こぐれ日録 KOGURE Diary 2008.1


こぐれ日録571 2008年 1/7〜1/13

1/7(月)

3回生ゼミ。この1年のスケジュール。
それぞれの卒業研究をどういうプロセスで作っていくか。
その結果、学士となる(文化政策学を専攻したという位が生じる)のだから、文化政策、とりわけアーツマネジメントを学んでよかったねと思えるようにしたいと一応本年の抱負を話す。
模擬面接みたいなことをすこしして、いささか緊張させてしまいこちらも慌ててしまったが、まあ、年の初めなので、これも経験かな。

卒業研究のテーマを劇場におけるお客さんの導入方法みたいなことに換えたいというゼミ生あり。
劇場はじめ、客入れ、客出しのあり方というのは、ハードウェアはもちろん、開館・閉館時間決めはじめとするルール化・運営マニュアルなどのソフトウェアのこと、そして人材の配置、対応の機微を含むヒューマンウェアの3点から考えるといいねと終わってから短くアドバイスする。
そういえば、劇場のトイレについて、途中まで研究していて、方向転換したが、それはそれで面白いなと思ったことがあったな。

4回生ゼミ。のほほん。あとひとり、要約を出してくれれば、それからは1/29の口頭試問のみ。

今日のゼミで伝えられなかったが、京都府の方から、2011年開催予定の国民文化祭について、意見を募集しているのでよろしく!というメールが届いている。
学生たちも含めて、せっかくの機会(それなりの予算が発生している)なのだから、無駄にしないような発想とプロセスを創りたいなと思っているので、ぜひ、意見(コメント)を、みじかくてもいいので、寄せてあげてほしいもの。


1/8(火)

めずらしくお買い物。バーゲンでオレンジ色のセーターを買った。
京都芸術センターをのぞく。CRIA展というのがあって、大広間で少しくつろぐ。
三条まで行こうとして、隣に大きく『染・清流館』とあったので、ビルの6階まで。
300円。一昨年からここでやっているという。いままで気づかず。ここも和室なので、センターの大広間から何だか続いているな。初老の男性が和服姿でやっぱり室町だ。

歩くのがめんどくさくなって、また京都芸術センターへ戻り図書室でDVDを見る。『あさひdeアートプロジェクト2003』。群馬大学コミュニティー学習ワークショップ実行委員会によるもの。群馬県立あさひ養護学校の人たちとアーティスト。NPO。森岡さんのボールで音がでる遊びなど。

同志社大学大学院総合政策研究科『文化行政論』。来週でおわりなので、少しトピック的なものを考えて、去年はMONOのお芝居を見てもらったが、今回は、「映画にあらわれた文化行政」として、エリック・ロメールの『木と市長と文化会館』をフィーチャーした。フランス映画というだけで、むずかしい、哲学的という反応がすぐにあって、ヌーベルバーグというとそれが増してしまう。

まあ、そんなこともあって、出始めに『友だちの恋人』で和らげようとしたが、それでもまた微妙な反応あり(オーギュスト・ルノワールのひ孫演じる学生が感じ悪いとか)。『友だちの恋人』は文化行政を扱っているのではないが、主人公のお仕事が市役所の文化担当という設定なので、ちょっと見てもらったのだった。


1/9(水)

1限目、基礎ゼミ。ラス前。「春の海」を使ってみた(宮城道雄自身の演奏と最近の演奏の聞き比べ、随筆を読みながらの解説)。お正月といえば、お箏(厳密には、琴ではなく箏といってね、などと話しながら)。
2回生ゼミ選びのことを気にしている学生がいたが、夕方(校務がおわって)、ようやく張り出すことになった(ので、見てね)。

TAM研で『京の音』を探して、京都地下鉄のアナウンスを聴く。もっと長いものがあればいいのだけれど。明日、卒業生が主役のテレビ放送を授業で使うことにしたので、メンバーに見せていたら、途中で、やっと先輩の顔がわかったようで、先輩がはじめヨッシーさんに出会うときから、どんどんしゃきりとしていくのが分かるというのである。みんな、するどいなあ(私が鈍いのか)。

「映画にあらわれた文化行政」のネタを募集?したら、さっそく建築探偵たぬきさんから、ハリウッド映画『オーケストラの少女』(1937)を教えてもらった。それで、おっと、群響はより地方の文化政策的だから、『ここに泉あり』(1955)があることを思い出す。じつはどちらもちゃんと見ていないようなので、見なくちゃなと思う。でも、狭い意味で「行政」と関係していないかも知れない。もう一つ「アーツマネジメントを描いた映画」という分野も作ればいいかも。

追加:上村さんに教えてもらったのだけど、2/2から京都シネマなどで映画『歓喜の歌』が上映されるそうで、その舞台がなんと公立文化会館だそうだ(原作が創作落語というのもいいね)。楽しみ。


1/10(木)

来週はテストなので、今日が最終のアーツマネジメント論氈B
クラシック音楽の興行の話は骨格だけ話したが、美術展については、ホントにサワリのみに。
まあ、これは、博物館関係ですでに聞いているだろうし、総論でもしたし。

