Arts Calendar/Art's Report site/《KOGURE Journal》Dokoka ni Imasu

114.
7/19(水)
南船北馬一団『どこかにいます。』カラビンガ

出かける前に、秋の精華小劇場のラインアップが決まった(地元中心企画として八重山民謡の大工哲弘が入るらしくて、すごい)ので、共通チラシは出来ないとしても、インターネットサイトは作りましょうね、と大阪市役所の山崎さんに話した。

大阪造形センター5f、カラビンガ。

南船北馬一団『どこかにいます。』作・演出/棚瀬美幸。19:18〜20:18。赤いカーテンのチラシがもう精華小学校4階の講堂そっくりで、よく見れば、裏の写真の階段も窓も精華小なのだ。いつ撮影したんだろう・・・と来る前まで怪訝に思っていた。と、当日パンフに「チラシ撮影場所/旧精華小学校」となっていてほっとする。

カラビンガにも結構足を運んだが、客席がこれほど広々した感じになっているのは私にとっては初めて。客席の真ん中は畳がひいてあり、夏用のしつらえがなされている。ピアノを習うとバイエルやチェルニー、ハノンなどともに必ずといっていいほど練習したそんな懐かしくも恥ずかしいピアノ小曲が流れている。劇中の音響(佐藤真弓)も、懐かしげなサスペンス映画のようなピアノ音で私的に好きだった。

カラビンガの入り口ドアがそのまま舞台装置(柴田隆弘)として使われ、その上部に施し(共通する木の格子の模様)がされて、あたかも古い小学校の講堂のドアになっている。役者は急な階段から出入りするわけだ。

赤いカーテンの前に板壁。斜めになっていて階段にも見える。その前に丸椅子や巨大積み木が無造作に置かれている。

ここは、講堂の背後の物置である。鍵があるドアがあって、使われていないアップライトのピアノが上手にある。学校敷地の端なので、隣のビルからここが見える。そんな設定だ。

出演者は、亜樹(藤岡悠芙子)、村上(末廣一光)、雅代(まあちゃん、谷弘恵)。3人ともこの都会の雑踏にある小学校の同窓生(クラスメート)。声だけの出演で井上三奈子が、不在のクラスメートのさやかちゃん(の幽霊)をささやく。声もさやかちゃんに重なるようなそうでもないような不在の吉田君も話の中で重要な登場人物である。

28歳の亜樹がピアノを弾いている冒頭。「エリーゼのために」を口でドレミファしているんだけれど。すると、「トントントン、何の音、・・・・の音、ああよかった」という、うちの娘たちもよく押入で遊んでいた遊びの声が聞こえる。

小学校5年生の時も、亜樹やまあちゃんやさやかちゃんはここを根城にして遊んだものだ。20歳の成人式のあとで、3人はまたここに来た。いや、村上君も来たんだっけね。村上君は卒業式の時に、さやかちゃんにつき合ってくれって言ってそれからもう10年もつき合っている。小学校からさやかちゃんを好きだった吉田君。みんなにもてて非の打ち所のなかった吉田君と村上君はいつも一緒だった。でも、いつも村上君は吉田君の引き立て役。

28歳になった5人がここにやってくることになった。でも吉田君は来れない。吉田君はストーカーをしていて警察に捕まったんだ。どうしてだろう、あんなにかっこいい吉田君だったのに。さやかちゃんがピアノを弾いている時から吉田君は隣のビルで覗いていたという。

じゃあ、あの事件も見ていたんだ!事件じゃないでしょ、まあちゃんが目配せして亜樹と二人がピアノの蓋を支える手を離したのでしょ?

さやかちゃんはずっとこの部屋にいたまま。どうして?鍵をかけたから?かけなかったよ。じゃあ、どうして私(亜樹)がこの鍵を持っているの?

シチュエーションは具体的なのに、その記憶が互いに違っている。

それはまあちゃんでしょ?いえいえ、さやかちゃんよ・・・

出来事という、事実さえ知れば確定できるはずのものや、人格を決める基本的な性格すらも分からなくなっている。

その中で亜樹の姿は比較的明確に見えている。

小さいときから、まあちゃんやさやかちゃんがいないとひとりぼっちだった。亜樹はまあちゃんに命令されていたというが、何も自分では決めないようで実はさやかちゃんのいいなりになっていたと雅代は言う。

どちらが本当か、それはたぶん亜樹にはどうでもいいのだろう。

それよりも、仕事、仕事、洗濯、仕事・・・を繰り返し、レストランに入ってぼーっとしている時に、「あほらしい」と空しく感じてしまう自分が問題なのである。

雅代は、専業主婦である。結婚前に、夫になる男性の家の前に行ったり(つき合っているからいいけど)、結構ストーカー的な嫉妬ぽい偏執的な行為をしていたらしい(それを結婚式のときに友達にしゃべる夫も何だかなあ)。

村上は、おぼっちゃま。でも父母はばらばらで、一緒に住むさやかをいいなりにしている。吉田君よりも怖いかも知れない・・・。最後にそんなどんてん返し。初めはいつもにやにやしている村上君だったのにね。

廃校の物置。少女の遊び声が聞こえ、積み重なった丸椅子が突然崩れる。ドアが開いて、村上の家に(永久に??)閉じこめたはずの「さやか」が立っている・・・。夏には怖い話がやっぱり定番ながらよく似合う。

作者の個人的な思い出を分解し、亜樹や村上などにそれらを分有させながら、お芝居を紡いでいくタイプのもの。当日パンフの「演出のことば」の「なっちゃん」を探しながら、自分が文字通り『自(らがそれぞれの他者に)分(有されている)』だっていうことを考えたりしたかも知れない。


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