Arts Calendar/Art's Report site/《KOGURE Journal》Hotel.N.C.
15:03、ギターが聴こえ、そのうちにボサノバかな、女声の優しい歌声。
ああ、ここは天国に一番近い『ホテルニューカレドニア』(三角フラスコvol.15、作/演出:花田明子)だからか、と扇町ミュージアムスクエアの満員の椅子席で思う。
実は、このギターには、劇を見るともう少し深い意味合いもあったことが分かるのだが・・・。
舞台(林詩乃)は、ホテルの廊下(食堂への通路)。光が庭からはいるので、葦簀(よしず)でカーテン代わりにしている。
風が通って涼しい。南国気分(葦簀っていうのがいかにも「日本」だけど)が味わえるロビーでもある。
ロビーの庭には上手にブーゲンビリアの赤い花が透けて見えている。そのまま海のビーチに行ける(沖縄のリゾートホテルがこの典型だが琉球ぽさとかの特定の風土文化などは極力出ないような作り)。
外の光が1日のうちで強弱を持って変わる(照明/吉本有輝子)。その光の差で時間の経過はよく分かるのだが、あえて、時間を飛ばすとき(「場」の展開)に、コンピュータのようなお知らせチャイムを鳴らす(音効/堂岡俊弘)。
15:05〜16:35。比較的静かな会話劇風コメディ。ほろりとしたり、ちょっとだけサスペンス仕立ての喜劇。3人姉妹と言えば、花田明子得意の登場人物(三角フラスコの劇団メンバーから出てきた「必要は創作の母」だろう)。ただ、歳の離れた妹は実は・・・。
終わって、風に吹かれた広々としたところでビールを飲んで、週末の夕暮れを見たくなった。海辺でなくてもいいけど、梅田の東のゲームセンターやなにやらごたつく通りではそんな場所は皆無だったから、大阪駅に空しく着いて、乗り込んだ新快速の補助椅子を出し、235円のモルツで空想の離島サンセットジョッキーを傾けた。
ホテルの女主人夕子(段塚崇子)は、お父さんの作ったホテル「ニューカレドニア」を一人で切り盛りしている(彼女も高校生の時、このホテル建設を手伝った)。
長女晴子(花田明子)は、死んだ父親の13回忌に1日遅れてやってくる。男を変えた。今の男はスナック経営、彼女の服装から彼女自身も「お水」的な雰囲気を出している。
母親は、男を作っては逃げだし、また戻ってくることを繰り返した。夕子に言わせると姉晴子は母親にどんどん似てきたのだが。その母親を長女は許せない。そして、父親の立派さを強調する。逆に、次女夕子は、その父親の立派さが母親を追いつめたのではないか、と母親に同情的だ。
そのうちに過去の事実がほのめかされる。一つは、歳の離れた妹夏子(広兼朋)が実は夕子の子どもであること(誰が夏子の父親であるか、は私には読みとれなかった。近親相姦の線ももちろんありうる)。
もう一つは、この島の風習にからむ話。
この島では、赤いブーゲンビリアの花を、死んだ人がいた場所に埋める、という。父親のブーゲンビリアが蔓を伸ばし、隣のブーゲンビリアに蔓を巻き付いている。実は長女晴子はそれが耐えられず、隣の花を切ってしまう。次女は母親はいつか帰ってくるかも?というが長女はそれには答えない・・。
いままでの話は、この芝居の奥に流れる物語。ここへ、映画の脚本を書くために来ている井上(高田祐二)を進行役のように使って、5年目の夫婦の危機と事件が展開されようとしていた。
でも、本のねたを探す井上に都合のいいサスペンスは何も起こらず(自殺の危険はあったようだが、それも回りが溺れてしまっただけ)に、また日々は淡々と流れるのでした・・。
というウェルメイド性に飽き足らない観客もいるだろう。だけど、深刻になるともう松田=平田「月の岬」ワールドになってしまうわけで。悲劇も起こらない箱庭のような日常。でもそこでの切ないほどの希求は同じように人びとに「ある」。
木村(西村聖紀)と結婚して5年目の幸子(安井きよ子)は、しっくりいかない二人の仲を修復しようと、ある計画を秘めてこの島に来た。一方、幸子の元旦那の弟、高砂(久野弘治)は出世できない配転に失望して「死にたくなって」ここに来た。二人の関係をあやしむ木村。
実は二人はお互いの計画のために利用し合っていた(慰め合いからの恋も可能性としてはあっただろうが)だけだったのだが。つまり木村にギターをもう一度弾かせようと幸子は思って高砂に頼んでいたのだ。
が、木村は結局弾かない。でも、その思いはいつしか・・。
一方、幸子は高砂にゴムボートを頼まれていた。それにのって溺れて高砂は死のうと思っていたのだ。でも、高砂は悟る、マリリンという恐妻と一緒にやっていく、それしか幸せはないようだと。
高砂の妹(坂部朱美)と地元の漁師で夕子を一方的に好きな山口(岡部芳則)も、新しいメンバーとしてやっと顔を覚えてきた。新顔さんでは、暗めの夫を演じる高田祐二と、声の大きな明るくすっとんきょうな高校生を演じ歌い叫ぶ広兼朋が大きな役柄をもらって活躍している。
特に、広兼朋は、客席にいた金田典子に通じるあっけんからんなキャラクターとして、とても嬉しく見た。分かっているようで、実は肝心なことが抜けている、そんなことが結構若い時分はあるものだよなあ。
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