そのかわり、2006年正月に放送されたサンテレビの録画を見せつつ、お寺でのコンサートづくりの実際を考えてもらった。うちの卒業生(野木さん)が4回生のときにやったことを、彼女が主役で撮っていただいているので、身近に感じたようで、感想も好評だった。冒頭が、常設と仮設だったし、まあ、一応無事締めくくりとしてはよかったかな。

夜も、うちの卒業生(南園さん)が出演しているお芝居を十三で観る。これは、移転した劇団そとばこまちのアトリエ“ANA”のお披露目もかねたコント集(『TURN』構成・総合演出:古澤直人)で、終わったのが22時少し前というのが、早寝の私としては少し困った(テンポをもっとアップすれば2時間内に収められるだろうが、いくつかは割愛してもいいかも)が、お正月なので、軽い感じでやっていて、お客さん参加型のものとか即興ぽいサムライとかは、ゲーム的。また、コンビニ弁当工場での話や、ストーカーに注文をつけるコントなど、実際に劇団員が関係しているようなものかも知れず、結構面白かった。

小松和彦『憑霊信仰論』(講談社学術文庫、1994年)を読む。「ついている」「つきを逃がした」の「つく」が「憑(つ)く」から来たものだという書き出しを含む冒頭の論文は著者25歳のとき(1972年)、社会人類学専攻の博士課程に在籍していたときのもので、小松氏の妖怪文化学にはこれからお世話になることが多そうだから、こういう出発点の問題意識の文章を含む本を読むのは実に面白い。民俗学と人類学の方法論の違いなども勉強しなくちゃ。


1/11(金)

京都橘高校の授業。
用意していたとおり、『ベルリン・フィルと子どもたち』を活用した聞き取り用紙を使うとともに、もう一つそのための穴埋め用紙も作る。こういう準備が大学と高校との差で、高校の先生はやはりきめ細かくされているということが、経験上分かってきた。が、だんだん、高校の授業準備レベルを大学でも必要になってきているということなのかも知れない。『ベルリン・フィルと子どもたち』は、まさしく「アーツマネジメントを描いた映画」であり、とりわけ、アウトリーチとかコミュニティアーツに関するものなので、実に重要な教材である。

あわてて、近鉄の桃山御陵駅から地下鉄丸太町駅、京都府の会議へ。
また、あわてて、逆順で、桃山御陵。雨。
京都橘学園の連合組合の新年会。月桂冠の飲み比べをしたりして、「月の蔵人」。


1/12(土)

13時から、アーツ鑑賞演習。
2回生が成人式のために故郷に帰ってしまったようで、9名のみ。
こういうときにアンケートだからなあ・・
美術のどまんなか、印象派を中心にしてみる。
まず、概要をピラピラ。
つぎに去年秋にやっていた新日曜美術館の映像を使う。風景の切り取り。
最後にゴッホへ。弟テオから見た兄ゴッホについて。

残りの時間で、ギャラリーそわかの冊子をまず紹介。画商テオの話をしたので、ギャラリーつながりとなる。
そして、ギャラリーそわかが企画・発売した、中西信洋supplementのドキュメント映像(山本知歩作品)へ。
2004年、42分。ちょうど、16:10で終了。
まあ、授業が収まってよかったし、けっこう、現代美術はつまらないと思っていた学生がこの映像を見て思い直したというコメントをしていて、予想以上によかったな、と。山本さんに感謝。

以下、ドキュメント映像についての学生の感想:
○ 私は、現代アートには、特に生活感を感じず、無機質なものという印象を受けていましたが、この映像でそれにいたるまで(製作段階など)は、もっと人間臭いことに結構ショックでした。

○ アーティストのドキュメンタリーVTRはとても興味深くおもしろかった。色んな展覧会を観てきてどうやって作っているのか気になるものがたくさんある。それを映像で表現するということは、よりわかりやすくなるし、アーティストの考えも知ることができておもしろいと思った。

○ 次にみたアートのVTRでギャラリーsowakaでの展示をする若手彫刻家の中西信洋さんのドキュメント。大型の作品の、セメントで創った作品は、想像を広げ中に入ってみたい、 中にはいりたいと思わせられました。

○ 後半のドキュメンタリーは、本当に大工みたいだと思った。また、道を歩きながら木を見て考えたり、何気ないところからインスピレーションをえているのが良くわかった。

○ 中西信洋さんの作品は、とても個性的でシンプルでもあり内容の深いものだと思った。出来上がっての満足や達成感だけではなく、その次のステップや発想を考えているところに、頭の中は芸術でいっぱいなのだと感じた。

○ 作品の製作過程を映像で観られたのがおもしろかったです。作者の思いなども字より伝わってきやすいのかなと思います。
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読んだ小説。夢枕獏『陰陽師〜飛天ノ巻』(文春文庫、1998年)。これは第2巻目だった。第1巻目を慌てて注文する。じつは、さきに漫画(岡野玲子)全13巻を読んでいたが、わたしなどは、小説のほうがシンプルで読みやすい。もちろん、漫画のビジュアル性、それにとても詳しい京都の地図とか陰陽道の話とかはすごく参考にはなるけれど。

