Arts Calendar/Art's Report site/《KOGURE Journal》ITABASHI Fumio-Sozokan

237.
6/28(木)
『板橋文夫(p)JAZZLIVE〜アフリカの月〜』そうぞう館(墨染)

京阪の普通しか止まらない墨染という駅に初めて降りる。なぜか(というのは墨染の1つ手前に藤森という駅があるのだ)藤森神社のそばの「そうぞう館」までは、5分ぐらいの近さ。飲食店が1階にあってその2階。受付があって奥は50人ぐらいが入れるスペースで音楽やダンスなど本格的に公演できる場所だった。

顔見知りの人が多そうだった。板橋文夫のファンは昔から強烈にいて(特にきれいな若い女性が多かった)、その人たちがコアになって旦那を連れてきたり子どもと一緒に来ている、という感じがする。終わってから、京阪女性ジャーナル社(月刊新聞アゴラ)の安里他恵子さんという編集長から挨拶されたが、京阪沿線にも独自の文化ネットワークがあるんだろうなと八幡に来てそんなこと初めて知った。

『板橋文夫(p)JAZZLIVE〜アフリカの月〜』。ゲスト:おーまきちまき(うたとアコーディオンなど)&のむらあき(ギター)。19:11〜21:55。
板橋文夫は昨年アフリカへ旅したという。大きな赤い太陽が後ろに飾られている。のっぺりした日の丸ではなく、とげとげがライオンしていて、赤い円の中も幾層にも塗られているような分厚さがアフリカだ。

前半は赤いTシャツでソロを。アップライトピアノ。途中でピアノ線を擦ったり叩いたりし出すからいいピアノを提供する所は大変だろうな。
はじまりは、そうぞう館にアフリカの風が吹く、と題して、骨太の和音が響いた。その合間にファンキーなフレーズが混じり出す。全体に大きく堂々とした構え。ブルースぽい「泣き」は一切ない。
1曲目から立って演奏する状態になる。11分。

歳をとるにつけ息切れがして、とコメント。ちょっと腰を押さえている。
でも、そのあと、10時近くまで歳などまったく感じるいとまもない演奏だった。かつての彼の演奏が疾風のようだとすると、この日の板橋の演奏は‘どしゃぶりの後のスコーンとした大地’のようなすがすがしさが訪れるようだ。

2曲目はセロニアス・モンクの曲ということ。8分ぐらい。頭の上下運動が激しくなってくる。昔は両脚を広げたり狭めたりして実にエロチックだったことを思い出す。いまは、もっと大らかな生命感だ。あるいは叙情的なテクニックから、無骨な音の固まりのままの情感という所だろうか。

3曲目は20:08の前半の終わりまでつながっていたのか。小さな太鼓を手に持つ直前(19:55)までで一括りなのかはよく分からないが、ピアノの上の鍵盤ハーモニカの管を加えて、右手は鍵盤ハーモニカ、左手はピアノの低音部という形を所々とる。吹く音と叩く音の違いによって、世界がぐーんと広がって聴こえる。

そうそう鉦みたいので、よくピアノ線をこすっていた。小さい頃このようなキューキューいう音がお腹がこそばくなって苦手だったことを思い出す。嫌がるとまた面白がる悪ガキがいたものだ。終わりの方になぜだか分からないけどタンゴ的でかつ歌謡曲ぽいメロディの断片がきこえたみたい。

板橋文夫の音に体を浸していると(これはまったくの私の気ままな反応なんですけど)太陽が出たりかげったりしつつ、どんどん暗闇へと近づいていく風景が見えるように感じる。夕暮れ時の空気が流れ。そこにトンネルがあって、怖いけれど入っていくと、向こうにまたぽっかりした明かりがある。これは確かに太陽ではない、もう一つの丸い天体である・・

休憩後、板橋さんに手紙を書いて、自分のCDに板橋さんのピアノを参加してもらうことができたおーまきちまきの歌。4曲(「アスファルトをほりかえせ」が一番はじめ。あとは月に関する歌)はギターののむらあきと一緒にやって、5曲目からは板橋文夫のピアノがつく。

はっきり言って、二人の世界へ板橋のピアノが入ると世界がぱーっと大きくなる。いままでは阪神大震災からコンビを組んだ二人の優しい歌という枠だったのが、違う「くに」へ行ける予感が訪れ、星とも交感できるような気分がやってくる。

客席にも参加させてあげようとばかりに、拍手して「ジャンボ」っていうリズムを私たちがすることになる。単純だけれど、楽しい「ジャンボ」。こんにちは!!。もっと行こうという感じで「オーマイパパ」。ギターののむらにAm、Dm・・と板橋がささやいている。

21:30.板橋文夫のソロに戻る。鍵盤ハーモニカから入っていく。歌のようなメロディ。豊かな響きに満たされながら、でも、物理的な音がなくても、響く心や体があれば「music」というのはぜったいにみんな聞こえるに違いないということが何の関係もなく確信となって自分に届く。

どうしてなのか分からない。音ががんがんなっても響かないときもあるし、私が響いていても相手は何も響かないときもある。不思議だなあ、とずっとアンコールが続いているようなステージを楽しんでいる。運動、運動。ピアノ線もまた活躍。

うみはひろいなおおきいな。行ってみたいなアフリカへ。太陽と月が一緒にやってきて、ホタルが少しいじけてしまうじゃないか!と思った。ミミズは土の中できっと目をつぶって聞いているだろう(ref.トーン・テレヘン著『だれも死なない』より「月夜のダンス」)。


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