17 10.20(水) 

京都演劇祭参加『本を読む』 西陣ファクトリーGARDEN

6週間、毎水曜日に「本を読む」(構成/演出:桃田のん)が、京都の西陣ファクトリーGARDENで開催されている。今日は3回目(あと10/27、11/3、11/7)。開演予定の19時となると、もうどっぷりと秋の夜だ。急に冷え込むようになったので、GARDENの吉田尚美さんが火鉢で火を起こしてくれている。

これまでは暑い時ばかりだったので、様子が違う、と出演の松本エリハさん。同じく朗読する二口大学さんは少し声の調子を試している。

今週は、ここなど空いた町家を借りている芸術関係の人たちのアトリエで「アートイン西陣’99」が行われていて時間があればのぞきたかった。

昼間はここでも「アートカード」展をしていて(山海塾のツアーで日本にいない岩村原太の照明美術写真とか買おうかと思いつつただ見ていた)、上から吊して展示している。これをはずすと、もうそれがこの「本を読む」の舞台だ。

19:06〜20:48。
京都演劇祭参加だからというのでもないが、これはリーディングシアターという簡素な演劇だと言ってもおかしくないもの。

桃田のん/岩村原太/八木優美子らヒステリックブレインがやっている一連の活動自体が、このような、かちっとした芸術フォームの「傍ら」にある(同時に芸術が社会の「傍ら」にあることに気づかせてくれる)ものなのだ。

まず、飲み物が尋ねられる。私は熱いほうじ茶。テーブルにはお菓子の他に漬け物。なお、終わってからも、制作であり公演にまつわる食事のセミプロである八木優美子(かつて維新派などで飯焚き修行)が作った肉じゃがとか里芋とか水菜などが並んだ。これも入れて1500円は安い。

3部構成になっていて、2部と3部は続いて演じられる。

第1部は、二口大学の朗読(かなり哭くシーンとか、声を荒げる様だとかは、押さえながらもこれは演劇そのものだと思わせる本格的なもの)。彼は上下白い質素な服で裸足。太宰治の「駆け込み訴え」(表記は間違っているかも、「走れメロス」が収録された文庫本の中の短編)をすべて朗読した。

一人の男の、裁判官への訴え(告訴)であり、主イエスへの思いと裏切りの確執を、「商人のユダ」(という名前を告げるのはラストシーンであるけど)の目線、口癖で描かれたもの。全く読んだ記憶

がない。コンパクトに瞬間をとらえた秀逸なドラマ。

もちろん、イエスへの恋愛的な嫉妬とか、近代心理主義的な解釈があって、神聖さへの反逆や打算的自己愛の滑稽さを余すところなく示されている。

二口大学の顔が、受難を背負ったユダのアンビバレントな心ゆえの、情けない顔に見えるから不思議だ。

休憩の後、第2部。
ここは二人で、日記本のような本のほか、新聞の声欄、雑誌のコラムやチラシ(無菌のキッチンなどがあるマンション広告)、料理のレシピ(京都のとてもヘルシーで心のこもった料理)を交互に、時にかぶって読む(叫ぶ)もの。たまたま機織りの音のようなリズミカルな音が聞こえ、客席では、食べ物の話がでるたびにお腹の音が小さく聴こえる。

横井庄一が生還後の晩年、拒食的に餓死を選んだのではないか、という文章。親子で食べ物がなくなっていく日記。飯食うな、中産階級を弾劾する叫び。一方でディズニーカタログ、マンション販売、日本の京都の手作りの季節感の愛情の・・レシピ。つまりテーマは食べ物(とそれを巡る環境のこととか)。

だけれど、私にとって一番衝撃的だったのは何と言っても松本エリハが紹介する「ガングロ」雑誌「EGG」だった(エルティーンspecialも、その露骨な下半身告白、投稿と、シカト/イジメからの自殺願望の混淆に、目もくらむけれど、言葉の過剰さとして自分の了解内である)。このEGGは公称60万部、ファッション雑誌で一番売れているという。

いやあ、ヘアのカラー化という無国籍化の次に、美白とガングロだったとは!読者の投稿の比重が多く、アンケートに自分のプリクラ貼って、それが採用され続けると表紙になるという。

脱線したが、話は、このEGG9月号のアンケートが食べ物について。一番好きな、コンビニ弁当/清涼飲料水/カップラーメンなどを聞いたり、もし飛行機で不時着して死体しか食べるものがないときどこ

から食べるか、とか過激。でも、私は中学ぐらいの頃、通学時に人間の何処をどう料理して食べたらうまいか、という話を結構続けて先輩としていたことをふと思い出した。

このアンケートの問いと答えを第2部の終わりにエリハと大学が、実際にやりあった。

第3部はそのまま、松本エリハが残り、あかりが代わって、上から吊された丸い電球になり、この前の「本を読む」でもその朗読を楽しんだ、寺山修司の童話「線の少女」へ。

水平線の宿題を伸ばして描いていった少女が、マダガスカル島で蝶を追う男と出会って結婚して、その水平線が哺乳壜の回りにぐるぐる終わりなく回ってしまって。

宿題を出した老教師は地球の反対側から彼女が来るのを待っている、という内容の少女性と母性のメルヘンだ。


こぐれ日記」の扉へ

無断転載禁止 掲載:アーク編集室