こぐれ日録 KOGURE Diary 2009.8/3〜8/9


こぐれ日録652 2009年 8/3〜8/9

8/3(月)

採点と入力を基本的に土曜日に終わらせたので(あとは、救済するべき学生がいるかどうかのチェックのみ)、今日は、ゆっくり。
昼寝したら、とても、マジカルな夢を見た。

夜、ようやく、昨日の日記をアップ。で、重い映画鑑賞は無理になったので、ルイ・リュミエールの断片集を見始めたのだが、みんな、うとうと・・・彩色した蛇のダンスはとても面白かったが。
で、チェコアニメのアート的パイオニア、『イジー・トルンカの世界』第一集をなにげに上映してみる。

するとどうだ、寝ぼけていたみんながぐいぐい、その飛ぶ展開に目が覚めてくる。
不思議なアニメ。内向する反抗心と捻じ曲がったユーモア。

『善良な兵士シュヴェイク/コニャックの巻』1954年、23分。
『善良な兵士シュヴェイク2/列車騒動の巻』1954年、22分。
『善良な兵士シュヴェイク3/堂々めぐりの巻』1954年、23分。
これらは、原作がヤロスラフ・パシェクで、かなり有名なものらしい。時代が古い設定なので、これだけ軍隊や警察批判でも大丈夫なのか。それにしてもよく飲む。

そして、遺作となったという『手』(1965年、19分)。これは、かなり直裁的で、もう支配者が自分の肖像を作れと迫ってくるところなど、社会主義国チェコとソ連の弾圧そのものでもあり、もっと、普遍的な圧力の姿をアニメで描く。ユーモアは背面に退き、自分自身への哀悼歌。生前葬。
お棺に納棺されていくアルルカンである自分を残すアニメというのもまた凄惨でありかつ美しい。


8/4(火)

かえっこバザールの記事がいまごろ京都新聞に出ていた。
横浜市の多くの公立中学校で「つくる会」の教科書が採用される記事を見て、現場はどうなんだろうと思う。

『イヴの総て』(1950年、138分)を見た以外は雑用、娯楽ほかのみ。
http://www.tk-telefilm.co.jp/a_eve.htmlより引用
【CAST・・・キャスト】
マ−ゴ・チャニング‥‥‥ベティ・デイビス
イヴ・ハリントン‥‥‥アン・バクスター(建築家フランク・ロイド・ライドのお孫さん)
アディソン・ドゥィット‥‥‥ジョージ・サンダース
カレン・リチャーズ‥‥‥セレステ・フォルム
ビル・サンプソン‥‥‥ゲイリー・メリル
ロイド・リチャーズ‥‥‥ヒュー・マーロー
ミス・カズウェル‥‥‥マリリン・モンロー

【STAFF・・・スタッフ】
監督‥‥‥ジョセフ・L・マンキーウィッツ
製作‥‥‥ダリル・F・ザナック
脚本‥‥‥ジョセフ・L・マンキーウィッツ
撮影‥‥‥ミルトン・クラスナー
音楽‥‥‥アルフレッド・ニューマン
美術‥‥‥ライル・ウィーラー/ジョージ・W・デイヴィス

でも、この映画、ハリウッド映画的な枠組みのなかで、じつに、気持ちの良い作りになっていて、138分があっという間。はじめに最後の結末を見せている(と思わせる)やり方の典型例。
全員が全くの悪者とはしていない(イヴはかなりの悪ではあるが)ところが、ハリウッド、ウェルメイド。でも、それが怖いのだ、因果はめぐるのだから。

ベティ・デイビスが、42歳のときの撮影。でも、もう少し貫禄がある年齢に見えるのは、いまのアラフォーが若いからだろうな。そのあとの『何がジェーンに起こったか?』はより深い淵を見せるベティ・・・


8/5(水)