源雅博という音楽家で宮廷武士でいいところの好青年を安倍清明の相手方にしたところが、夢枕獏の創作性。雅楽を教えたりしなくちゃいけないから、わたしはとくにありがたい。


1/13(日)

予報どおり、寒い。
「やわたし」から、「おうみはちまんし」へ、八幡連結。
雪。大杉町下車。初雪食堂。450円のてんぷらうどん。出前の丼づくりをぼんやり見ている。
出ようとすると、男女の若者。あとできくと、やっぱり、カフェ・エノアールのお二人。

ボーダレス・アートミュージアムNO-MA。細道の地面にちいさなちいさな花。白と桃色の。
「近江八幡お茶の間ランド」にちょっと寄ってくれはらへん?―ふつうの町のキュートな日常。2日目。
しずかな町、道。
前庭には、猫よけの水入りペットボトル。
そして。

入口に、銭湯の暖簾。男湯である。吉田りえのコレクションだという。彼女のメイン展示は2階の和室。おおきなこいのぼり。靴いれにも子どもの古い靴、ぞうり。
はいると、おお、扇に「イ」が入るお醤油屋さんが引越ししている。NO-MA支店?
扇伊醤油醸造店。段ボールに囲まれたNO-MA。おしゃれとかハイアートとかとは無縁のNO-MA。
でも、かっこいいNO-MAの1階。

販売物コーナーでブンブンゼミ100円を二つ買う。かなりの音。また、メックでも鳴らしてみよう。
ます六という金物屋さんの支店。でも、売約済みとなっているようで、これって、画廊の売買だ。おかしい。アルミの弁当箱が売約済みとかは。
とりいしん平のコーナーは、この前のまち歩きの資料などが立体化している。しん平さんが社会科の先生とは!ずっと美術の先生で音楽好きとばかり思っていた。
ます六商店は1800年から続いているという。森の大工さんがいろいろ作っているが、ここには、スマートボールが置かれていて、子どもが全部球を入れようとしてもがいている。左上だけがどうしても入らないのだ。

廃物のようなものがインスタレーションされている中庭。けっこう好きな風景だ.物々交換カフェ・エノアール、13時までお休み。雪をなんとか防いでいるが寒そう。再開したら、大勢でにぎわっていた、意外。蔵はシンプル、大きな樹のような作品。坂口恭平。近くのお惣菜屋さんの段ボールとか?

2階はもうお茶の間そのもの。何と言ってもキューピーさんがお寿司のパックに3人かわいく入った中山喜代子、85歳の作品群。壊れた時計の電池交換記録がとてもいい解説になっている。朝5時に交換しているのにもびっくり。なんだか、おもちゃのちゃちゃちゃみたいだ。

中守秀雄の昆虫箱、坂井清の新聞広告べたべた、森の大工さんも点在。おくのベランダでは、林大樹のゴレンジャーみたいなビデオが流れ、反対ではご飯もたべずに、大里健一朗の遊園地づくり(まちが彼にはすべて遊園地になるのだ、駅も電車もなにもかも)。

で、私はずっと、箸袋コレクションにこころ奪われたままである。
白井貞夫の部屋。そっくりそのままではないが(中山喜代子のキューピーだってすべてではない)、いやあ、箸袋を入れるファイルからすごい。箸袋のために、こうして手作りにして、いかに箸袋が見やすく美しく整然とでも不自然でなく見られるかというように並べられている。
使用されたものがほとんどだろうと思われるが、一見封を切っていないように見えるものもあって、それは、背後からそっと抜き取られているのだ。

さすが、白井さん。30ほどの地元の役職をやっているということで、近江八幡市だけでファイルがぎっしり一冊。スナックなどのものも丹念に入っている。普段着の食堂は同じにおいのする食堂同士が集まっていて、それらの箸袋は、そういう普段着っぽい顔をしている。

さらに、お店の名前が入っていない「普通袋」のファイルが2冊。結婚式のものが最後にずらりとあるのを見ながら、お葬式とか法事とかでの食事のさい、それが葬祭関係だということを箸袋は示していないことを改めて認識する。きっと、そういうことはあんまり縁起がよくないので、表象しないのだろう、たぶん。滋賀県の湖南、湖北、大津市、彦根・・・とファイルが分類され、町名でも細分化されている。箸袋の地理学だ。

あと、切手のコレクションとかタバコの箱の歴史、地域別ファイル、テレホンカードも多く集められている。NO-MAの地元代表のような白井さんが、これほどの人であったとは!一等賞の賞状も飾られ、将棋も置かれている。

名残惜しいけれど、雪も激しくなりそうなので、お茶の間を後にする。すぐそばの扇伊醤油醸造店でおさしみ用の醤油を買う(一番上等のもので、1P600円)。
京都駅から京阪七条駅までの間、弓を持ってやってくる若者が多かった。三十三間堂、通し矢の行事帰りだろう。


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