Arts Calendar/Art's Report site/《KOGURE Journal》M.O.P.-BLACK Handkerchief
上本町(私は谷町九丁目からだが)の近鉄小劇場へ。満員。久しぶりにお芝居が観れると喜んで話している中年の女性など、この日を楽しみにしている感じが強い客席。それは若手の小劇場の客席とはまるで違う「非日常の華やぎ」があるように感じられる。
19:00〜21:28。10分の休み。まったく長く感じられない。痛快なお話し。「ほんのりレトロな極上エンテーテイメント」というフレーズはうそでなく、勧善懲悪のパタン化もこのようなテンポの良さとどんでん返しのためには必要だと思ってしまう。
M.O.P.第36回公演『黒いハンカチーフ』。入り口で立っている作演出のマキノノゾミの髭が何とも中年の風情。もう劇団員みたいにいつも客演している岡森諦もえらく太っている。
昭和32年が「ほんのりレトロ」というぐらいに、昭和は遠くなったのだなあとこちらもごま塩になった禿頭をなでている。
新聞の3行広告(黒いハンカチーフが暗号)によって詐欺師が集められる。巨悪の総理をぎゃふんと言わせるために。
映画「スティング」のことが当日パンフで書かれている。
えばっているやつ、悪い支配者を「はめる」話だよなあ。それはまずお客さんをはめれるかどうか、そこにかかっているわけで。
伝説の詐欺師の息子、日根。彼(三上市朗)は親父を嗣がずに売春婦のための開業医を新宿2丁目で開いていたが・・。
売春防止法の直前。
やくざは賄賂を贈って自分の稼業を続けようとする。もみけす代議士。揺するちんぴら。そのとばっちりで43歳の心優しい売春婦がひき殺された。
まずは、やくざをはめる。これはスティングと同じくギャンブル詐欺にて。それで軍資金。
これから本命の海老沢総理へと仕掛けていく。岡山新県庁建設の指名業者を賄賂でお願いするという趣向の「はめ」だ。そのためにまず当座預金を作る算段。小切手帳をもらうために。そして巧妙な賄賂操作のために画商が登場。
場面転換(舞台美術/奥村泰彦)が多い舞台を観るのは久しぶり。役者が椅子と机を運んだり、仕切を動かしたりする。その間に、傷痍軍人がホルンを吹く(役者による音楽演奏が場面転換の間に入るサービスもこの劇団の特徴)。
まだ戦後は終わっていない。母親のしゃっくりによって、記憶喪失していた息子が劇的に記憶が戻るという人情話で終わるかと思ったら・・・。
最後の逆転がクールな詐欺師をお茶目に間抜けにして、女性のしたたかさを強調する(男の間抜けさとの対比)。どこまでが狂言芝居でどこまでが本当か。退官前の刑事(酒井高陽)が手動ワイパーの車で張り込むあたりのおかしさも絶妙にまぶされて、楽しいひとときを過ごした。
おかしさと人情(赤髭先生とか足長おじさんみたいな)、それにちょっとハードボイルド。
陰影の強い照明(大川貴啓)。
エンタテインメントもたまには実にいいものだ。ここはそういえば恐怖ものはしないのだろうか。MOTHERの「子どもの一生」とかそういうどきどきするお芝居も観たいなとかってに思ったりもする。
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