昨日行く予定にしていた、兵庫県立美術館『躍動する魂のきらめき―日本の表現主義〜岸田劉生、萬鉄五郎、東郷青児、恩地孝四郎・・・絵画、版画、写真、工芸、建築、是座員などの、大正期の暑き芸術、約350点!!』に、10時過ぎ着で、堪能。とくに、家具、写真、デザイン、今和次郎にも出会え、狂った一頁(衣笠貞之助)には、宣伝する楽隊のシーンがあって驚き、表現主義の建築(構想)がとりわけすごく熱い。

午前中に常設展示まで見る。とくに1階、ポスターにほれぼれ、で、その最後の藤本由紀夫さん構成の『shadow-exhibition obscurra-』に。荷物をあずけ、時計をポケットに入れて、ゆっくりロダンを触り、藤本さんのエコーやシュガー、オルゴールの壁の音に目に耳と心を澄ませて、美術館を堪能する。たしかに、緑の草原にいる錯覚がする。

ちょうどやってきた妻と出会いランチ。牛すじカレー、生卵、ナストッピング。
で、灘駅から大阪駅、難波、で、泉が丘駅とうまく乗り継ぎ、服部正兵庫県立美術館学芸員さんによる『障がい者アートの現在〜福祉と芸術の間で〜』のレクチャーに間に合う。レクチャーはホントに勉強になり、しかも、展示もなかなかに面白かった。殺風景で巨大な人工の街にある、国際障害者交流センタービッグ・アイにて。隣のビッグバンができたとき、ダンスのワークショップを見学に行ったことがあって、それはずいぶん昔のことだ(たしか、ジャレミサさん?)。

「コミュニティ・アート」を、もし、アートをつかって地域活性化に役立てるという風に解釈したとすると、アウトサイダーアートのような西欧流の考え方は、そのコミュニティ・アートとは相性がよくないということになる。

アウトサイダーアート側の人たちは、パンク的だから、地域や社会に折り合いをつけようなんて思ってもいない。体制への反発が真っ先になる。作品に内在する棘は、地域社会の穏やかな日常を不安にし、ときには問題を引き起こすのだ。

このような美術(アウトサイダーアート)と福祉(障がい者の社会参加目的としてのアート活動)の間のズレに意識的になりつつも、その共通点を大切に、という結論についても、また深く服部さんに賛同するものだ。

1)福祉だって美術だって、損得でやっているのではない。そのゆったり感は同じ価値観に基づく。経済効率や生産性で語られない。余裕・遊びがないとダメな世界。
2)福祉も美術も一人ひとりが違う、ということに価値を見出すことに変わりがない。違うことを前提としている。

さらに、竜も安打少なく、朝倉いつものように適当な投球だったが勝利し、鶴来の菊姫も超絶的に美味しく、いうことのない一日。


8/6(木)

核兵器廃絶に向けた動き。政府の被爆者施策。
裁判員制度の報道。厳罰化という言葉が現実化したのかどうか。
後期の政治学概論の授業は、官僚内閣制なのだが、ずいぶん、様変わりになるかも知れず、大変。

昨日の服部正さんのレクチャーはきちんと残されているのだろうか、残されていたら多くの人に伝えたい内容だなあと思う。日経の10回連載「勝手にアーティスト10選」も楽しみ。

夜、去年話題になっていた日本映画(東映系)を見る。
秩父鉄道、埼玉の緑、花咲く空き地、そして、神社の裏側から見る日常とお祭りの様子が嬉しい。
熊切和嘉監督『ノン子36歳(家事手伝い)』105分、2008年。脚本:宇治田隆史。
坂井真紀主演。この熊切監督という監督のことはまるで知らないが、すでにこのノン子で7本目だそうだ。デビューは『鬼畜大宴会』というちょっとまずそうなタイトルのもの。で、坂井真紀はもう2作品、彼の映画に出ている。監督と俳優のつながりって、分かりやすいものではある。

二人の男。過去の男を鶴見辰吾、若くふらりと鉄道に乗ってやってきた男が、星野源という人。DVDの裏に「俳優、ミュージシャン、執筆家」とあるように、独特の味がある。
神社の神主一家、その長女で「家事手伝い」というよりも、「家業手伝い」として、巫女さんにお祭りのときにはなるって感じだ、ノン子は。同級生のバーの人や、お祭りのときのテキヤを仕切る男に、津田寛治。「イベントデザイン論」という後期の授業にもちょっと役立てられそうで、嬉しい。

