こぐれ日録 KOGURE Diary 2008.9/8〜14


こぐれ日録606 2008年 9/8〜9/14

9/8(月)

土曜日、高本さんから聞いた話。
ある修道院の院長が、グレゴリオ聖歌を歌うことを禁止した。歌など歌わないでもっと勉強をせよということだった。ところが、半年もしないうちに、体調をくずしたり、心が思わしくなくなったりした修道士が続発。原因を調べたが、どうも、歌禁止以外にその原因がないので、聖歌の朗誦を再開する。すると、不思議なことに、心身の病は消えていった・・・

出典を調べたいような話だった。学力テストを全国でしたり、その結果にもとずいて競争したりすることより、もっと大切なことがあるよな、とこの時思ったのだった。

マキノ雅弘監督『続・丹下左膳』1953年大映作品、75分。
大河内傳次郎がずいぶん貫禄できちゃったわけだが、それでも立ち回りなどさすが。
大岡越前守も丹下左膳も傳次郎がやっているのも見所。水戸光子、山本富士子。
魔性の刀のせいにして辻斬りしているようなところもあって、現代にある面通じるニヒルな暗さあり。

工藤安代『パブリックアート政策―芸術の公共性とアメリカ文化政策の変遷』勁草書房、2008年。後藤和子教授の指導による博士論文がベース。
卒論のテーマにしている学生が、この本を読んでいないのなら、早速紹介しなくちゃと思う。


9/9(火)

15時から京都文化博物館で京都府の文化力創造懇話会ワーキング会議があることもあり、御所周辺をぶらぶら。
まず、一昨日聞いたばかりの松室重光作の京都ハリストス正教会(1903年完成)を眺める。特徴的な小窓のリフレインと展開、少しだけキラキラしていたシンプルなステンドグラス。礼拝は月に2回ほどのようだ。ずっと閉まっているのかなあ。公園からの眺めがいいけれど、バックのマンションが・・・
近くは美術骨董とか家具とかのお店が多い。そのあと、皇居を通過。閑院宮跡をおとづれる。明治初期に作られたもののようで、明治の建築づいている。無料、記名のみ。

平安女学院の教会もいつものように眺めながら、松室重光の代表作、京都府庁舎旧館へ。1904年の庁舎建築のお手本のようなもの。いつも会議に使わせていただいていたが、家族(門番さんがわざわざ旧館をNPOの人が解説付きで見せてくれることを教えてくれる)で知事室や正庁をしっかりと解説付きで見学。屋内の装飾、屋根の和風、腰板のいわれなど詳しく説明していただく。平日はいつも開いているのだが、学生を連れ出すのがけっこう平日だと難しいなあとは思うが、自主的に学生が訪ねるのにうってつけの場所だ。

平安神宮の横の旧武徳殿もまた訪ねよう。
15時から会議。ベンチャーコンペの話も会議後少し。
あわてて、『KAZARI 日本美の情熱』を観る。いつもと順番が逆(この展示は左回り)だったのを知らず、平田一式飾りから見ていく。しかし、江戸のつくりものの伝統はすごいもので、これを見たのは大収穫(大きな海老が車のパーツでできていた。あとは、別室の菊人形的なもの)。蝶々踊りという狂乱的仮装踊りが京の町に幕末起きたという絵巻もまた珍しい。靖国神社遊就館の兜が現代アートしていて、これも興味深い。


9/10(水)

午後からずっと会議だった。
すこしずつ、夏休みが終わろうとしている。
和太鼓部の2回生たちと映画やアニメ(紙芝居、マンガ)とカッパの話をしたりはしたが、
あとは、校務ばかり。

学生に浜崎あゆみが歌手にならない前に出ていた映画『渚のシンドバッド』の話をしていて、
岩崎あゆみといって、ちんぷんかんぷんになってしまった。それに「おこげ」みたいな役と学生に解説したが、ちょっと、違っているかも知れない。ゲイカップルにつきまとう女の子ではないので。

寺社から社寺に変わった明治という時代のことがよく自分のなかで話題になる。

「やりたいことをやめさせたり、やりたくないことをやらせたり、そんな力をパワー(権力)といいます」。
なるほどね。いま政治学の分かりやすい教科書を数冊読んでいる。たとえば、甲斐信好『プレステップ政治学』弘文堂、2008年。

「権力が通用することを裏づけしているものを正統性といいます。」

「正統性に裏付けられた権力が行うこと」が政治であり、
「全員が従わなければならない何かを決めていくこと、それが政治です。」
イーストンの定義では、政治とは「希少価値の権威的配分」ということになる。


9/11(木)

滋賀県庁のそば、いつもは通り過ぎる武道館、滋賀県体育文化館</a>をしげしげ。昭和10年代の建築(1937)。県庁と対照的に外壁はお化粧直しなど全然されていない。室内をのぞくと、師範が閲覧するところなのだろうか、バルコニーのようなしつらえがあって、少し演劇的に使えそうな面白さ。武徳殿(館)という剣道や柔道の稽古場が全国に整備されていたのだと松室重光訪問で知ったからだ。

