅力をほんの少し
   ・・・映画同士がつながって行く ふつうの人生の輝き 音楽と映画・・・

◎ 日本映画の古典を観よう
☆ 小津安二郎1903〜1963 『晩春』『東京物語』『秋刀魚の味』『生まれてはきたけれど』 松竹大船(鎌田)
・スタイシッリュで禁欲的 日常と冠婚葬祭のなかでふつうの人びとが生きる
・世界の映画監督への影響は、小津のほかも、黒澤明、そして、以下の溝口、成瀬など
☆ 溝口健二1898〜1956  『雨月物語』『山椒大夫』『近松物語』『祇園囃子』『お遊さま』 大映京都
☆ 成瀬巳喜男 1905〜1969 『浮雲』『女が階段を上る時』『流れる』『乱れる』 東宝

◎映画から音楽を聴く 
歌が、社会や政治に関係するシーンを見てみよう
☆ボブ・ホッシー監督振付『キャバレー』1971年アメリカ映画
・場所はベルリン、時代は、1929〜30年 退廃からナチズムへ
・キャバレーの退廃ミュージカルと、野外の美しきドイツ(ゲルマン民族)賛歌
☆ケン・ローチ監督『ブレッド&ローズ』
2000年イギリス=ドイツ=スペイン映画
・舞台は、ロサンゼルス(メキシコ国境) 
・ラテンの移民労働者が少しずつ、ブレッド(労働条件)とともに、
・ローズ(人間としての尊厳、自尊心)を取り戻していく   
・そのための抵抗の歌
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7/4(水)

1時限目、基礎演習。はじめ、学祭の広告取り。
これも、アーツマネジメントの練習になるので、手順を決めてはじめると、すぐにとれて、肩透かし。そのあと、Tシャツ作りのこととか、質問コーナーとか。

NPO法人プラスアーツなどの3名さんが来る。
あれこれ、情報交換など。懸案を児童教育学科のK先生にようやく説明できる。
松井山手の方は、もう動き出すようだ。

残っていたTAM研メンバーとは、笠智衆のドキュメントを見たりする。
また、トミーが残していったDVDもあとで一人で見た。力作であった。来週のゼミにぜひ。

突然、京都市の副市長の秘書から電話。今日、14時半から15時の間に挨拶に来たいという。
知らなかったが、先月に山崎一樹さん(入省が昭和59年、つまり私の6年下ということになる)が副市長になったのだという。景観などが担当。国土庁の自治省出向組のパーティなどで会っていたためか、会うと山崎君の顔をよく覚えていて、昔会った人のことは実にクリアに覚えているものだとしみじみ(最近に会った人は、名前を覚えていないことはもちろん、顔すら忘れてしまったりしている)。それにしても、彼に何もいいことなどしたことないのに、どうして会いに来てくれたのかなあ・・とは思うけど。

うちの総務課長とか法人事務局長に、副市長さんって興味ある?って聞くと、だったら、学長や副学長に会っていただいたら、というので、彼はぶらりと私に会いにきただけだったのに、えらく大げさな表敬訪問となった。
いやあまあ、彼には悪かったが、前職が消防庁だったので、救急救命のことなども教えてもらう。わたしと違ってよく知っていて、びっくり。当たり前だろうけれどねえ、現役のちゃんとした自治(総務)官僚さんなのだから・・・


7/5(木)

あさ、ある委託調査をしている院生に「文化施設」とは何ですかと訊かれる。
その前に、どうして、そこになぜ新しく文化施設建設が必要なのかが逆に知りたいと思った。
どうも、市町村合併をすると、新しく文化の殿堂を作りたくなる気前のいい首長などがいまだに出現するようである。
大阪市は、使われなくなった施設をアーツのために使わせる余裕すらないという惨状なのに、いまだに、お金持ちの都市があるのだなあ、と、不思議不思議な感じ。
そうだ。
そこの○○市の住人の人たちも大阪市に仕事があったりもするだろうし、新世界や難波は面白い場所だから、大阪市のフェスゲや精華小学校・幼稚園(こちらはずいぶんと高いかも知れないが)をその○○市が買い取って、その○○市民のためのリッチな文化施設として、その地域の人々の植民地的な憩いのサロン、カフェ、ホテルであるとともに、○○の物産、文化資源、人間の器の大きさを知らしめる「発信」基地!になれば、素敵じゃないかと思いつく(大阪ドームも京都のある企業のドームになったようだし、旧西武ドームも確か、「善意」とかいう元ディスコ経営者の会社名になったそうだしね)。