水無月の祓い祭りなのに、雨で一週間延びるのは、新暦問題もあるが、それが、もちろん物語り的には大きなポイントになる。どこか、間抜けた感じのまち、人たち、そして肩の力が抜ける作品。アンチドラマティックと大げさに構えるわけではないが、肩透かしのなかでの恋愛劇。ウツっぽいところもなく、精神は思いのほか健常で、父親の神主さえ、そんなに偏屈でもない。

熊切和嘉という監督さん。また、映画の楽しみが一つ増える。


8/7(金)

宮本歯科、半年後との定期健診と歯石そうじ。歯間ブラッシングが落第なり。

大学へ。今週は今日だけ大学だな。
いっぱいの書類、購入の本、DVD。個人研究費申請。プリンターのインク替え。
3名の追加レポートの評価。研究室の掃除をする気にならないが、少しは整理する。これも半年に一度のお掃除があるので、その方々にとても失礼になるから。

滋賀県文化振興条例が先月に公布された、とお手紙あり。文化審議会が作られるということ。
NO-MA以外のことについて、滋賀については何も知らないな。

日向市文化交流センターでは、第1回ひむかの国こども落語全国大会があったそうだ。
「お笑いの発祥の地・宮崎」とあって、これってひょっとしたら古事記のアメノウズメノミコトかな、と思いつつ微笑む。そのまんま東さんではないのは確か。

メールが来てもうひとり、レポートが添付。これで打ち止めだな。
劇団四季のミュージカル『李香蘭』のDVDを観る。139分。すこし、作業をしながら。

君が代が少し分断されて流れたりするが、軍歌が軽快に組み体操されていたりして、部分だけをみると戦争讃歌みたいな感じもある。もちろん、あれこれいろいろ突っ込まれないように配慮しているのだろうが。振り付けのおおげさな身振り、口のあけ方の大仰さが映像なので必要以上にアップされてしまうからこちらは正面から見れないのかも。

歴史解説つきショーという趣。一度かなり昔に見たはず。昔、本人(山口淑子さん)が沖縄開発庁長官だったときに使えたことを思い出す。

帰って、土田英生脚本ということで購入していた『Happy!完全版』を見る。完全版とあったので、2回目に放送していたものも入っているのかと思ったら、自分が見たものだけだった。ありゃりゃ。97分だからな。相武紗季もかわいいが、渡辺えり子や哀川翔に目が行く。


8/8(土)

山本能楽堂に。目が痛くてかなり真夏の太陽に弱くなっている自分がいる。
でも、井上信太さんのワークショップを眺めているだけでずいぶん元気になる。
『舎利』はお能のなかでも、鬼や韋駄天が出てきて、ずいぶん、妖怪が楽しく、大好きな演目の一つ。
天狗の大団扇まで見させていただき、びっくり大感激。
座っていたところが中正面だったので、脇正面に移って鑑賞したら、隣に変な人が来たと女の子がびっくり。ダレ?って聞くので、テング、って小さいことで言ったら、波紋が回りに広がり、あわてて、テングの研究家といいなおす。

《なつやすみ!こどもワークショップ、アートによる能案内「舎利」、能で使う「小道具」をまねて、みんなで工作します。》
この工作は、あの、手袋風船だった。これは、ウーパールーパーなのだが、小学生には通じない。もうひとつ、袋でお面も作る。これが、7名のファシリテーターによって、一人で目や鼻、口をマークするやりかたと、お互いにやりあう仕方があって、その個性の違いも面白い。うちの3回生などは、まず、小道具を作ってからお面、という順番。この2つの作業の順番も自由なのが、ここのワークショップの自由さである。

