Arts Calendar/Art's Report site/《KOGURE Journal》KITAMURA Shigemi-dance paradise
トリイホール。DANCE BOX vol.65。『北村成美のダンス天国』<新作・60分1本勝負>。題名からして彼女の決意(未完のままでどんどん壊しては創っていきたい!)が滲んでくるみたいに思えて仕方がない。19:37〜20:28。
もちろんパーツパーツに彼女らしい身体を大胆にさらけ出した、なじみのテイストが現れる。それは彼女の個性であるしマンネリとはまた別の、彼女独自の回路だと思う。
何せわははと開ける彼女の口の開け具合があっぱれ、さすが。
そして屈託なく。しかもそれでいて小心かつデリケートな「祭りの後」的うらがなしさもほのめかされて。
背中の上の方にブラジャーらしき白いものがあるポーズから始まった。お気に入りのハードロック。上手奥から下手手前までの往復。徐々に速度があがる。楕円になる。
腕に注目したい。惰性で前へプラッ。このナチュラルな動きをまず自分で体感すること。イメージと身体を結ぶエクササイズの日々。
3拍子のブルース。激しい往復運動の後の休憩的な横たえ。ふと、彼女と同じエリアや場所を共有すること、つまりは日々新鮮な気持ちで生きることの歓びを感じること。
でも、少しカームダウンする箇所で時間が取られたようにも思う。
腕が伸ばされる。キノコの胞子がいつのまにか忍者のように伸びてくるシーンを幻視する。
なんてぼんやりしていると、あらあら白い子豚ちゃん人形が歩いている。でも止まったり引き戻されたり。豚の背中に細い糸がくっついていたんだ、ハハハ。
白板を彼女が持ってくる。両手を同時に使ってぐるぐる円を描く。リズミカルなシャンソンが流れていた。音楽がひきつっている部分はそれに合わせて引きつり。魚が描かれた。きわめな大きく魚が2匹。口紅を塗ってその巨大魚にキスをする。魚拓ではなくて唇拓かしらね。真っ赤にキスされた魚が海に泳ぎ出す。
太鼓腹のおじさんが宴会の余興でする腹芸もやってみよう。大きな唇がお腹に描かれている。でも彼女のお腹はだぶついていないので、すっきりなお腹の顔。2つの胸が目玉ね。
踊りを踊るという決まり切った場所から出発するのではなく、踊り以外の作業を始めているうちに、そこに自ずと生まれる踊りが、少しずつ少しずつ、水蒸気から水滴にかわるような感じで、意図しない感じで析出される。
手前の柱との格闘。変な連想だが、おじいさんに囲碁を挑んで彼の膝でいつしか眠ってしまった小学生のことを思った。
20:12。
なんと言っても、これだね。
大きなペットボトルで水をラッパ飲みにする。水を口から吐き出す。大きなのけぞりうがい。床は水だらけ。頭に水。
熱い体にかかった水は湯気になり水蒸気になってどんどん天井へと昇っている。力強い熱気。ファイヤー!
と、床にこぼれた水をすすり出すではありませんか。びっくり仰天、わなわな。
自分の見栄や羞恥を単に捨てるのではなく、いかんともしがたい衝動がから彼女が踊ることから生じる北村の「かっこよさ」と「かっこ悪さ」。その落差の高低に目を見張る。つまり、その両者のあいだの距離がポテンシャル=可能性なのだ。どちらかへと落ちていく速度変化も自在になりつつあって、しかも巨大な滝があると思えば、せせらぎみたいな小さな滝も生まれる。
たとえば小さな滝のあるシーンとは、彼女がおどおどしたり、裾をあげてじぶんが盛大にこぼした水たまりを歩くところのシーンを想定して言ってみたのだけれど。
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