なお、ついでに、大阪市内外のアーティストやアーツ享受者にもそのおこぼれを味あわさせてあげる(関西のアーティストのパトロンにその○○市さんがなり、どんな公演や展覧会にもその○○のマークがひっついている。宝くじの金太郎のように発信する、ただし、素敵なデザインで)、という、リッチな周辺が貧乏な中央を買い取る発想が面白いのではないかと、半分まじに思った。

それこそ、近畿に燦然と輝く○○文化発信基地であるし○○商人の精神でもある!これができるのだったら、懺悔して転向し、発信政策を支持させていただくことになるだろう(本心はそれでも「発信」は問題だと思っているのだが、でも、緊急手段としては、やむをえない・・)。

そうそう、いま、ブッシュさんが東欧にミサイル発進基地を作ろうとしてプーチンさんとあれこれしているが、同じく文化発信基地だって、自地域の不便な場所に作って大阪市のヒトなど誰も来ないものよりも、集客が容易な他所の方が色々な点で有利である。○○の威信を示すのは、大勢が見る所の方が目立つし、とりわけ、万が一そこが攻撃されても、自地域でないので、被害が少ない。

あわてて、2限目の授業。国家的威信のためにアーツは公共性(外部経済性)があるという説と、その発展形である文化発信説や地域アイデンティティ説について。なんだか、奇妙に疲れた。
4限目も授業。映画の奥行き。
さあ、ダンスボックスへと坂を下るが、どうも、足が痛い。
無理せず、家に戻る。
成瀬巳喜男『流れる』をちゃんと観る。


7/6(金)

水の会『寝耳に汽笛』(作・演出:奥野将彰、出演でもなかなか味な役)、ウイングフィールド。
満席で面白さが渦になっていた。19:39〜21:07。再演がこうして見られることで、演劇の資源が少しずつ積みあがっていく実感がする。
きょうの京都橘大学のアーツマネジメント総論受講生は10名。
7/7の2回も授業になっているので、明日も多くの受講生が来ることを願う。
一応、7/8のマチネを学外授業と登録しているけれど、これは、私が明日授業があるため。

ところが、今日や日曜日はかなりお客さんが多いとのこと。日曜日がやばいのである。
たぶん、うちの学生だけで、そのままにしておくと、40名ぐらい来る可能性がある(最近の学生はよく出席するのだ)。
もし、土日とも空いている学生さんは、ぜひ、土曜日に行ってみてください。ゆっくりと観れるはず。日曜日は、遅く行くと観られないという事態もある確率であるので、30分前には着くように。

おっと、緊急事務連絡になってしまった。
今日は、まず高校でレポートを採点して、期末の成績調整。5名が未提出だったが、10時までに出すように掲示してもらったら、みんな出しにきた。高校はすばやい。
今日は、大学に。卒業生が来るというので。来たのは、1期生のTさん。美味しいケーキ屋さんが椥辻駅付近に出来たという。食べようとしたら、1回生が来て(ゼミは違うのだが)、一つおすそ分け。
あわてて、ウイングフィールドへ出かけようとしたら、2回生たちに会ったので、一緒に行く。
というわけで、選んだお芝居は内容的には申し分ないのだが、問題は、日曜日15時からの公演に入れなくなった学生が出た場合の対処法。まあ、何とかしよう。


7/7(土)

日々これ敗北。
今日のアーツ鑑賞演習。実質的なラスト。
『東京ノート』(青年団)の同時多発会話をまず実際にちょっとだけしてもらって、フェルメールの絵画を見せて、17世紀のオランダの話も少しし、ケストナーの「動物会議」にも触れて・・・ああ、寝ている。見終わったあと『東京物語』とのつながりなどをフォローするがどうもねえ。
敗北感濃厚。セミパブリック論など終わってからしている、ぶざま。