子どもたちが作った小道具が、天上へと舞い上がる。これは、まさしくお能の場面をビジュアル化するもの。そのダイナミックな有り様がこちらまでもう普通の心境ではなくならせる。覚せい剤はいらないのだ、こんなアートさえ、みんな体験すれば・・・

残念ながら、前に、織田先生から紹介されたNPOの人(戸所岩雄さん)から送られてきた『銀河鉄道の夜』(劇団アンゲルス、金沢市、岡井直道:台本・演出)を見に、ひこね市文化プラザへ。地図では、JR南彦根駅から行けそうだったので、東口だろうと降りる。すこし遠回りしたので、30分ぐらいかかる(行きすぎて裏側に出てなかなかそこから行けず)。ひこねフィジカル・アート2009ということで、終わってからもバレエの人が柱の影で踊ったり、滋賀県立大学の吹奏学部の学生たちが、池に足をひたして演奏したりもしていた。

演劇自体は、歌ったり踊ったり、照明が派手で、かなりにぎやかなもの。宮澤賢治の詩や歌、考えなども満載で、つめこみまくっている。演劇でも宮澤物には名作が多いからなあ・・・ただ、加賀といえば、一向宗なので、日蓮宗的な宮澤の考え方を加賀の人たちはどう受け止めるのか、そういう作品を加賀で作ると面白いかも知れない。

4回生が裏方していた。


8/9(日)

伊丹AI・HALL。『Melody Cup』
人身事故が京阪であって、ぎりぎりに到着する。
知り合いが後ろの席にいてあいさつされる。
その彼女、関西以外の人たちを案内していて、私がもし眠ってもただ徹夜していただけで、面白くなかったわけではないから、とあらかじめ釘を刺しているのが面白い。私は振り返って、でも、まだ、眠れるステージは眠ることもできないものよりはずっといいですよ、といっておく。

でも、私は、前に見た高嶺格パフォーマンス(AI・HALLで3回されたということ)よりも、ずっと、瞼が閉じる瞬間は少なく、いい具合に現代アート的繰り返しで眠りそうになると、変化がやってきて、ステージとしての強弱がいい具合に出来ていたと思った。弱い身体と強い身体、ぐだぐだの時間と緊張する時間、水平に動く世界と垂直に降り立つ宇宙。

個人的に、自己紹介のあとの踊りの断片が、盆踊り的な所作が多くて、これは、やましなダンス天国に使える編集手法だと、頭にメモり、また、後半のタイの小乗仏教と大乗仏教との対立問答みたいなものもじつに面白い見せ物。一言でその印象を言っちまうと、ダムタイプがまだ初々しさを持っていた頃はたぶんこんな感じだったのではないかというもの(PHの初演の頃あたりかな)。

移動中に、つき山いくよさんから、パン屋さんのチラシをもらって、小山田徹さんに平野の長屋を改造してもらったという話を聞きながら、ダイビルへ。すこし早く来てしまって(それでも、中之島ダイビルを見たりして時間つぶしをずいぶんしたが)、ワークショップコーディネーターの山本佳誌枝さん(山本能楽堂さんには連日お世話になった)に恐縮されたりする。アートコンプレックス1928の人が挨拶に来られて、文化政策一期生のOの先輩だというような話などなどもする。

立ち上がる風景(切り起こし)をつくってみよう!
Dai studioというもともと写真を撮る場所。光が入ればもっとよかったのに、と、ワークショップ講師の池田朗子さん。はじめの20分で切り起こし中心の解説。彼女が大学時代あたりに造っていたという強固な彫刻って一度見てみたいなとか思いつつ、切り起こしなら、2000枚の写真でも靴箱一つで移動できるという軽さに改めて感激する。

17時から19時半。じつに、緻密で穏やかで知的興味を満足させつつ、ワークショップ参加者の偶発性も楽しめるとてもいいワークショップを、500円という低価格で楽しむ。205もあるワークショップの入り口DOORSという企画。
Remoの下敷きもありがたい。カッターが美術専門のもの。そういえば、我が家にも一つどこかにあったな。20セットぐらい買っておこうかと思いつつ、帰る。


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