どうも、廃館の危機のようで("http://trystero.exblog.jp/7693059/" )、1階(半地下)の事務所とか使いづらそうなままになっている。三井道男建築作品。

13時から、第8回全国障害者芸術・文化祭滋賀大会・記念図録編集委員会。まだ未整理のものなどもあるそうで、いま見られたものだけで、400人台後半、応募画像数(画像にいくつか写っている場合もあるが)、4000画像を越えている。障害区分で知的と同数近く精神に障害のある方からの応募があり、これは日本では稀有の調査になったのではないかと思う。全体数でも去年の大会の10倍ぐらいだし、いままで、発掘されなかった病院の壁やノートに描かれた作品、インスタレーション的なものも丁寧に送られてきていて、じつに心が震えた。
北海道の取材の映像も終わってから見せてもらう。

帰ってから、映画第一作の『ルパン三世』(1978年、90分)を観る。ナンセンスに近い能天気なあれあれっていう展開が面白い。ビデオ発売のときに、副題(ルパンVS複製人間)がつけられている。監督、吉川惣司。大人のアニメに回帰(はじめのテレビシリーズを意識)したものだそうで、製作費は5億円とのこと。特別ゲストとして、赤塚不二夫、三波春夫、梶原一騎。


9/12(金)

きょうも、大津、厚生会館2階。アウトサイダーアートの実演芸術版の出版編集会議。午前中。
でも、昨日に比べて人数は少なく、できるのかなあとちょっと心配しつつ、アサダさんとかに仕事を押し付ける(彼は、林加奈さんぐらいには、私から連絡するだろうと思っていた。まあ、メールは入れるけど、やっぱり、一元的にしてもらおう。自分はどうも編集とか向いていないので)。

アウトサイダーパフォーミングアーツ(まだ決定ではないが、アウトサイダーライブとする予定)の事例を13〜15ぐらい紹介するのがメインなのだが、いまのところ、東海北陸・中国四国・九州・沖縄が未定になっている。関西は、めくるめく紙芝居とか、音遊びの会とか、ちんどんチャンスとか、糸賀一雄記念音楽祭とか、目白押しなのだが。

もし、このエリアについての情報があったら教えてください。もちろん、エイブルアートオンステージの助成事業一覧を見て、愛媛大の牛山教授が助成を受けているなとか、宮崎のこふく劇場のことはよく聞くなあとか、そういうぐらいは言えるのだが、誰も実際を見聞していないこともあり、アクセスできない状況になっていて、これからの課題となっているのだ。

帰り、アサダさんに、昨日チェックした滋賀県体育文化館(元武徳殿)を見せる。やっぱり、内部の感じ、イケテルとのこと。
その勢いで、平安神宮へ。その隣の門が閉まっていたので、入れないかと思ったが、回り込むと後ろ側がちょうど見られ、回り込めば、正面がドーンと。1899年築の旧武徳殿(松室重光作品)は、京都市武道センターの別館(まあ、どういう位置づけかはわからないが)として、ひっそりと閉まっていた。今日の夜とか、土日とかは、剣道、柔道、弓道の関係者が使っているのだということ。そういうときに覗けば中が見られるわけかな(内部の写真:http://kyoto-albumwalking2.cocolog-nifty.com/blog/2007/06/post_4387.html)。

大日本武徳会のことを調べるとまたいろいろ面白そうだけれど(弓道部の学生で文化を調べるにはもってこいかも)。東の講道館に対して、西の武徳会(ただし、こちらは、柔道だけではない)。柔術や剣術が、柔道や剣道、つまり、武道として確立して、戦争体制へつきすすみ、1946年にGHQにより解散、公職追放。

武徳会のことを考えながら、丸太町通りを歩く。日本刀がおいてあったりして、聖護院。熊野神社ね。
お腹がすいたので、袋小路へ。上海家庭料理の七福家へhttp://kyoto-albumwalking2.cocolog-nifty.com/blog/2007/06/post_4387.html。いやあ、おいしかった。

家に帰って、少し眠った後、東山青少年活動センターへ。東山フェスタ2008参加公演。19時すぎから。
西田さん(いまは南青少年活動センターだっけ?)や、宇治の糸井さん、大善院(来年3月に新作公演予定)の佐々木和尚・・・
ユニット美人、新作公演のためのコント集『紫式部が言う前に!』黒木陽子、紙本明子。福原さんもちょこり。
いやあ、面白いコント。50分強だけど、笑った、笑った。元気がでるねえ。いい味だねえ。

