1 1999/9/4(土)
口琴と声のDUO〜アントン・ブリューヒンと巻上公一
滋賀県愛知川町/蔵元藤居本家
9.4.土
雑用をすましてJRに飛び乗る。
頭をびょんびょんした「口琴(こうきん)と声のDUO」〜Anton Bruhinと巻上公一の世界〜へさあ。石山から稲枝(いなえ)駅まで琵琶湖線を上る。15時に出発する送迎バスが待っていて、搭乗。稲穂が黄色く色づいていて、バスが通ると雀たちが飛び上がったりする。やがて、愛知川町という看板があり、神社を通過してすぐに到着。
蔵元藤居本家。堂々の展示施設だ。この2階が16時からの演奏会場。ここで、各種のお酒を飲み比べできるようになっている。今日の「びょんびょん」のために特別のうすにごり酒(冷やすとうまい)もあったが、私は特別純米酒「欅」という重い感じの口当たりがぐっときた。
この欅の大きな柱が印象的な(案内してくれた当主のお母さんが長い年月をかけて設計したという)本格土蔵造りの酒蔵を見学する。NHK朝の連続テレビ「甘辛しゃん」の撮影に使われた樽(樽のなかにカメラマンが入って撮影)とかを見る。
近江の人は辛口(醗酵の程度を進めると辛口にすることは簡単だそうだ)はだめで、地域ごとにそこの風土や料理に合った酒の味が生まれるものだと言う説明が心に残る。
16時が近づいて、天井の高い会場へあがる(ここでチケットを切ってもらう。前売2700円というのは飛び切り安い)。風が気持ち良く入るので、日本酒で体温はあがっているが大丈夫。ただ、マイクを使わない演奏なので、後ろのガラス戸は閉められた。
聴衆は160人ぐらいだろうか。年配のグループなどは、どちらかというと酒蔵見学がまずあって、そこについているコンサートに興味がある人たちだろうと想像。あるいは民族学に興味があって、世界中にある口琴ってどんなんだろう、という興味関心で来たタイプの人たちもいる(でしょう)。
もちろん、この「口琴と声のDUO」を企画主催した、細馬さんやYUKO NEXUS 6さん、彦根のACT Stationのスタッフ中野公博さん(滋賀県立大学学生だから細馬さんとのつながりもあるでしょう)のような、自由な音楽を愛する人たちも大勢来ている。
さてと、細馬さんの前説のあと、ブリューヒンと巻上登場。16:13〜18:20まで、途中に休憩あってまたお酒が飲める。
1)ブリューヒンの口琴ソロ。軽快なリズム。右手と左手と交互に弾いていてどうなっているの?と思っていたら、3つの口琴を両手に持って弾いていた。
2)今度は巻上公一の口琴ソロ。同じリズムのつま弾きの中に音色の微妙な差を感じとっていく。休憩の時に、彼が、どんどん聴く方が感度があがってしまうから、マイクなしでは少しつらいでしょう、と言われたが、僕はそうなるのがとても気持ちがいいので、音が小さかったという感じが全く無い。
3)二人の口琴のDUO。ここで、口琴の持ち味が全開したように思う。吸うときにも音がなるし、長い口琴に持ち替えたブリューヒンの低周波に脳内の波長が感応するようになる。
4)巻上公一のホーメイ(ホーミー)のソロ。比較的短いもの。声に代って少し目先に変化でる。
5)1990年にブリューヒンが発明した電気口琴。音が大きくなるのではなく、電気によって何度も弾かなくていいので、右手で壷(ここに穴が空いていて塞いだりする)や管を当てて、口内の空気の変化に加えて、相乗する効果が生まれる。手づくりなものなので、とてもほほえましい。パイプオルガンの原理を使っていたり、トロンボーンのように音を連続させて上下させたり。
6)二人の口琴のDUO。電気を使わなくても高度な技巧を使って音の連続変化や早引きを楽しむ。リズムのめりはりがあって単調さがまったくない。
7)巻上公一おなじみ、トゥバ共和国の3弦の楽器(バンジョーみたいだけど、音がポロンと柔らかく長閑)を伴奏にして、高音のホーメイ。声も全開してきて、聴いている私の頭の中までも洗ってくれるようだ。蝉の鳴き声も少し激しくなった気がするが、全然じゃまではない。途中からブリューヒンの口琴が入ってきて、ホーメイと合奏(合唱)。原理は同じなので(咽で響かすのか唇の前の口琴で響かすかの違いだけ)、なんだか、どちらがどちらか分からなくなる。
8)前のはベトナムの口琴だったが今度はサルジニアの口琴のブリューヒンソロ。
9)さて、巻上公一の声とおもちゃパフォーマンス〜ボクシング編。15秒だけ音や声をIC記憶できる真っ赤なボクシングのグローブのような玩具を両手につけて。腕の動きで声を録音させてそれを流す。そこへまた声を被せる。隣で女性が大笑いするので、じぶんは堪えていたが、やっぱり耐えれなくなった。
ダンスとしても絶妙。スイッチのオンオフのタイミングでいかに音楽やダンスが出来るかが分かる。終わって、カメラを取っているおじさんのためポーズしてあげている公一さん。
10)休憩の後、ブリューヒンの電気鰻システムの初お目見え。鰻を捕まえる筒から連想して、声や音の響きを、水の入った筒に泳がせてやろう(捕まえてみたい)というしろもの。やはりペットボトルに水が入ってそれで管の中の水が調節されるなどのチープさがナイス。声を入れているのが真面目なのだがどこかおかしい。巻上が後ろで拡声器でおーおーってやっている。
11)今度は巻上公一の玩具ソロ。吹いたり叩いたりする玩具のようだが、意外とシニカルで深みのあるもの。笑いというより哲学的な感じもする。あるいは、何かへの哀惜、ラメントのようでもある。
12)ブリューヒンの口琴ソロ。既存の歌のようでメロディーあり。
13)ではじめフリージャスのような。トゥバの楽器と口琴の組み合わせ。
14)トゥバのカルグラ?(巻上公一のヴォイス)。
15)「モスキート(蚊)」ハンガリーの口琴を使ったブリューヒンのソロ。軽快で羽音が耳障り。
16)シベリアのサハ共和国の口琴を今度は巻上ソロにて。どこか、彼の口琴は彼のヴォイスのようにビヨビヨビヨと聞こえて不思議に思う。それに、響かずチチチとなったり、ホーメイぽく2重になったり聴こえるのだが・・・
17)またあの録音ボクシング玩具が登場してデュオ。なぜか、このときに図ったように救急車が通りかかるから世界は面白い。ホワホワホワー、ビーワー、キュンキュン。こんな変でおもろい音を文字で書こうとする努力は全く無意味だ(徒労と知りつつ書くのもまた楽し)。
18)スイスの伝統的なワルツでブリューヒンのラストソング。
19)一方巻上公一は、木のトランペット。ブリューヒンの紹介でスイスの口琴楽器店で手に入れた、なかなかうまく吹けない楽器。だから彼が演奏するのに最適なのだ。大きく伸びる音が苦しそうに揺れて、どこかホーメイのワンヴォイスと似た演奏。
アンコールは、4minutesと言って二人の口琴デュオで締めた。これから二人は湯河原に行って、ベルリン、スイスと渡る。これはもっと日本で聴かせたいと思うのだが、やはり聴くまではなんとも分からない(ということはこれを読んだ人も全然想像できない)ものだから・・・。
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