これで14回。去年までならもう十分のはずなのだが、21日に、1限だけはしなくちゃいけない。
やっぱり演劇を映像で見せることの限界かも、と思い授業で後期に使おうと用意していた、ロメール『春のソナタ』〜音楽と映画の関係〜というネタをしようと言ってしまう。
そのあと、研究室で、そうはいっても演劇じゃん!と後悔。むしゃくしゃして、下のセンターのテレビで中日阪神戦を見る。川上、大丈夫か?と思ったし貧打でどうしようもないが、まあ、結果オーライ。気を取り戻して、この前ゲットしたDVD、ジャブジャブサーキットの『歪みたがる隊列』を見る(アインシュタインショックもまた映像で見たいなあ・・・)。やっぱり、ロメールは後期にとっておいて、ジャブサーでリベンジしたいなあ、と思い直す。映像でも十分伝わるように思えたので。

迷う日。
精華小劇場、遠し。


7/8(日)

いじけてばかりでも仕方がないけど。

昨夜の帰り、六地蔵駅から中書島駅まで、ずっと、カンジャニ(たぶん関西ジャニーズの略?)の追っかけの女性二人が会話していた。どうして、すぐにみんなの名前を覚えてしまうのだろう?とか、手が触れそうになったドキドキとか、少し恥ずかしかったがゼミで話すと盛り上がって、ファンクラブに勧誘したとか・・・・まるで、二人だけのステージのように楽しそうだ。見上げると、創価学会系の雑誌広告ばかりが釣り下がっているガランとした支線。

二人は、同じようなジーンズ姿でスタイルはまずまず。少なくとも一人は大学生で、お母さんは彼女よりも熱烈で彼女の誕生日にコンサートチケットをプレゼントしてもらって、いまではお父さんも連れて、家族で岩手のライブ(カンジャニなのに?)まで行くのだという。CDやDVDや6000円のコンサートチケットで二人のバイトはなくなっていく。

(どうして、この会話が気になったかというと、中書島で二人は別れたのだが、バイトで初めて会ったぐらいのあまり親しくない状態から、3駅のあいだで、このタレントネタでどんどん親しくなっていく様子がかなり面白かった〜二人芝居みたいだった〜からだし、もちろん、盛り上がるネタってこういうものなのねとかいろいろ思ったりもしたからで、もちろん、これは後付けの弁解・・)

はなしは、まるで変わって。
筑紫哲也『スローライフ』(岩波新書、2006)がS先生のゼミの教科書だったので、小津安二郎のことは、名前だけすでに知っていたと、ある1回生に教えてもらったので、この本を取り寄せる。パラパラと観ていると、スロームービーというところで、テオ・アンゲロプロス中心に、キアロスタミやカウリスマキ、タルコフスキーにクリストリッツァ(彼のにぎやかな映画をスローというかどうかは、ちょっと?かも知れないけど、結婚式が葬式と隣り合わせのような『黒猫、白猫』などそういう意味では何気ない人生映画かな)、ホウ・シャオシェンが紹介されていた。

筑紫さんが教えている大学院生とかスタッフもほとんどアンゲロプロスを知らないのだという。確かに、永遠と一日やこうのとり、たたずんでという題名は頭にぼんやり残っていても、アンゲロプロスという名前はすぐに違う名前になってしまう。きっと昔の大学生は間違わないで東欧系などなじみのない難しい映画監督の名前を覚えることがスノビッシュな優越感だったのかも知れない。

溝口健二監督は長回し(メワンシーン・ワンカットモ)だけれど、小津安二郎監督はそうではなかったとこの前笠智衆がドキュメントで言っていて、60秒も間違わないで君たちはやれないからと小津監督の言葉だったそうだ。でも、まあ、スロームービーといえば、小津映画もそうなのかも知れない。こちらは、ぜんぜん退屈しないで、何度観ても新鮮なので、ロングライフムービーという方がぴったりだろうけれど。

朝、エリック・ロメールの『恋の秋』(1998年、112分)を芳江と観る。以前、観ているはずなのに、どきどきする。ガーデンウェディングの実例としても貴重。中年の女性二人が主人公。ロメール組の二人なので、二人の会話などは、即興的な部分があったのかも知れない。

15時からの水の会『寝耳に汽笛』。満員、立ち見。
京都橘大学生は41名。昨日は9名だったので、60名が鑑賞できたが、ぎりぎりに来て(集合は14時半なので遅刻ということになる)、入場制限を受けた学生が12名いたようだ。アーツマネジメントの醍醐味や芸術環境の観察は出来たので、これもまた学習となろう。


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