しかも、ひねりがいっぱい。前衛芝居だってできると、ユーチューブで見たという話は終わってから聞いたんだけれど、制作のふくちゃんやじゅんこさんやいろいろ実際に登場したり名前が出たり。でも、身内ねた的だけど、もし、チェルフィチュのステージを見たことがなくても、フランスのベルグソン哲学を知らなくとも、十分面白かったはず。
31歳と28歳の女性が、ニューヨーカーになったり、おかんと少年になったり、実像になったり。ぜひ、71歳と68歳でもやってほしいけれど、70歳の壁とかはあるかなあ。いまだったら、76歳と73歳で後期高齢者の壁かもね。


9/13(土)

なかなかはかどらず、ひさしぶりに芦屋の美術博物館に行って岡さんのダンスを鑑賞して、すぐさま、ピッコロシアターで文学座という予定を入れていたのに、ぐずぐず。

ようやく、《第8回全国障害者芸術・文化祭滋賀大会「アートはボーダレス」出版企画『アウトサイダーライブ』(仮称)の編集にあたって(ねらい・意図)》について書いて(1600字程度)、編集委員さんたちに送る。これでいいのかどうか。

少しまだ自信がないが、これをきっかけにもっともっとアウトサイダーライブの深部が浮かび上がればいいかもなと思って、夕方2稿目を送り、あとは、ビデオで、『未来少年コナン』(NHK1978年放送の第一集)を見る。宮崎駿監督の初期にテレビアニメーション。いやあ、面白いし、ポニョ(見ていないでいうのもまずいのですが、細馬さんなどの話で推測)までの内容がここにほとんど出ているのだなあと作家の一貫性に感心。
音楽は、池辺晋太郎。30分の番組なので、4回同じ歌を聴かされるのもまた面白い。原作(アレクサンダー・ケイ)があるそうだが、ずいぶん違っていてもうほとんど宮崎駿オリジナルだということ。

卒論指導の関係で、宮入恭平『ライブハウス文化論』(青弓社、2008年)を読む。
ライブハウスという言葉が和製英語で、一番違うところは日本での営業上の重要アイテムになっているノルマ制がUSAではほとんどない点。日本の貸し画廊が独特ということと通じているな。

あと、日本で言うプロというのは、USA的にはプロフェッショナル(職業としての音楽家)のごく一部の有名人を指しているという話は、私も同じようなことを言うことが多いこともあり、チェック。
インディーズミュージシャンという言い方もこれも日本独特のものだというあたりも参考になる。

家族的には、渋谷アピアの伊東哲男さんがインタビューされていたり、ルイードが事例として多く出ていたり、そういう点でも関心を持って読んだ。


9/14(日)

いい日曜日。
13時からはじまる演劇(実験的なもの)を観に、京都芸術センターへ。
dracom(ドラカンというようで、そのギャップも気になる)祭典2008『ハカラズモ』作・演出:筒井潤。
1時間半弱かな。お客は満員。2階の講堂。天井が和の格子と近代洋風の模様が混ぜ合わさっていて、府庁旧館正庁のことを思い出す。

ほとんど台詞がテープで、役者はそれを言っている振りとか口パクなどはせず、だらだら動く。
つぶやいて、同じテープになるが、男女が変わっていたり、変なコートがあったりで、前衛的なのかも知れないが、内容がくだらないような、でも、かなり気になる面白いものなので、そのギャップが興味深い。
たとえば、72歳のビールロング缶を昼間から飲んでいる「右」の靖国神社会員の男と若者との会話。満員電車グリグリとか若い女二人の観察とか、そのあと男が忘れた腕時計をめぐることとか、悪意の断片。悪意といえば、こっちの方がおっさんとしては怖いな、若い女二人の会話。無駄に走っているオヤジたちでどいつが一番早く死ぬかについての論評と賭け事。

京都芸術センターではこういうお芝居が多いので、まあ、ほんとにたまに見に行くとちょうどいい具合かも知れない。ギャラリーでは映像系の上映(展示)があって、これは、お芝居よりは濃縮度が強いものだが、居心地の悪さや気持ち悪さは似ている。高木正勝、Lava,Tidal。
北の方はよくある映像・音響インスタ。Sofpad。でも、コップの陰がきれい。椅子が座れるのに座れないように思っている鑑賞者のさまが面白い。

46番バスがたまたま来ていたので、平安神宮下車。あいている旧武徳殿の観察。思ったより内部は狭い。ちょうど剣道の試合が終わったあとのようだ。ほれぼれ。北野天満宮の南にある府警待機宿舎にあるという武徳殿(京都支部)はこれ(全国本部の武徳殿)を真似て一回り小さいのだそうだ。見たいなあ・・・
西尾の八橋を買って帰る。

篤姫の前に『学校の怪談氈x(1994年、関西テレビ、ビデオはポニーキャニオン)を観る。もちろん、目的は黒沢清監督『花子さん』、25分ぐらいか。中学校の男子がトイレの花子さんを呼び出す。
そのあとに、女子高校の演劇部の話(ジュリエット)もついでに観る。


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