Arts Calendar/Art's Report site/《KOGURE Journal》AS A SCIENTIST

234.
6/24(日)
本田孝義監督『科学者として-笑顔と告発-』河原町ペンギンなど

マリンバ奏者の通崎睦美さんから、こんなのも作っています、と案内していただいた株式会社伊と忠の下駄を眺めている。ついはきたくなった。蒸し暑いから足を素足にするのはなんとも気持ちいい。でも、恥ずかしい感じもする。ずっと外では靴下をはいて革靴でいたからなあ。布袋さんが描いてある鼻緒の下駄を買い(9975円)、それをはいて河原町ペンギンへ。

古いマンションの一室がこの「河原町ペンギン」という場所だった。障害のある人たちの支援や自立のためのスペース。

ここで、この前應典院では観れなかった本田孝義監督(撮影・編集)作品『科学者として-笑顔と告発-』を観た。1999年、84分、ビデオ。造形に樋口よう子の名前があった。絵も見たことのある感じがしてならない(岡田毅志)。帰りにビデオを買う。公務員になりたい学生にぜひ見せたいと思ったからだ(今日は衝動買いが多い日曜日です)。

21世紀の環境問題、バイオハザード。
国立感染症研究所(当時は予防衛生研究所。略して「予研」)が人家や早稲田大学、障害者施設に近接して強硬に作られた。92年当時になって、機動隊を入れてまで反対を押し切り作ってしまうというのは、昔の成田空港みたいな感じすらする。90年代に入ってまでそんな強硬な立地をしていたのかとびっくりしてしまった。

それに反対する近接して住居していた大学教授、芝田さん(今年3/14死亡)と、研究所の主任研究員である新井秀雄さん、それにここの職員だった本庄さん(名誉所員を剥奪すると脅されながら原告側の証人として悠々自適に老後を捨てて矢面に立つ姿に身が締まる)を描く。

特に新井秀雄という、穏やかななかに強い芯を持つ人物へのインタビューを中心として浮かび上がる社会問題と人間の葛藤(特に科学者と組織人との社会的役割の板挟み)、そして組織にとらわれないことから生まれるすがすがしさを描いたドキュメント映画だった。

少し、自分には役所機構へのトラウマがあって(公務員をやめたばかりだからなあ)この映画の巧拙について云々することもできないほど、感動したし自分の不甲斐なさを感じたりした。

公務員(厚生労働省技官)であるとともに科学者であること。科学者の良心を貫くことで孤立する職場の中、そして今年1/4に新井さんに国立感染症研究所長名による「厳重注意処分」が出る。いま、民事訴訟を提訴中だ。ドキュメント映画のすごさは、まずその映画で完結しないということだ。

ドキュメント映画が対象とする事象がいまの社会のなかで戦いさすらうものであるほど、いつもいつもその変化に対応し、「カメラを回せ」と囁かれる声を、お金のめどはたたずとも聞かないといけない。

ただ、この映画の最後は、孤立した新井さんが遠ざかっていたキリスト教会へと向かわせる映像であった。食事の時の黙祷が2回映されていたから、この最後は一つの安心立命の姿なのではあろう。

だが、現実はもっともっと色々な事件を引き起こし、本田監督はカメラを回し続けるかも知れない。水俣病をとり続けた土本典昭監督などのように。

それにしても、筑波研究所への移転を予研の職員が反対していたこと。これがそもそもの問題の発端だろうと思う。人家がそばにあると病原菌の放出を防ぐことが困難な施設であることを一番知っている(はずな)のは働いている職員だ(多量に放出されたかどうかもチェック出来ないから、放射能よりも扱いづらい)。なのに、仕事場のアクセスの便利さを優先した職員たちの自分勝手さ。

少数者である新井さんや本庄さん以外の職員や元職員のことを思う。新井さんがそうならないために名前を出して覚悟したわけだけれど、多くのみんなは人生を(少なくとも科学者としての人生を)「逃げてしまった」のだろうか。あるいは、組織や仲間をかばい合い勢力争いをすることだけで(科学を働く道具とするだけで)生きていくのだろうか。

国の役人の中で、技官も事務官も五十歩百歩だけれど、特に技官はそれぞれの職種、専門に分かれて本当に蛸壺化している(こんな比喩を使うとタコや島袋君に悪いかも知れない)。息苦しさ。事務官(何も知らないくせに目の上のたんこぶの管理職になってきてすぐに予算などを握ってしまう)への反発や憤り。大学研究者へのあこがれや嫉妬・・・

医学部出身の厚生省技官と福岡県庁時代一緒だったことを思い出した。彼も同じ職種の先輩の葬式とかで忙しそうだった。エイズ担当だったなあ。また、私の同級生の妹が20歳代で大きな食品関係企業の研究所に働いていたら、あっという間に死んでしまったことを思い出す。会社が至れり尽くせりの葬式をしたという噂を聞き、不思議でならなかった。


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